コツコツ仕上げたL28改3リッターの走りが魅力! いまだ走りは一線級のS30フェアレディZ! 【オールドカー倶楽部東京・狭山ミーティング】

初代にあたるS30フェアレディZはスカイラインと人気を二分する国産旧車の花形モデル。スカイラインより軽く小さなボディはロングノーズ・ショートデッキのスポーツカースタイルで世界中で愛された。やはりデザインに惚れ込んで1994年から乗り続けるオーナーを紹介しよう。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1974年式日産フェアレディZ。

新型が発売され話題を振りまいた日産フェアレディZは、原点回帰して初代S30風のボディスタイルとなったことでも注目された。それほどに初代フェアレディZのデザインは衝撃的であり、スポーツカーのアイコンとして長年愛されてきた。初代S30は1969年の発売開始から1978年にフルモデルチェンジして2代目S130へバトンタッチするまで、10年近く生産され続けた大人気モデル。国内だけでなく北米を中心とした海外でより人気が高く、Zカーと呼ばれ親しまれた。

スポーツカーらしいスタイルだけでなく、ライバル視されたイギリス製スポーツカーより安価で高性能だったため人気が爆発。輸出仕様は直列6気筒2.4リッターのL24型エンジンを搭載していたことでアメリカのフリーウェイでも余裕の走りを見せた。ところが国内では2リッターのL20型と、スカイラインGT-R用の直列6気筒DOHCであるS20型の2種類でスタート。1971年に輸出用と同じL24型搭載の240Zが追加されたが、オイルショックや排ガス規制の影響もあり、2年後には発売が終了してしまう。

テールランプが二分割されたマイナーチェンジ後のモデル。

国内でのS30人気はS20エンジン搭載のZ432と、240Zにエアロダイナノーズやヘッドランプカバー、オーバーフェンダーを装備した240ZGが牽引してきた。ただ、どちらも新車販売台数が少なく、中古になってからも手に入れづらいモデルだったことに変わりない。そこでマニアたちは安価なL20搭載の中古車を手に入れ、ZG風のスタイルに変更するなどして楽しんできた歴史がある。

また軽量なボディのため走行性能に優れたS30Zは、走りの面でも長く支持された。それというのもL型6気筒エンジンは2リッターのほかに2.4リッター、2.6リッター、2.8リッターと異なる排気量がラインナップされた。しかもシリンダーブロックはほぼ同じだったため、L20をベースにピストンやコンロッド、クランクシャフトを変更することで排気量を拡大することが容易だった。1980年代くらいまで、これら改造車は国内で最速の部類に入るスポーツカーだった。当時のオプション誌で開催していた最高速アタックには、数多くのL型エンジンのフェアレディZが活躍していたほどだ。

ローダウンした車高にワーク・エクイップ03の15インチ・アルミホイールを履く。
リヤスポイラーに北米向け280Zのエンブレムを装着。
マフラーは縦デュアルにこだわりつつステンレス製に変更している。

排気量を自在に変更できたことで人気を維持してきた国内事情だが、改造公認車検が一般的になるとまた違った流れを巻き起こす。何もL20にこだわる必要がなくなったことで、L型エンジン最大排気量であるL28型をベースにさらなる排気量アップを施すことがマニアの間で人気になる。

3ナンバーの公認車として公道を走ることが一般的になったのだから、S30Zの魅力はさらに高まった。現在ではL28型をベースに3.2リッターまで排気量を拡大するのが可能となり、足回りやブレーキなどにも社外の強化部品が数多く出揃っていることで、安心して高性能を楽しめる時代になった。

タペットカバーにTURBOとあるがL型ターボ用を使っただけ。実際にはL28型をベースに排気量を拡大している。
ラジエターを大容量タイプのアルミ製に変更しつつ、電動ファンを2機がけとした。

初代フェアレディZの人気が現在まで続くのは、こうしたチューニングや最高速などの歴史と密接な関係にあったから。今回紹介する真紅のボディが眩いS30は、オーナーの愛情を受けて排気量を拡大しつつ美しい内外装が与えられた1台。現在38歳と比較的若いオーナーは吉岡孝倫さんで、車両を手に入れたのは今から6年ほど前のこと。このデザインと長くチューニングカーの代名詞として君臨した歴史が吉岡さんに強く影響を与えた。

マイナーチェンジ後のためダッシュボードやコンソール形状が前期と異なるインテリア。
AUTO GAUGEの3連メーターを追加している。
シートは2脚ともレカロのリクライニングシートへ変更して快適性を向上させた。

この74年式Zは知り合いから譲り受けたもので、当初からここまでのコンディションにあったわけではない。前後にスポイラーを追加したボディは全塗装されており、真夏の日差しを浴びて極上のコンディションに見える。ローダウンしたサスペンションに15インチのワイドホイールを組み合わせているが、オーバーフェンダーを追加していないことがポイントだろう。

ノーマルフェンダーのままこの車高とワイドタイヤを組み合わせるにはフェンダー内の処理など苦労があったはずだ。また極上ボディには数多くの新品部品が使われている。国産旧車というと部品難なイメージが強いが、S30の場合は複数のショップから数多くのアフターパーツが発売されている。そのため、不人気な国産旧車をレストアするより苦労が少なくて済むのだ。

排気量をナンバープレートの数字に選んでいる。

もちろんエンジンはL28型に載せ換えられている。排気量はナンバープレートの数字になっているよう3リッターまで拡大されている。エンジンの部品もボディパーツ同様、複数の社外部品が現在も手に入る。そこで吉岡さんも亀有エンジンワークスなどの部品を駆使して3リッター化を図ったのだ。エンジンとボディが仕上がっても室内の痛みを放置しているS30は少なくない。というのも走りのクルマだからと、快適性は後回しにされてしまうことが多いから。

ところが吉岡さんは抜かりなく、室内もボディ同様見事な状態にまで仕上げている。3リッター化したS30を本気で走らせるなら純正シートは完全に役不足だから、このようにレカロシートを装着するのがベストだろう。ただ、肝心な部分はノーマルというのもマニアらしい。スポイラー以外はノーマルなボディ同様、インパネなどもノーマルを維持している。いわば通な仕上がりとでも表現したくなるフェアレディZだった。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…