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WRCのトップカテゴリーが度重なる重大事故によりそれまでのグループBから、当初予定されていたグループSもキャンセルされ、より市販車に近いグループAで争われることになったのが1987年シーズンから。
1986年のシーズン中に急遽なされたこの決定は参戦チームの次期主戦マシンの構想を根底から覆すことになった。トヨタは1986年に発売された4WDマシンのセリカGT-FOUR(ST165)を投入する予定としたが、その開発期間の中継ぎとしてスープラ(MA70)を投入した。
そのセリカは1990年にカルロス・サインツのドライブでドライバーズチャンピオンを獲得し、トヨタ初=日本初となるWRCの選手権タイトルを手にすることになった。
1991年には新型セリカGT-FOUR(ST185)を投入し、1992年にやはりカルロス・サインツがドライバーズチャンピオンに輝き、翌1993年にはマニュファクチャラーズチャンピオンも獲得して初のダブルタイトルを、さらに1994年はダブルタイトル連覇という偉業を成し遂げた。
1993年からトヨタワークスをカストロールがスポンサード。トヨタとカストロールの組み合わせはWRCから、その後のサーキットレースまで長く続くことになるのだが、それはまた別の物語。
トヨタは1994年のダブルタイトルを防衛する一方で、次期マシンである新型セリカGT-FOUR(ST205)を投入する(ただし、カンクネン車のみでチャンピオンを争うオリオールは信頼性の高いST185を継続使用)。
しかし、このセリカGT-FOUR(ST205)は、大型化したボディによる重量増と取り回しの悪さ、そして新機構のスーパーストラットサスペンションがラリーには不適だったことから、小型軽量なライバル達に対して大苦戦を強いられることになる。
とはいえ、トヨタのワークスカーとしてWRCを戦った最後のセリカであり、WRCのマシンが小型セダンやハッチバックに席巻されていく中で最後に残ったクーペということもあり、根強い人気があるのもまた事実。また、その人気の一端には「セガラリーチャンピオンシップ」があるのも間違いないだろう。
セリカ最後の4WD+ターボ
1986年にデビューしたST160系からセリカはそれまでのFRからFFへと転換。そのスポーツグレードとしてターボ+4WDで武装した「GT-FOUR」が設定され、WRCにもワークスマシンとして採用された。
そんなFFセリカとしての三代目(通算では六代目)がST200系で、やはり4WDターボのGT-FOURが設定された。
1997年にWRCでWRカー(ワールドラリーカー)規定がスタートしたことからセリカはWRCワークスマシンの任を解かれ、1999年にフルモデルチェンジしてST230系に移行した際に4WDターボは消滅。GT-FOURの名はかろうじて三代目カルディナの4WDターボモデル(T240W系)に受け継がれた。その後、GRヤリスが登場するまでトヨタに4WDターボのスポーツモデルは長らくラインナップされなかった。
セリカGT-FOUR(ST205)1995年ラリー・オーストラリア仕様
恩田岳史さんが所有するセリカもそんなGT-FOUR(ST205)のWRCレプリカの1台。ベースはWRCホモロゲーションモデルの限定車「セリカGT-FOUR WRC」で、ハイマウント化された大型リヤスポイラーが外観上の最大の違いとなっている。
このレプリカセリカは、トヨタワークスがWRCでST205型をメインに使用した1995年の第6戦ラリー・オーストラリア仕様で、ゼッケン2はこのラリーで3位に入ったユハ・カンクネン/ニッキー・グリスト組のもの。
このセリカは、恩田さんが長らく懇意にしているプロショップ「Prototype(プロトタイプ)」にたまたま入庫していたものを気に入って購入したという。
元々は1994年のWRC最終戦(第10戦)のRACラリー仕様(ゼッケン1、ユハ・カンクネン仕様)だったものを、ステッカーが傷んできたことから作り直したものだ。もちろん、新旧共に施行はプロトタイプによるもの。
Prototype 所在地:埼玉県春日部市梅田本町2-37-5 営業時間:11:00~19:00 定休日:毎週水曜日、第一・三木曜日 電話/FAX:048-753-1240 http://www1.odn.ne.jp/prototype/
このレプリカの圧巻はやはりボンネット先端に鎮座する4灯ライトポッド。本物はバンパー部にもさらに2灯備わる6灯仕様だが、純正のフォグランプを生かした4灯としている。また、中央2灯の間にトヨタのエンブレムを配置するなど、オリジナルの工夫を施しつつレプリカの雰囲気を出している。
また、エクステリアではルーフに2本の無線アンテナを立てているのが実に本物っぽさを演出している。実際に無線を搭載しているわけではないのであくまで飾りだが、こうしたこだわりが雰囲気を高めている。
他にもTTE(TOYOTA TEAM EUROPA)のロゴ入りカーボン調のエアロミラーを装着していたり、リヤスポイラーの裏側にもMarlboroのステッカーを貼ってあったりと芸が細かい。
ホイールはワークスと同ブランド、セリカではおなじみのO・Zをセレクト。225/50R16サイズの横浜ゴム・アドバンAD08を組み合わせていた。ホイールは一時スピードラインを装着したこともあったが、今のO・Zに落ち着いたそうだ。
ブレーキディスクはフロントがTRD製のスリット入り、リヤがディクセルとなっている。
マフラーはプロトタイプオリジナルのワンオフ品を装着。楕円形状とプロトタイプロゴが特徴だ。
ロールケージを組んだ2名乗車仕様
インテリアではメーターはキロメートル(280km/h)とマイル(180mile/h)併記のTTEロゴ入りフルスケールメーターを装着したほか、Defiの4連メーターをダッシュボードに設置、メーターやコンソール、ステアリングコラムのパネルをカーボンとするなどレーシーな雰囲気となっている。
ロールケージは前席のサイドバーに加え、後席は斜行バーを2本設置して2名乗車仕様に。運転席はレカロ、助手席はOMPのフルバケットシートを装着している。普段は使用しないが、どちらにもサベルトの4点式シートベルトを用意している。
恩田さんのレプリカセリカ、これまで大きなトラブルはブレーキマスターが戻らなくなったくらい。こまめに動かしていくのが維持していくコツだそうだ。この日も、プロトタイプの店長に誘われてグループAレプリカマシンが集まるツーリングに馳せ参じた。
ちなみに、このセリカは縁あって2013年に発売されたプレイステーション3用レースゲーム『グランツーリスモ6』のTVCMに出演しているという。車列の後よりにチラリとライトポッドを装着したセリカが映っている。YouTubeなどでチェックしてみてはいかがだろうか?