ラングラーの頂点に君臨する「ルビコン392」の破壊力は半端ない! 【ジープ・ラングラーを買うと幸せになれるのか Vol.8】

「新型ジープ・ラングラー(JL型)」の1世代前のJK型ファイナルバージョンに乗る “Wrangler Love!” な筆者が、「ジープ・ラングラー」の特徴や魅力について、さまざまな角度からから語るこのシリーズ。今回は、いよいよ6.4L V8 HEMIエンジンを搭載し、シリーズの頂点に君臨する「ラングラー・ルビコン392」にフォーカス!圧巻のパワーや専用装備に加え、迫力満点のエキゾーストサウンドを収録した動画も交えながら、そのモンスターぶりをレポートする。
REPORT&PHOTO 小原裕一郎(OHARA Yuichiro)

本国アメリカでは豊富なバリエーションが存在する

現在、日本の正規ディーラーで販売されている「ジープ・ラングラー」は、アンリミテッド・サハラとアンリミテッド・ルビコンのほか、最近ラインアップに追加されたプラグインハイブリッドのルビコン4xeの3モデルのみ。かつては、ラングラーの原型といえる2ドアモデルや廉価版のアンリミテッド・スポーツも販売されていたが、現在はどちらかというと売れ線モデルに絞って販売しているのかもしれない。

しかも、サハラとルビコンのパワートレインは、2ℓ直列4気筒DOHCターボエンジンのみの設定となっており、好評だった3.6ℓV型6気筒DOHCペンタスターエンジンは姿を消している。アメ車といえば、V8 を代表とする大排気量で極太トルクのエンジンが魅力のひとつであるだけに、正規ディーラー車のラインアップには物足りなさを感じてしまう。

現在、日本の正規ディーラーでは2ℓ直列4気筒DOHCターボエンジン車(写真は北米仕様)しかラインアップされておらず、せっかくの魅力が半減している。<出典:STELLANTIS>

アメリカ・オハイオ州トレド工場で生産されている「ジープ・ラングラー」には、実は日本ではあまり知られていないモデルが存在している。例えば、本国の北米仕様にはSport(2ドア/4ドア)、Sport S(2ドア/4ドア)、Willys Sport(2ドア/4ドア)、Willys(2ドア/4ドア)、Freedom(2ドア/4ドア)、Sport Altitude(4ドア)、Rubicon(2ドア/4ドア)、Sahara(4ドア)、Sahara Altitude(4ドア)、High Altitude(4ドア)、Rubicon 392(4ドア)、Rubicon 4xe(4ドア)といった具合に数多くのモデルがラインアップされており、さすがはお膝元と思わせる充実ぶり。ガソリン車の選択肢が2つしかない日本と比べると雲泥の差で、なんとも羨ましい限りだ。

パワートレインも、日本でお馴染みの3.6ℓV型6気筒DOHCエンジンや2ℓ直列4気筒DOHCターボエンジンに加え、3ℓV型6気筒クリーンディーゼルエンジンや6.4ℓV型8気筒HEMIエンジンも用意されているので、プラグインハイブリッドも加えると5種類の中からをチョイスが可能だ。

本国には3ℓV型6気筒クリーンディーゼルエンジンもラインアップされている。もし日本に導入されていたら人気が出そうなエンジンだ。<出典:STELLANTIS>

さらに、35インチタイヤやオフロード性能を大幅に向上させたサスペンションを装備したエクストリーム・リーコン・パッケージやクラスⅡ対応のヒッチメンバーや7&4ピンハーネスを装備したトレーラートウ・パッケージといったパッケージ群のほか、スカイワンタッチ・パワートップ(電動開閉式ソフトトップ)やサテンブラックグリルなどの豊富なオプション群から好みの装備をチョイスできるので、注文時の自由度はとても幅広く、唯一無二のラングラーにカスタマイズできる。

北米仕様の一部モデルでは6速マニュアルミッションも選択できる。アメリカでは選択肢の幅が広く、羨ましい限りだ。<出典:STELLANTIS>

6.4ℓV8HEMIエンジンを搭載する「ルビコン392」はシリーズ最強モデル

多彩なバリエーションを誇る北米仕様の中で、イチバンの注目株といえば、やはりV8エンジンを搭載したシリーズ最強モデルの「ルビコン392」だろう。「ジープ・ラングラー」は、CJ7で一度5ℓのV8エンジンを搭載した歴史があるが、それから約40年後の2021年に満を持して登場したのが「ルビコン392」だ。しかも、ダッジ・チャレンジャー(R/Tスキャットパック)でお馴染みの6.4ℓV8HEMIエンジンを搭載しているので、アメ車ファンならずとも、その強烈なパフォーマンスに憧れを抱いている人は多いだろう。

ちなみに、末尾の392とは 排気量の6400ccをアメリカで使われているキュービックインチで表すと392cuiとなることから命名された。また、HEMIエンジンとは、クライスラー社が1950年代に開発し、現在まで70年以上製造されている半球型の燃焼室を持つV8ハイパフォーマンスユニットのこと。半球型は英語表記で「Hemispherical(ヘミスフェリカル)」であることから、通称HEMIエンジンと呼ばれているわけだ。

「ルビコン392」は、ダッジ・チャレンジャーでお馴染みの6.4ℓV8HEMIエンジンを搭載。最大出力:470PS、最大トルク:470lb-ft(約63kg-m)を誇る化け物だ。<出典:STELLANTIS>

HEMIエンジン好きが高じて「ルビコン392」の虜(とりこ)に!

「ルビコン392」は、前述のとおり北米仕様のモデルであることから正規輸入はされておらず、現状は一部の平行輸入業者からしか購入できない。しかも、価格は1000万円を優に超えるレベルなので、国内ではお目に掛かれる確率は極めて低いが、今回は幸いにも「ルビコン392」を昨年購入したというシャルさんご協力いただき、実車の撮影と試乗が実現した。

シャルさん所有の「ルビコン392」。ボンネットのエアインテーク内で光るオレンジ色のLEDランプは、ナイトライダーを彷彿させるシャルさんお気に入りのオリジナルカスタムだ。

撮影に先立って、「ルビコン392」を購入したきっかけを尋ねてみると、アメ車好きの父親の影響で幼いころからアメ車がカッコイイと感じていて、とりわけ強烈パワーと爆音を発するHEMIエンジンには憧れを抱いていたとのこと。その流れからHEMIエンジンを搭載した「ルビコン392」の存在を知ったわけだが、スパルタンなラングラーの姿に一目惚れしたことも手伝って、すぐに購入を決意したそうだ。

後ほど詳しく紹介するが、「ルビコン392」はラングラーシリーズのフラッグシップモデルであるだけに、マニアをうならせる専用装備を満載しており、ノーマルでも完成度が高いところが大きな魅力だ。

とはいえ、シャルさんは少しでもパフォーマンスやカッコよさを向上させたいという想いから、タイヤとマフラーを社外品に交換している。

タイヤは35インチのNITTO RIDGE GRAPPLERをチョイス。日本初上陸となるハイブリッド型トレインタイヤで、オン/オフ両方の性能を高いレベルで融合しているマルチパーパス性がウリだ。
マフラーはアメリカAWE Tuning製のステンレスマフラーに交換済み。純正比で9PS/5lb-ftのパフォーマンスアップが図られ、排気音も大幅に迫力が増している。

「ルビコン392」だけに許されたスペシャル装備の数々

「ルビコン392」は、強烈なパワーを誇る6.4ℓV8HEMIエンジンに注目が集まりがちだが、実はフラッグシップモデルに相応しいスペシャルな装備で埋め尽くされている。

まずは駆動システム。サハラやルビコンのセレクトラックでは、2H、4H、4L、4H AUTOOの5モードとなっていて、通常は2Hで走行する。しかし、「ルビコン392」では2Hがなく、4H AUTO、4H PART TIME、4Lの3モードとなっていて、通常は4H AUTOで走行する。つまり、常時フルタイム4WDでの走行となるわけだ。

「ルビコン392」のセレクトラックは2Hが割愛され、通常は4H AUTOのフルタイム4WDでの走行となる。これに伴ってファイナルのギア比も高められている。
ステアリングにはラングラー史上初となるパドルシフトを装備。HEMIエンジンの強大なパワーを生かしたスポーツ走行も可能だ。

次はエキゾーストシステム。「ルビコン392」では、可変バルブエキゾーストシステムが採用されており、インパネに装備されたスイッチによって、排気音とパフォーマンスを2段階に切り替えることができる。例えば、早朝や住宅街ではノーマル(クワイエット)モードで排気音を抑え、HEMIエンジン本来の豪快なV8サウンドや強烈なパワーを楽しみたいときは、パフォーマンスモードを選択するといった使い方ができる。

シャルさんの「ルビコン392」では、前述のとおりAWE Tuning製のステンレスマフラーに交換してあるので、パフォーマンスモードでの排気音はさらに迫力が増していて、まさに爆音という印象だ。

今回は、その凄まじさを実感してもらうためにショートクリップを用意したので、下記の再生ボタンをクリックして、「ルビコン392」の迫力の走りやエキゾーストサウンドを堪能してもらいたい。

迫力の走りとエキゾーストサウンドは↑コチラをクリック。

また、可変バルブエキゾーストシステムに合わせてボンネットは専用のパフォーマンスフードに変更されており、内側にはハイドロガイドエアインダクションシステムを装備。これにより吸気効率と冷却効率を高めているが、万一エアと水が同時に入っても、水だけが抜ける構造となっているので、最大で約82cmの水深まで渡河走行が可能となっている。

専用のパフォーマンスフードの内側にはハイドロエアダクションシステムを装備。吸気・冷却効率を高めながら、水の進入をしっかり抑える構造となっている。

「ジープ・ラングラー」では、純正で2インチのリフトアップキットが用意されているほか、アフターマーケットでも数多くのリフトアップキットが販売されているので、多くのユーザーが好みのリフトアップ量でカスタムを楽しんでいる。

しかし、「ルビコン392」では、FOX製ショックアブソーバーを用いたファクトリーチューンの2インチリフトアップがデフォルトで組み込まれており、ノーマルでも高い走破性と迫力のフォルムを実現。エクストリーム・リーコン・パッケージを選択すると、さらに1.5インチのリフトアップが可能だ。

「ルビコン392」のサイドビュー。2インチリフトアップで若干上がったボディーに35インチタイヤがよくマッチしている。
2インチリフトアップ+35インチタイヤの車高はかなりの高さ。シャルさんは奥さんやお子さんが乗降しやすいようにROCK SLIDE製の電動ステップを装着している。
バンパーは前後とも強固なスチール製を採用。各エンブレムは「ルビコン392」のイメージカラーのゴールドで縁取りされ、けん引フックもゴールドで塗装されている。また、FOX製ショックアブソーバーまでゴールドで縁取りされているなど、スペシャル感の演出に余念がない。
インパネは通常のルビコンと異なり、艶のあるピアノブラック調パネルが採用され、シートバックにもゴールドのエンブレムが刺繡されている。

ドライビングフィールもエキゾーストサウンドも異次元の大迫力!

注目のドライビングフィールやエキゾーストサウンドついては、前出のショートクリップでご覧いただいたとおり、まさにモンスター級といっても過言ではない。敢えて文字で表現するならば、ノーマルのルビコンをベースにして、ハイレベルなレーシングチューンを施したような凄まじい走りと大迫力のサウンドとなっており、その破壊力は半端ない!といったところだろうか。

爆音を轟かせながら鋭い加速を披露する「ルビコン392」の破壊力は半端ない!フラッグシップに相応しい実力の持ち主だ。
コーナーの入り口で急激に減速すると、バリバリとけたたましいバブリングが発生する。まるでレーシングカーのような迫力だ。

それでいて、本格的なカリカリチューンにありがちな扱いづらさや乗り心地の悪さは一切ない。超強力なHEMIエンジンのお陰で、どの速度域からでもトルクフルで爆発的な加速を見せつけてくれるし、ルビコン特有のロングストロークサスペンションによって、強力なエンジンパワーと重い車体をしっかり受け止めながら、しなやかで安定感のある走りを披露してくれる。

基本的に「ジープ・ラングラー」は武骨なオフローダーなわけだが、やはり6.4ℓV8HEMIエンジンを搭載した「ルビコン392」は異次元の実力の持ち主。メインフィールドのオフロードはもちろん、オンロードでも無敵の強さと絶大な信頼感を提供してくれる。

「ルビコン392」に試乗してみて、改めて「ジープ・ラングラー」のポテンシャルの高さと奥深さを実感したが、同時にラングラーへの愛着が深まったのはいうまでもない。

筆者のJK型ラングラーと「ルビコン392」を乗り比べてみると、パフォーマンスに大きな違いがあるものの、オフローダーとしての走破性や魅力はしっかり継承されている。
「ルビコン392」は後ろ姿も迫力満点!フラッグシップとしての風格が漂っている。

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著者プロフィール

小原 裕一郎 近影

小原 裕一郎

メディアプランナー&ライター。メディア業界でテレビ視聴率調査、マーケティング(リアル&デジタル)、…