道なき道を救助へ駆けつける頼もしい1台が『トミカ』に! トミカ × リアルカー オールカタログ / No.89 山岳救助車

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.89 山岳救助車 (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)

2023年9月の第三土曜日に、それまでの『トミカ』の『No.89 ランボルギーニ シアン FKP 37』に代わって登場したのが『No.89 山岳救助車』です。

山岳救助車とは、主として山岳災害発生時において、主に山岳などにおける遭難者の救助を主な任務とする山岳救助隊が救助活動に使用することを目的にした車両です。山岳救助では有れた路面の山道や、冬場に雪が積もったり凍結した道を走らねばならないことが多々あるため、できるだけどんな状態の路面でも問題なく走行できるよう、走破性能の高いワンボックス型あるいはSUV型の四輪駆動車をベース車にします。また、狭い山道に乗り込むことを考えて、軽自動車をベースに作られるものもあります。

警察の山岳救助車は緑に白のラインの塗色になる。警察の特殊車両という扱い。なお、警察の車両では、実際にはフロントバンパーに小型ウィンチが装備される。(実車イメージ/『トミカ』箱絵より)

これらの四輪駆動車にウィンチや山岳救助活動に必要な資器材を積載可能とするための資器材収納棚、ルーフラック等を装備し、緊急走行時に点滅するため赤色回転灯や周囲を照らす投光器などの灯火類、他の部隊やチームと連携して捜索活動を行なうための無線、高所、低所、狭所、視界不良等、危険が伴う現場活動において、通常の搬送のほか、宙吊り(縦吊り・横吊り)も可能な舟形の担架であるバスケットストレッチャー、ロッククライミングなどに用いられる登高器やエイト環、ヘルメットや登山靴などの登山用具や用品などの山岳救助用資機材などが備えられます。

さて、一口に山岳救助隊と言っても、実は様々な組織があります。警察の山岳警備隊、消防の山岳救助隊、航空自衛隊の航空救難団救難隊や陸上自衛隊の冬季遭難救援隊、市町村の消防団や猟友会、山小屋や山岳会などで構成する民家の山岳遭難防止対策協会や山岳遭難捜索ネットワークなどです。

消防の山岳救助車は赤く塗られる。消防車の仲間という扱いだ。同じハイエースをベースにしてもボディカラーだけでずいぶん印象が変わる。(PHOTO:秋田市消防本部)

このうち、専用の山岳救助車を持つような組織は警察の山岳警備隊か消防の山岳救助隊になりますが、『トミカ』の『No.89 山岳救助車』は警察の山岳警備隊が用いる緑と白の塗色のワンボックス型のものをモデル化しています。ちなみに消防の山岳救助隊が用いる車両は赤で塗られますが、これからもわかるように、大雑把に言えば警察の山岳救助車は警察の特殊車両の仲間、消防の山岳救助車は消防車の仲間になります。ただし同じく山岳地で使用され、必要な性能や装備もほとんど同じなので、車両そのものの内容には両者に大きな差はありません。

豊田自動織機が提案した未来型の山岳救助車『5D ADVENTURE』。天井にはドローンも装備される設定。将来的にはこんなSFチックなクルマになるかもしれない。(PHOTO:豊田自動織機)

しかし消防の山岳救助隊が山岳遭難に対応するのみの組織で、原則として各消防本部や消防署の管轄範囲のみに出動するのに対して、警察の山岳警備隊は山岳地帯の警察官としての任務を負う組織なので、山岳救助以外にも、登山道の危険個所の点検や高山植物の無断採取の取り締まり、入山届の受付、犯罪事件の捜査など、隊員はそれぞれ駐在所や交番にわかれて常駐しつつ刑事・交通・生活安全事案など通常の警察業務の対応にあたっています。さらに警視庁の第七機動隊の中には緊急事件発生に備えた山岳救助レンジャー部隊があり、山岳遭難事件に急行して対処にあたるほか、山中に逃げ込んだり立てこもった犯罪者に対し、すみやかに犯人制圧にあたります。

『トミカ』の『No.89 山岳救助車』はトヨタの現行ハイエース(H200系)をベースとした山岳救助車をモデル化しています。1967年に初代モデルが登場したハイエースはトヨタを、いや、日本を代表するワンボックス車で、特に貨物車としての性能が高く、事業用にも自家用にも様々な用途に用いられて重宝されています。

実車ハイエース バン スーパーGL(標準ボディ・2WD・ディーゼル車/オプション装着車/2020年モデル)

ハイエースは常に好評・好調のうちに代を重ね、2023年9月現在、海外では6代目にあたるH300系が最新現行モデルとなっていますが、国内最新の現行モデルは2004年にデビューした、5代目にあたるH200系です。このH200系は広い室内と高い衝突安全性能の確保、環境性能の向上を図るとともに、機能と美しさの融合を追求したデザイン、豊富なボディバリエーション、快適性・利便性を高める各種機能・装備の採用などにより、次世代の商用車の基準を追求しています。

ひと口に200系ハイエースと言っても歴史が長いため、様々な改良が施されて現在まで進化発展してきています。ハイエース愛好家の間ではこの進化度合いに応じて型式分けがされています。最初に登場したものを1型(Ⅰ型)とし、2007年8月のマイナーチェンジで登場したものを2型(Ⅱ型)、1KD型ディーゼルエンジンを改良した2010年8月に登場したものを3型(Ⅲ型)、新エコカー減税に対応した2012年5月登場の物を3型後期(あるいは3.5型/Ⅲ型)、内外装ともにチェンジしてスタイリッシュな外観となった2013年12月登場の物を4型(Ⅳ型前期)、2017年11月に登場した安全面などの機能が進化した物を5型(あるいは4,5型/Ⅳ型後期)、2020年5月に登場した機能やデザインがブラッシュアップされた物を6型(あるいはⅣ型最終)、2022年4月に登場した最新型を一部の愛好家の間では7型と呼びます。

ハイエースはトヨタ救急車のベース車両にも使用されている、まさに万能車だ。

2023年9月現在、実は『トミカ』ではノーマルのハイエースが『No.113 トヨタ ハイエース』としてラインアップされており、『No.89 山岳救助車』はそのバリエーションモデルとなります。『No.113 トヨタ ハイエース』の初回限定仕様に装備されたルーフラックが装着され、運転席上にいわゆるパトライトが装備されているのがスタイリングでの大きな違いになります。また、実は200系ハイエースの山岳救助車は、10年ほど前に『トミカくじ15 警察車両スペシャルコレクション』で『トヨタハイエース 山岳救助隊』としてモデル化されていますが、今回の『No.89 山岳救助車』とはまったく仕様が異なっています。

尚、実車の山岳救助車では「警視庁」の3文字がフロントドアのドアハンドル直前からリヤスライドドア後端までの広い範囲に書かれ、「山岳救助隊」の文字はリヤ寄りに書かれています。また、『No.89 山岳救助車』は、実車では他メーカーのワンボックスカーを用いている新仕様のものに近いようで、以前にモデル化したものとの差別化がはかられているようです。

■トヨタ ハイエース バン 2WD スーパーGL ロング 標準幅 標準ルーフ 主要諸元(『トミカ』のモデル車両と同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):4695×1695×1980

ホイールベース(mm):2570

トレッド(前/後・mm) :1470/1465

車両重量(kg):1930

エンジン:1GD-FTV型直列4気筒ディーゼル

排気量(cc):2754

最高出力: 111kW(151ps)/3600rpm

最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1000-3400rpm

トランスミッション:6速AT

サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン/リーフリジッド

ブレーキ(前/後) :ベンチレーテッドディスク/ドラム

タイヤ:(前後):195/80R15 107/105NLT

■毎月第3土曜日はトミカの日!

No.52 トヨタ GR カローラ (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)
No.52 トヨタ GR カローラ (初回特別仕様) (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)*初回のみの特別仕様です。初回特別仕様はトヨタ GRカローラの『モリゾウエディション』を再現しており、通常版とはトミカのカラーに加えて、内装・外装が一部異なります。

毎月第3土曜日は新しいトミカの発売日です。2023年9月の第3土曜日には、上でお伝えしているように、それまでの『No.89 ランボルギーニ シアン FKP 37』に代わって『No.89 山岳救助車』が登場します。また、それまでの『No.52 マツダ CX-5 河川パトロールカー』に代わって『No.52 トヨタ GR カローラ』が登場します。なお、『No.52 トヨタ GR カローラ』には、初回出荷のみの特別仕様もあります。

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