兄弟車を比較! インプレッサとクロストレックどちら選ぶ? 似ているが見逃せない微妙な差とは?

スバル インプレッサ クロストレック
SUBATU インプレッサ/クロストレック
XV改め新型クロストレック、インプレッサスポーツから車名を変えた新型インプレッサがSUBARUから相次いで発売された。車名を変えることで、それぞれ異なるユーザー層を先代よりもさらに獲得するという狙いが透けて見えるが、同じプラットフォームであるのはもちろん、サイズ感も同じCセグメントで似通っている。どちらを選べばいいか迷う方もいるのではないだろうか。

TEXT:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)、SUBARU

SUBARUクロストレックの特徴とは?

全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1575mm(ルーフレール装着車1580mm)
ホイールベース:2670mm

SUBARUクロストレックのボディサイズは、全長4480×全幅1800×全高1575mm、ホイールベースは2670mm。先代XVの全高1550mmから全高が高くなり、高さ制限1550mmの機械式立体駐車場には入庫できなくなった。ただ、ベースグレード「Touring」の素の状態だとコンパクトポールアンテナが標準となるため、全高1550mmで機械式立体駐車場を狙うこともできなくもない。同社がSUVやクロスオーバーモデルで大切にしている最低地上高は200mm。フォレスターの220mmには及ばないものの、雪上や林道などのラフロードでは必要十分なロードクリアランスを確保している。

最低地上高:200mm
最小回転半径は5.4m
トレッド:F1560mm/R1570mm

ルーフレールがオプションで用意されているので、オートキャンプやウインタースポーツ、マリンスポーツなどのアウトドアスポーツが楽しめる相棒になってくれるはずだ。また、新型クロストレックの受注でAWDの比率は72%と7割以上を占めているという。

クロストレックは、2.0L直噴エンジン+モーターのe-BOXER(マイルドハイブリッド)で、WLTCモード燃費は16.4km/L(FWD)、15.8km/L(AWD)。また、クロストレックは、225/60R17もしくは225/55R18のオールシーズンタイヤを履いているのも特徴だ。

エンジン 形式:水平対向4気筒DOHC+モーター 型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5:1 最高出力:145ps(107kW)/6000pm 最大トルク:188Nm/4000rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:48ℓ モーター:MA1型交流同期モーター 最高出力:13.6ps(10kW) 最大トルク:65Nm

荷室容量は、先代XVの340Lから315Lに少し減った。ワイドな開口部を備える美点は受け継がれているが、全高が高くなったにもかかわらず荷室容量を減らしているのは、かなり「攻めた」エクステリアデザインによるものだろうか。先代XVと比べると、リヤフェンダーアーチの膨らみが強調され、テールゲートもより寝かされたデザインに映ることもあるかもしれない。

ラゲッジはクロストレックとインプレッサで違いはない。荷室容量は315Lで5名乗車時のフロア長は814mm。

クロストレックは、高速道路を含む公道で走らせる機会があり、一方のインプレッサは、プロトタイプをクローズドコース(袖ケ浦フォレストレースウェイ)で走らせるという条件の違いがあった。条件が異なるため、走りの微妙な差を比べるのは難しいが、足まわりは引き締まっているものの、比較的フラットライドという全体的な印象に大差はない。オールシーズンタイヤを履いていても快適性は十分に担保されている。

室内寸法もクロストレックとインプレッサで同じとなる。
室内長×室内幅×室内高:1930mm×1505mm×1200mm

インプレッサの特徴とは?

全長×全幅×全高:4475mm×1780mm×1515mm
ホイールベース:2670mm

一方の新型インプレッサは、全長4475×全幅1780×全高1515mm(「ST」は1450mm)で、ホイールベースはクロストレックと同じ2670mm。最低地上高は、「ST」が130mm、「ST-G」、「ST-H」が135mmとなっている。

最低地上高:135mm
最小回転半径は5.3m
トレッド:F1540mm/R1545mm

インプレッサの方が全長は5mm短く、全幅は20mm小さい。大きな差がでるのは全高で、グレードにより60〜125mmもインプレッサの方が低くなっている。インプレッサであれば機械式立体駐車場に入庫できるだけでなく、自宅の駐車場が狭かったり、場合によっては低かったりしても駐車できるかもしれない。また、インプレッサには、ルーフレールは設定されていない(未装着)。さらに、インプレッサの最小回転半径は、5.3mで、5.4mのクロストレックよりもわずかに小さくなっている。

新型インプレッサのプロトタイプ試乗会の時には、後席の頭上まわりなどをじっくりチェックする時間はなかったが、最低地上高と全高の差が大きい一方で、パッケージングでは大差はないはずだ。なお、室内寸法は、両モデルともに、室内長1930mm×室内幅1505mm×室内高1200mm(インプレッサ「ST」の室内長は1925mm)となっている。

最低地上高が高い分、クロストレックの方が路面からの着座位置もアイポイントも高く、見晴らしはよく感じる。なお、インプレッサの荷室容量も315L(「ST」は368L)と「ST」以外は同値。

仙骨を押さえ、骨盤を支えることで車体の揺れが頭部へ伝わるのを防ぐシート構造を採用。ステアリング操作や路面のうねりで身体が大きく揺さぶられたときでも、安定した乗り心地を実現している。

パワートレーンでは、インプレッサはクロストレックと同じ2.0Lマイルドハイブリッドのe-BOXERに加えて、2.0L NAの純ガソリンエンジン車を設定しているのも大きな違いだ。e-BOXERのWLTCモード燃費は、FFが16.0km/L、AWDが16.6km/Lで、全高が低いインプレッサの方が0.2km/L上回っているものの、実燃費では明確な差は出ないだろう。なお、2.0L純ガソリン車のWLTCモード燃費は、FFが14.0km/L、AWDが13.6km/L。

車両重量はインプレッサ「ST」のFFが1380kgとかなり軽く収まっている以外は、クロストレックもインプレッサもほとんど変わらず、インプレッサの方が10〜30kgほど軽いだけだ。また、全高と最低地上高、着座位置の差は、同じ条件下ではよりインプレッサの方がスポーティなハンドリングを披露する可能性があるが、驚くほどの違いはなさそう。
なお、インプレッサは、「ST」が205/50R17、「ST-G」と「ST-H」が215/50R17サイズのサマータイヤを履く。

6:4分割可倒式リヤシートを採用し、大きな荷物や長尺物の搭載も可能だ。2人乗車時のフロア長さは1591mm。

どういった使い方をするのかを、あぶり出して選択したい

インプレッサは、純ガソリン車の「ST」を設定し、FFは229万9000円、AWDでも251万9000円というエントリーモデルを用意しているのも特色。「ST」は、フリートニーズ(法人営業車)も満たす役割を担っているはずだ。

ウレタンのステアリングやシフトレバーが標準で、ステアリングヒーターやキーレスアクセス&プッシュスタートや11.6インチセンターディスプレイ&インフォテイメントシステムがオプション設定になるなど、装備は一部未設定もしくはオプションだが、衝突被害軽減ブレーキやアダプティブクルーズコントロールなどのアイサイト コアテクノロジーは標準。Bセグメントハッチバックの上級グレード並の価格に収まる点に魅力を抱く人もいるかもしれない。

クロストレックに比べて、インプレッサの方が全長-5mm、全幅は-20mm。全高はグレードにより60〜125mmも低い。

また、クロストレックはアウトドア派向け、インプレッサは街乗り中心など、より一般向けと簡単に割り切れないのもSUBARUらしい。というのも、インプレッサ(先代までのインプレッサスポーツ)購入層もキャンプなどのアウトドアを楽しむ層が多いというからだ。

とはいえ、頻繁にスキーや渓流釣りなどに向かうのであれば、ロードクリアランスに余裕のあるクロストレックの方が向いているのは確かで、荷物や新しい趣味が増えてもルーフレールを標準とするクロストレックの方がフレキシブルに対応できそう。逆に言えば、ルーフレールが不要で、整備されたオートキャンプに出かける程度であれば、インプレッサでも実用上、不満は出ないはず。インプレッサの方が若干サイズが小さく、取り回しや駐車もわずかにしやすくなっている。こうした条件を重視するのであれば、インプレッサも指名するのが賢い選択といえるだろう。

ルーフレールはクロストレックではメーカーオプション、インプレッサには設定されていない。

そして、もちろん見た目の差も購入時に大きな理由になりそう。クロストレックは、典型的なハッチバック派生型のクロスオーバーモデルで、XVよりもアグレッシブな外観が目を惹く。インプレッサは、「ユーティリティ・スポーティカー」を謳うように、実用性とスポーティさを表現している。先代までのインプレッサスポーツの車名だと、「そこまでスポーツを求めていない」という声もあったそうで、新型インプレッサはより幅広い層に訴求できそうだ。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…