生まれついてのコーナリングマシン「トヨタ・スープラ」【最新スポーツカー 車種別解説 TOYOTA SUPRA】

プラットフォームとエンジンがBMWと共同開発され、17年の時を経てグローバルなスポーツカーとして姿を現した「トヨタ・スープラ」。22年モデルにはファン待望の6速MT追加され、さらにすべてのグレードにファインチューニングが施され、その性能だけでなく快適性も大幅に向上した。最大の魅力であるコーナリング性能は高く、シャシーのバランスの良さと車重の軽さでパワーを使い切る気持ちの良さは何にも変え難いだろう。
REPORT:山田弘樹(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽

待望の6速MTを搭載しファインチューンも実施

2019年におよそ17年ぶりの復活を果たした、トヨタの2シーターFRスポーツカー。最大のトピックは技術提携を結ぶBMWとの共同開発で、プラットフォームやエンジンといった主要部分をBMW Z4と共用していること。その生産は、オーストリアの自動車製造会社であるマグナ・シュタイヤーが行なっている。

エクステリア

マッスルな外観だが、2470㎜というショートホイールベースに加え、大胆に絞り込まれたキャビンのためかな小さく見える。直列6気筒エンジンの存在を主張するロングノーズ、いまにも走り出しそうなフェンダーも特徴だ。
スープラ伝統の直列6気筒ユニットは、BMWが得意とするツインスクロールターボを採用。2020年4月の一部改良で387㎰/500Nmと、登場時から47㎰向上を果たすとともに最高出力の発生回転数も5000rpmから5800rpmに高回転化された。197㎰版、258㎰版の2.0
ℓ直列4気筒ターボエンジンも設定する。
RZのタイヤはミシュラン・パイロットスーパー スポーツで、前255/35、後275/35の19インチを履く。軽量・高剛性を誇る鍛造アルミホイールは、艶消しダークメタリック塗装で足元を引き締めている。
開口部は小さめだが、荷室幅は970 ㎜、奥行きは780㎜、床からトノボードまでは380㎜という高さを確保。大人ふたり用の数泊分のバッグと手土産くらいなら十分に積めるスペースだ。

ラインナップは3.0ℓ直列6気筒ツインスクロールターボを搭載する「RZ」と、直列4気筒ターボ(258㎰/400Nm)を搭載する「SZ―R」および同(197㎰/320Nm)の「SZ」3種類。RZの最高出力は発売当初340㎰だったが、その後の改良で387㎰まで向上(500Nmの最大トルクは同じ)。さらに22年モデルでは、これまで8速ATのみだったトランスミッションに6速MTが追加され、19インチホイールも新意匠の鍛造タイプとなった。

インテリア

コクピット感覚が濃いBMW Z4と比べると、水平基調のインパネとエアコンルーバーが印象的。ニーパッドとドアトリムにより乗員を包み込むイメージ。8.8インチナビや左右独立式フルオートエアコンなどを標準化する。
SZをのぞき電動ランバーサポートを標準化するため、シーンや好みに応じてホールド性の調整を自在にできる。シートハイトは前後一体式で、座面に後傾角が付いていて足を投げ出すようなスポーツカーらしい姿勢になる。タン(もしくはブラック)の本革シートは、RZにオプション設定。
中央に回転計を配する8.8インチメーターは、右側に簡易ナビの表示もできる。
剛性感に富む6速MTは、手首だけでカチッと各ゲートに入る感覚が心地良い。
クラッチはやや重めだが、分厚いトルクのおかげでミートはしやすい。

また、すべてのグレードで、制御系と足まわりをファインチューニング。スタビライザーブッシュの特性や、ダンパーの減衰力特性、可変ダンパーシステムであるAVS、電動パワーステアリングおよびVSC(車両安定装置)の制御を変更するなどして、ハンドリング性能を高める一方で、乗り心地も向上させている。23年4月にはRZグレードの8速AT仕様をベースに「PlasmaOrange 100 Edition」を100台限定で抽選販売するとアナウンスした(現在は受け付け終了)。

パワフルかつ官能的な直6 好バランスの直4も魅力的

スープラ最大の特徴は、ずばりコーナリング性能の高さだ。そのためにトヨタ開発陣はそのボディを2シーターのみに割り切り、86より100㎜も短い2470㎜のホイールベースを与えて1.55というホイールベース・トレッド比を実現した。そのハンドリングは発売前のプロトタイプ時こそトリッキーな挙動が目立ったが、基本的にはフロントノーズに直列6気筒ターボを搭載するとは思えないほどよく曲がるスポーツカーに仕上がっており、市販車として発売されてからはリヤのスタビリティも大きく改善された。また改良を重ねるごとに、質感にも磨きが掛けられている。

うれしい装備

タッチパッド付きリモートコントローラーは、手元でナビやオーディオなどの操作が可能。
スイッチで楽に操作できる電動パーキングブレーキ、ヒルスタートアシストを標準化。
収納は少なめだが、2本分のドリンクホルダーをセンターコンソールに配置する。
スポーツモードをオンにすると、エンジンやステアリングのレスポンスが向上。

エンジンはなんといってもBMW製の3.0ℓ直列6気筒ターボがパワフルで官能的。さすがに同社のフラグシップモデルであるM3/M4用「S58」ユニットには一歩譲るものの、淀みなく吹け上がる質感の高さは現代のミドル級スポーツカーとしては最高水準だと言える。満を持して登場した6速MTはタッチに節度感があり、この直列6気筒エンジンの魅力を存分に引き出してくれる。対して4気筒ターボ搭載モデルは1.55のホイールベーストレッド比に50対50の前後重量バランスを実現したシャシーのバランスがとても良く、車重の軽さも手伝って動きが軽快。エンジンの吹け上がりはスムーズで、そのパワーを使い切る気持ち良さという点ではRZにひけを取らないドライビングの楽しさがある。

Country     Japan
Debut      2019年5月(一部改良 22年7月)
車両本体価格    499万5000円~731万3000円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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