地を這うような俊敏フットワーク「ポルシェ718ボクスター」【最新スポーツカー車種別解説 PORSCH 718 BOXSTER】

水平対向エンジンの重心を低く配置できる最大の美点を余すことなく体現した「ポルシェ 718 ボクスター」。低重心にこだわり幌の収納スペースをエンジン上に配し、計器類も大径のタコメーターを中心にデザインされた3連メーター、サイドサポートを重視したシートなど、ミッドシップオープンスポーツカーとしての魅力は非常に高い。しかしEV化のレールが敷かれたことで、今後はこの美点とは訣別。幌を開け背後からの水平対向エンジンの音を聞きながら思い通りに操る楽しさは何にも変え難いだろう。
REPORT:岡島裕二(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽 

次期型はEVが既定路線 内燃機関を楽しむなら今!

現行型ボクスターは水平対向6気筒を搭載して発売されたが、2016年モデルからは全車が4気筒直噴ターボに変更され、かつて4気筒エンジンを搭載してレースで活躍したマシンの718を車名に追加した。

エクステリア

言うなれば「ケイマンのオープン版」に相当するボクスター。開いた幌はエンジンの上に収まるが、それは逆にいえばいかにエンジン高を抑えた低重心の設計を施しているかということの証となる。オープン時のプロポーションも完璧だ。
ボクスターシリーズ全体としては18インチから20インチまで合計8タイプのホイールをラインナップ。撮影車両が履くのは「ボクスターS 」などに標準装備する「20インチ Carrera S」ホイールだ。

4気筒になったボクスターは排気量こそ縮小されたが、スペック的には自然吸気時代よりも出力アップし、直噴ターボは低回転域からトルクが出せるため加速性能は全般的に向上した。ターボとしては高回転域の伸びも良く、オープン時には荒々しい排気サウンドを聞きながら軽快な走りを楽しむことができる。4気筒になったことで、ミッドシップがもたらすバランスの良さにも磨きが掛かり、オープンカー随一の旋回性能を実現した。ワインディングロードでは素早い操舵にも的確にクルマが応えて向きが変わり、そこからアクセルを踏み込めば強力なトラクションを後輪が確実に受け止めて、鋭い加速でコーナーを立ち上がることができる。この身軽さこそが4気筒ボクスターの魅力だ。

インテリア

5連メーターを採用する「911」に対し、ボクスターは初代から一貫して3連メーターを採用。中央を大径のタコメーターとしているのが生粋のスポーツカーらしい。ダッシュボードはオーソドックスなT字型レイアウトで、シフトレバーの前後にスイッチを集中配置する。
標準タイプのシートでもホールド性は高いが、「ボクスターT」はサイドサポートを強化した「スポーツシートプラス」を標準採用。低い着座位置はさすがだ。
多くのスポーツモデルが「2ペダル専用」に舵を切るなか、ボクスターはしっかりとマニュアルトランスミッションを展開。
アクセルはオルガン式で、ペダル類はほぼ左右均等にレイアウトされている。シフトレバーは硬過ぎない絶妙な操作感。

だが、巷では6気筒の復活を望む声が多く、20年には4.0ℓ6気筒の自然吸気を搭載したGTS4.0が追加された。GTS4.0は高回転域の伸びがさらに良くなり、4気筒では不評だった排気音も官能的な

音色となり、ファンを満足させた。718シリーズは次期モデルはEVになってしまうので、ミッドシップエンジンのボクスターを手に入れるなら今が最後のチャンスだ。

Country       Germany
Debut        2016年4月(スパイダーRS追加:23年5月)
車両本体価格     879万円~2024万円 

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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