スカイライン400R 絶滅危惧種・純エンジン搭載のスポーティセダン(しかも後輪駆動)、味わっておくべきか?

日産スカイライン400R
 車両本体価格:589万9300円
後輪駆動でパワフルなエンジンを搭載するスポーティセダンは、かつては人気カテゴリーだった。が、いまや絶滅危惧種。セダンも、後輪駆動もパワフルなエンジンw/oモーターもレッドリストに載りそうだ。では魅力がないのか?といえばもちろんNOだ。代表格スカイライン400Rはどうだろうか?

なにより3.0L・V6ツインターボがいい

ボディ色は5万5000円のopカラーのミッドナイトパープル

スカイライン(SKYLINE)といえば、日産が誇る大名跡である。初代が1957年登場だから、66年周年(!)ということになる。現行モデルは13代目。2013年登場だから、こちらも年季が入っている。途中、ダイムラーの2.0L直4ターボを搭載した時期もあったが、現在は日産が誇る名機(だと思う)VR30DDTT型3.0L V6ツインターボエンジンを積むモデルが主力。そのなかでもハイパワーな400Rが一番人気である。

VR30DDTT型は、フェアレディZにも搭載されているが、こちらは、新開発9速ATと組み合わせる。スカイライン400Rは従来の7速ATだ。

ハイパワーなエンジンを搭載したスポーティセダンといえば、かつては花形だったものだが、現在ではそもそもセダンの人気が低迷している。スカイラインも例外ではないだろうが、命脈を保っているのは大名跡であることと、この魅力的なエンジンのおかげだ。

405psで589万9300円。1ps=1万4566円。抜群のコストパフォーマンスである。

メルセデスならAMG C43(2.0L直4ターボ408ps+モーター)で1171万円。BMWならM340i xDrive)3.0L直6ターボ387ps)で1074万円だ。どちらも4WDだから、400psオーバーで2輪駆動というのも、希少価値ありだ。そもそも1000万円オーバーというのは、手を出しにくい。

そうなのだ。純エンジン搭載のスポーティセダンというのは、すでに絶滅危惧種なのだ。だからこそ、いま味わっておくべき……かも、というわけで、借り出してみた。

全長×全幅×全高:4810mm×1820mm×1440mmホイールベース:2850mm
トレッド:F1530mm R1560mm
最低地上高:130mm
車両重量:1780kg 前軸軸重1000kg 後軸軸重780kg
 最小回転半径:5.6m


ミッドナイトパープルのボディ色を纏うエクステリアは、相変わらず魅力的。そもそも”ミッドナイトパープル”というボディ色のネーミングが、クラシカルでいい。全長×全幅×全高:4810mm×1820mm×1440mmというボディサイズも、DセグからEセグの入口までカバーしなくてはならないスカイラインとしては、いまや大きすぎないサイズだ。”スポーティセダンかくあるべし”的なプロポーションも好ましい。

ダンパー付きのボンネットフード開けると、こう見える。
エンジンカバーの表側がこちら
ご興味がある方は少ないと思いますが、これが裏側
エンジン形式:V型6気筒DOHC直噴ターボ型式:VR30DDTT種類:筒内直接燃料噴射V型6気筒(DOHC)排気量:2997ccボア×ストローク:86.0×86.0mm圧縮比:10.3最高出力:405ps(298kW)/6400rpm最大トルク:475Nm(48.4kgm)/1600-5200rpm
タイヤダンロップSP SPORT MAXX050。ランフラットタイヤである。
サイズは245/40RF19 指定空気圧は前後ともに240kPa
リヤサスペンションはマルチリンク式
フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式

懐かしいコックピットデザイン

乗り込んでみる。ブラウンの内装色は悪くない。が、いかんせんコックピットデザインがやはり二昔前であることは隠しようがない(個人的には嫌いではない)。が、最後の純エンジン搭載の4ドアスポーティセダンとして選んで長い時間を一緒に過ごせば、2020年代のクルマも2010年代前半のクルマも、2030年代になれば同じくオールドファッションになるのだから、そこはこの際気にしなくてもいいかもしれない。

ブラウンインテリアパッケージは10万100円のメーカーオプション
室内長×室内幅×室内高:2000mm×1480mm×1180(1160※)mm ※サンルーフ装着時

それでも気になるのは、足踏み式のパーキングブレーキ。せめてレバー式だったら、と感じた。実際、すでに絶滅寸前の足踏み式のパーキングブレーキは使い勝手も悪い。10年後に、「昔はサイドを引いてスピンターンなんかをやったもんだよなぁ」なんて独りごちることもできない。

左が足踏み式のパーキングブレーキ。アクセルペダルはオルガン式
ブラウンインテリアパッケージは10万0100円のオプション
シート色はホワイト、ブラックも選べる

2013年登場(プラットフォームはさらにずっと昔)のモデルに日産技術陣が惜しまず手を入れ続けてきたおかげで、搭載できる近代装備はかなり入れてある。不満なくドライブできるだろう。試乗車には16スピーカーのBOSEサウンドシステムがついていた。いまどき、CDプレーヤーも搭載していたから、お気に入りのCDをかけることができる。膨大なCDコレクションを持っている世代にはうれしいところだ。しかも音もいい。

ドライブモードセレクターでSTANDARD/ECO/SNOW、SPORT/SPORT+/PERSONALを選べる。キャプション入力欄
PERSONALを選ぶと、エンジン・トランスミッション、ステアリング、サスペンションなどを自分好みにセットアップできる。

通常、試乗する際は、もっとも普通のドライブモードを選ぶことにしている。スカイライン400Rでいえば、それは「STANDARD」だ。ほかにECO/SNOW/SPORT/SPORT+がある。SPORTやSPORT+を選べば、エンジンの噴け上がりもトランスミッションの変速タイミングも変わるのだが、いまや電動車両が幅を利かせてきているので、アクセルにどんなに速くエンジンが反応しても、ターボラグが小さくなっても、すでに「エンジンラグ」があるので、もうそこはエンジンの味をじっくり味わうほうがいい。

だだし、STANDARDでは、ステアリングが軽すぎる(個人の感想だが)し、サスペンションのダンピングもなんだか収まりが悪い。400Rのいいところは、PERSONALというドライブモードが用意されていて、ステアリング/エンジン/トランスミッション/サスペンションなどを自分好みにセッティングできる。

ステアリング:SPORT/サスペンション:SPORT/エンジン:STANDARD/トランスミッション:STANDARDというセットで、自分好みのスタイルにできた。

このレバーがドライブモードセレクター

純エンジン搭載の4ドアスポーティセダンが絶滅の危機に瀕しているのは、その燃費性能故だ。スカイライン400Rのモード燃費は
WLTCモード燃費:10.0km /L
市街地モード6.5km/L
郊外モード10/6km/L
高速道路モード12.5km/L
しかも、燃料はハイオクだ。とはいえ、年間走行距離が1万kmを大きく超えるのでもなければ、そこは目を瞑れる……かもしれない。実際、今回燃費を気にせずに普通に360kmドライブして燃費は11.3km/Lだった。

100km/h巡航のエンジン回転数は約1800rpm。同じエンジンでも9ATを積むフェアレディZだとこれが1700rpm(8速で)。Zの場合は9速120km/h巡航が1800rpmになる。

VR30DDTT+9速ATという組み合わせをフェアレディZで味わってしまったいま、スカイライン400Rも純エンジン搭載モデルの”集大成”として、最後の改良を!という期待は、現実的ではないかもしれない。が、電動時代のスカイライン(が、あるのかな?)の前に、現在のスカイライン400Rも大いに魅力的だ。

スカイライン400Rと迷うとすると……レクサスIS500かな(奇しくも現行モデルのデビューは2013年でスカイラインと同じ)。こちらは、5.0L V8自然吸気エンジン(481ps/535Nm)+8AT。価格は850万円(Fスポーツパフォーマンス)。1ps=1万7672円だし、そもそも260万円も高いし、自動車税の年額は400Rが50,000円なのに対してIS500は87,000円(!)だが、同じ文脈で気になる。

絶滅危惧種・純エンジン搭載のスポーティセダン(しかも後輪駆動)、いまいっとくなら、スカイライン400R、アリです(そしてIS500も、きっとアリです)。

日産スカイライン400R
全長×全幅×全高:4810mm×1820mm×1440mm
ホイールベース:2850mm
車両車重:1780kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式
駆動方式:後輪駆動
ステアリングギヤ形式:ラック&ピニオン式
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスクタイヤサイズ:245/40RF19
エンジン形式:V型6気筒DOHC直噴ターボ
型式:VR30DDTT種類:筒内直接燃料噴射V型6気筒(DOHC)
排気量:2997cc
ボア×ストローク:86.0×86.0mm
圧縮比:10.3
最高出力:405ps(298kW)/6400rpm
最大トルク:475Nm(48.4kgm)/1600-5200rpm
燃料:プレミアム燃料タンク:80ℓ
燃費:WLTCモード燃費:10.0km /L 
 市街地モード6.5km/L 
 郊外モード10/6km/L 
 高速道路モード12.5km/L 
車両本体価格:589万9300円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…