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10年近く販売された20世紀の名オープン
80年代半ばから90年代初頭まで続いたバブル景気。恐ろしいもので例えばトヨタ・カローラはバブル真っ只中の1990年に年間30万台以上も売れた。豊富な購買意欲に刺激され、販売店は複数チャンネルにより同じ車種を違う名前で販売。それが年間30万台もの記録になっていく。
当時マツダ店しかなかったマツダは5チャンネル構想を進めユーノス、アンフィニ、オートザム、オートラマ店を展開。その象徴的な存在として1989年にユーノス・ロードスターが発売された。ロードスターは世界中で販売され一大ヒット。その後各メーカーからオープン2シーターモデルが開発される事態を引き起こす。
ロードスター発売時、オープン2シーターは皆無の状況で、なおかつ後輪駆動の軽量モデルは60年代生まれの古いものばかり。そこへ信頼性と実用性が高い日本のクルマとして登場したのだから、誰もが飛びついたというわけだ。
当初1.6リッターモデルとして登場すると、93年には1.8リッターへ排気量を拡大。95年にもマイナーチェンジされ、実に98年まで販売された長寿モデルだ。
外観
ホロを上げてもスタイリッシュさに変わりはない。純正ハードトップもある。
電動モーターによるリトラクタブルヘッドライトを採用。丸目が可愛い。
エンジンルーム
FFのファミリア用をベースに縦置きFR用へ改良されたB6型。吸排気効率の最適化などにより120psを発生。93年には1.8リッターのBP型へ進化する。
ケンメリ仕掛け人が買った新車からの1オーナー車
世界中から愛された初代ロードスターは当時、クルマ業界人にも多く売れた。今回登場するネオグリーンのVスペシャルは、ケンとメリーのスカイラインなどの宣伝を展開した広告代理店ライト・パブリシティに在籍してイラストなどを手がけた方が新車購入。今も名義はそのままだが10年ほど前に亡くなられ、現在は息子さんである現オーナーが管理。
実質1オーナー車であり、新車時から車庫保管されてきたため現在でも程度は極上。当時からロードスターに接してきたオーナーもクルマ好きに成長して、最初の勤務先にマツダディーラーを選んだほど。学生時代は自動車部に在籍して、就職後は後輩の育成のためにと軽自動車の耐久レースに参戦するチームを結成。ところが社会人の自分達がハマってしまった。
現在は別の職種へ転職したオーナーだが、耐久レースは続けたため旧車に強い水戸のテクニカルショップ・リミットとも交流。それだけクルマが好きなので父親が亡くなった際にロードスターを引き取っても良かったのだが、転勤先が雪国ということで実家の車庫に置きっぱなし。週に1度はエンジンをかける程度にしているとか。
新車から現在まで、車検を切らしたことはなく同じディーラーでメンテナンスをしてもらう。そのためか消耗部品以外に新車時から変更した個所がなく、なんとフルオリジナル。ATとはいえ価値ある1台なのだ。
室内
すでに30年選手だが走行距離はわずかに14万キロ台で止まっている
このユーノス・ロードスターVスペシャルの記事は、6/21発売の令和に残るクルマ改造雑誌『G-ワークス』(毎月21日発売)2023年8月号に掲載されています。