スタイルに負けない走りと乗り心地
しなやかな足の動きで、走りの良さが光るプジョーに新種が出た。
基本骨格は308と共通だが、ホイールベースが110mm、全長も280mm延長され4700mmと伸びやかなディメンションとなっている。ロードクリアランスに関しては40mmもプラスされ170mmのゆとりが与えられている。
ボディフォルムはハッチバックゲートを持ち、伸びのあるクーペスタイルと力強いフェンダーラインが特徴的。足元には205/55R19という大径タイヤを組み合わせることで、ロードクリアランスにゆとりを持たせた下半身を引き締める。
SUVの機能を満たしつつも、目を惹くクーペスタイルが与えられ、室内に目を向ければリヤシートの足元も広々。それでいながら全高を1500mmに抑えることでタワーパーキングにも対応し、ラゲッジスペースもたっぷりとしていて、ステーションワゴン並の実用性を持つ。ボディフォルムも特徴的だが、その多機能ぶりも確かに今まで例がない。
遠くから見たときにはトヨタのクラウンクロスオーバーと見間違ってしまったが、近くで見れば抑揚のあるボディラインや低い車高によって、野生動物のような躍動感があって、これは確かにプジョーの新種に違いない。走りの良さにも期待ができる。
今回乗ったのは1.2L3気筒ターボエンジンを積むGTだ。組み合わされるミッションは8AT。加速は軽快だ。コンパクトユニットらしく吹け上がりが軽く、シフトアップは加速中はサクサクと小気味良い。右足を緩めるとその変速はピタリと止まってギヤをキープ。街中では3、4速を維持することが多くひと息ついてから高いギヤに引き継がれる。加減速を繰り返しているうちはザックリと言えば車速の0を取ったギヤをキープし(50km/hなら5速ギヤ)続けるから、3気筒ならではのレスポンスの良さを街中でも常に味わえる。
高速では100km/h前後でようやく8速にシフトアップしてクルージングモードに入り、1900rpmをキープ。軽く踏み込めば7速2600rpmを維持して、追い越し時には踏み込み量に応じて5速以下までダウンシフトして一気にパワーを引き出せる。スポーツモードにするとひとつ下のギヤをキープし、100km/hを超えても8速には入らない。クルージングには手元のパドルで対応する。
ステップの軽い変速パターンとコンパクトなターボユニットによる組み合わせは何より直感的で気持ちいい。PHEVモデルに対して大人4人分は軽い1430kg(PHEVモデルは1740kg)の車重ならではのフットワークの良さで、見た目は新種でも野性味溢れる中身はしっかりと受け継がれている。
乗り心地は進行方向から入ってくる小さな入力に関して、縦方向に強さを持つタイヤの影響から細かな振動は拾いやすいものの、大きく動いたときには逆に無駄なく足元が正確に動き、素早く減衰。大きく重いはずのホイールの影響を最小限にとどめて乗り下げ時までしっかりと追従していく。やや当たりが硬めながら、ペースを上げていくに従って猫足ならではのポテンシャルを発揮する。
ボディのしっかり感と足元の蹴り出し感からくる乗り味は、しなやかさと言うよりも堅牢さと正確性が持ち味。だから、操作に対してはキビキビと反応したうえで、粘り強さが後からついてくる。新種ならではの磨き込みによって、走りのゾーンが拡大した印象だ。そのせいか今までどうしても馴染めなかった低くて小さなステアリングも違和感なく受け入れることができた。新たに採用された3次元メーターはきれいな夜景を見るようで興味深いが、この眺めだけは未だ視界が遮られてしまうのは惜しい。
今が旬のSUVのなかにプジョーならではの乗り味をたっぷり包め込みながら走りのゾーンを拡大。あらゆる可能性を盛り込んだ新種は電動化へ向けての指針となるPHEVを投入しつつ、コンパクトなパワーユニットで伝統的な走りに磨きをかけることも決して忘れていない。
そんなプジョーのこだわりが私は好きだ。
プジョー408GT 全長×全幅×全高:4700mm×1850mm×1500mm ホイールベース:2790mm 車重:1430kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式 駆動方式:前輪駆動 エンジン形式:直列3筒DOHC直噴ターボ 型式:PureTech1.2 排気量:1199cc ボア×ストローク:75.0×90.5mm 圧縮比:10.5 最高出力:130ps(96kW)/5500rpm 最大トルク:230Nm/1750rpm 燃料:プレミアム燃料タンク:52ℓ 燃費:WLTCモード 燃費:16.7km /L 市街地モード13.2km/L 郊外モード16.4km/L 高速道路モード19.1km/L 最小回転半径:5.6m変速比・ 車両本体価格:499万円