本質を磨き抜いた正統進化の3代目「ホンダ・フリード」【最新国産新型車 車種別解説 HONDA FREED】

コンパクトミニバンの定番中の定番の先代の誕生から8年、24年にフルモデルチェンジを図った「ホンダ・フリード」。先々代を思い起こすどこか懐かしいデザインと最新のe:HEVの技術を装備しつつ快適な使い勝手はそのままに新たな定番と言える。パワートレインと乗車人数の組み合わせでユーザーの希望に沿う多様なモデル展開も魅力だ。
REPORT:安藤 眞(本文)/遠藤正賢(写真解説) PHOTO:井上 誠 MODEL:あらた唯

e:HEVの新規搭載で競合を上回る質感を獲得

フリードがフルモデルチェンジしたのは2024年6月。先代モデルが終盤まで高い人気を維持していたこともあり、ボディサイズや使い勝手はほぼ継承。全長は45㎜伸びて4310㎜となっているが、これはハイブリッド・パワーユニットを冷却するラジエータが追加となり、それを収めるスペースが必要になったため、フロントオーバーハングを伸ばしたから。全幅は「クロスター」グレードが1720㎜と3ナンバー化しているが、これもホイールアーチプロテクターの張り出しによるもの。最小回転半径は5.2mと、取り回しの良さは変わっていない。

エクステリア

現行の3代目フ D A T Aリードの外観は前身であるモビリオに先祖返り。「CROSSTAR 」系は専用バンパー(フロント・リヤ)、サイドシルガーニッシュ、ホイールアーチプロテクターを纏いアウトドアテイストが高まった。最小回転半径は5.2m。

グレード展開は整理され、標準車には「エアー」というサブネームを追加。3列シートの6人または7人乗りが用意される。一方、従来型では2列シート5人乗り仕様の呼称だった「クロスター」がグレードに昇格。こちらは3列シート6人乗りと2列シート5人乗りという構成だ。いずれも6人乗りの2列目は左右独立のキャプテンシートとなり、チャイルドシートを二脚装着しても、真ん中を通って3列目にアクセスできる。3列目の空間や快適性もクラスダントツなので、3列目の使用頻度が高いならベストな選択肢だ。

乗降性

5人乗りもまた、独特な存在。2列目を折り畳んでフロアボードを使うと、ラゲッジルームまでフラットな空間がつくれる。前後長は約1.9m確保でき、車中泊には最適。また、畳んだ後席に後ろ向きに座り、ラゲッジルームにキャンプテーブルを置けば、デスクワークや食事ができるスペースがつくれる。そんなことができるのも、同クラスではフリードが唯一だ。

インストルメントパネル

広い面積にファブリックが貼られたほか、インパネトレーには傷が目立ちにくいシボが施され、全体的にマットな質感に仕立てられている。シフトレバーは全車ともストレート式を採用し、直感的な操作が可能。

パワーユニットは1.5ℓのガソリンエンジンと、それに2モーターを組み合わせたハイブリッドシステム〝e:HEVe〞との2本立て。前者は従来型の直噴に対してポート噴射となり、出力/トルクとも少し低くなったが、直噴特有の燃焼騒音や、トルクの過敏感がなくなっており、常用域ではむしろ乗りやすくなった。また、アイドルストップ機能は廃止され、バッテリーは安価な55B24L型も使えるようになっている。

居住性

e:HEV はフィットと同様、エンジンで発電してモーターで走る〝シリーズ式ハイブリッド〞をベースに、直結クラッチも追加して、エンジン走行モードやパラレルモードも使えるようにしたもの。従来型のi:DCDは長い登り坂の渋滞時にクラッチが過熱するという弱点があったが、e:HEVがクラッチを使うのは高速巡行時だけなので、その心配はなくなった。モーター出力は90kW、最大トルクは253Nmと大幅増。エンジンを止めてモーター+バッテリー走行する時間が長くなり、電動感が増している。一方で、燃費効率一辺倒ではなく、全開加速時にはエンジン回転数を有段ATのように変化させる遊び心ももっている。

うれしい装備

フロントドアトリムには運転席側、助手席側ともボトルホルダー付き大型ドアポケットを設置。折り畳み傘も収納できる。
インパネ中央下部にはシガーソケットのほかUSB Type-A端子を用意。引き出し式のドリンクホルダーと小物を置くのに便利な上下二段のトレーも備わる。
フルモデルチェンジ発表     24年6月27日 
月間販売台数          7964台(24年6月~11月平均)
WLTCモード燃費        25.6km/ℓ ※「e:HEV AIR」のFF車  

ラゲッジルーム

操縦性能はガソリン車が軽快感重視、e:HEVが上質感重視だが、ガソリン車は低速域の操舵力がやや軽めで、バランス的にはe:HEVの方が好ましく感じた。いずれの仕様も乗り心地にフワつき感はなく、快適かつ落ち着きがある。車内の静かさでも、ライバルの一歩上を行く。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.165「2025年 最新国産新型車のすべて」の再構成です

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