目次
【新型アルヴェルのココが◯】文句なしの静粛性と乗り心地の良さ
新型アルファード/ヴェルファイアは、ミニバン用に最適化された「TNGA(GA-K)」の採用をはじめ、Bピラー、Cピラー、Dピラーを環状骨格構造として剛性を強化。さらに、ロッカーストレート構造や高級スポーツカーからヒントを得たという床下V字ブレース、周波数感応型ショックアブソーバーの設定など剛性向上や乗り心地の改善策は、まさに枚挙にいとまがない。
さらに、シート防振ゴムやシートパッド表面への低反発ウレタンの採用、構造用接着剤の塗り分けなど細部にまで手を施すことで、先代の「エグゼクティブラウンジシート」のオーナーやユーザーから聞こえてきたという、「フロアからの微振動がある」という声にもしっかり手を打つなど、乗り心地への執念はさすがにトヨタといえるレベルに仕上がっている。
ヴェルファイアには、フロントパフォーマンスブレースを追加することで、19インチタイヤを履きこなし、したたかな接地性とハンドリングの良さも披露する。
アルファードの17インチ装着車(2.5Lハイブリッド車)が最も完成度が高い印象で、多少路面が荒れていても1935mmという全高の高さを抱かせない。低速域でもボディが揺すぶられるような感覚はほぼなく、高速域でも安定感は高く、ロングドライブでも疲れを誘わなそうな印象だ。
19インチを履くヴェルファイアは、路面や入力によっては若干突き上げ感もあり、よりソリッドな乗り味。とはいえ、多くのユーザーが十分に許容できる範囲に収まっているはずで、電動パワーステアリングのセッティングも含めて軽快感が強調されている。ステアリングを握って最も楽しめるのは、ヴェルファイアのみとなる2.4Lガソリンターボ。高速域では修正舵の頻度を意識させるものの、高級感を損なうことなく、ドライバーズミニバンといえる仕上がりを堪能できる。
とくに、主力の2.5Lハイブリッド車は、モーター走行時はもちろん、エンジンが始動しても音・振動はよく抑えられている。吸音材に頼ったような静粛性の高さではなく、静かな森の中にいるような静けさ、というと大げさかもしれないが、先代からの進化を最も感じさせるのが、乗り心地と静粛性の高さだ。なお、同行したカメラマンからは、2列目でもエアコンが良く効くという声が何度も聞こえていた。
【型アルヴェルのココが△】ボディの重さと豪華仕様ではないセカンドシート(ベンチシート含む)待ち
新型はアルファードが2060〜2230kg(FF)、2120〜2290kg(4WD)、ヴェルファイアも2180〜2250kg(FF)、2240〜2310kg(4WD)という重量級ボディになった。先代アルファードの3.5エグゼクティブラウンジは、2150kg(FF/7人乗り)。新型アルファードのエグゼクティブラウンジは2230kg(FF)で、80kgと大人1人分程度重くなっている。ボディ剛性の強化や装備の充実化、45mm延びたフロントオーバーハングなどを考えると、妥当といえそうだ。
しかし、動力性能や燃費、万一の衝突時の加害性(攻撃性)などを考えると、1gでも軽い方が理想的なのは間違いなく、首都高速などにあるタイトコーナーをある程度の高速域で旋回すると重さを感じさせる。また、ブレーキング時(回生ではないメカブレーキ)も重さを抱かせる。一般的には、重くなれば制動距離も延びてしまう。
新型は、生産性と納期などを考慮し、まずは豪華な2列シート仕様からデビューさせたそうで、開発陣に伺ったところ、法人ニーズなどにも応えるため、2列目ベンチシート(8人乗り)の開発も進めているそうだ。また、ウェルキャブ(福祉車両)の「G」に相当するグレードの追加も価格面も含めて待たれるところ。こうした仕様は、もう少し車両重量も軽くなるだろう。
【型アルヴェルのココが×】値上がりした価格か?廉価グレードの登場に期待したい
先代モデルから大幅に価格が上昇している点は、ユーザーにとって×と感じる部分ではある。だがしかし、冒頭で紹介したように、値上がりしているとはいえ、この価格帯でアルファード/ヴェルファイアのようなクオリティの高級ミニバンを作れるメーカーは他にないはずだ。
また、歴代モデルを乗り継いできた方の中には、多人数がゆったり乗車できる大型ミニバンへのニーズがまずあり、デザインはもちろん、乗り心地や静粛性も含めた動的質感もいいに越したことはない、という思いを持っている方もいるだろう。そうした中には、高くなった価格設定も含めてここまで2列目が豪華でなくてもいいというニーズもありそうだ。子どもが2人いる家族の場合、エグゼクティブラウンジシートやエグゼクティブパワーシートに子どもを座らせるのも(とくにチャイルドシートやジュニアシートを使う場合)宝の持ち腐れ感も否めない。普通のキャプテンシートやベンチシートも待たれるところ。
また、インパネやアウターパネルのいわゆるチリ合わせや、メーターの見た目の質感などにも少し粗さを抱かせることもあった。かつてのクラウンなどは、いかにも日本の高級車らしい和の高級感を抱かせつつも、細部にまで抜かりはない時代もあったような気がする。
使い勝手の面では、タッチトレーサーオペレーション(ドライバーが触れているスイッチの位置を検出し、カラーヘッドアップディスプレイに操作ガイドを表示する)にやや慣れが必要なのと、アルファード/ヴェルファイアに限らないが、ナビ/オーディオなどの音声操作がメルセデス・ベンツやBMW、Googleを採用するボルボなどのように自然な会話でそこそこ成り立つ、対話型インフォテイメントとはまだ言えないレベルであるのも世界基準で見るとやや惜しく感じられた。