トヨタ史上最強ホットハッチ「トヨタGRカローラ」【最新スポーツカー 車種別解説 GR COROLLA】

豊田章男現会長のこだわりが生み出した「トヨタGRカローラ」。GRヤリスの発展版として、かつてモータースポーツシーンでも活躍したカローラブランドで新旧のファン層に大きくアピールする。野性味あふれる走りとともに、張り出したフェンダー、赤いアクセントカラーが配され、そのスパルタンなスタイリングはカローラというイメージを一変させる。また徹底した軽量化で2シーターとし、専用のチューンも施され、カローラへの強い思いが宿っている「モリゾウエディション」もラインナップ。
REPORT:岡本幸一郎(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:神村 聖

久々に復活したカローラのホットモデル

WRC等への参戦を念頭において開発されたGRヤリスの発展版として、かつてカローラを愛車としていた豊田章男現会長の「お客さまを虜にするカローラを取り戻したい」との強い思いを受け、TGRがモータースポーツ参戦からの学びを活かして開発したモデルとなる。

エクステリア

カローラをベースに手組のハイパワーエンジンとスポーツ4WDを搭載して戦闘力を高め、豊田章男現会長の名前を付けた特別仕様も用意。そんな、10年前には想像もし得なかったモデルを用意するのが今のトヨタの凄さだ。
バルブやピストンなどの部品は重量が近いものを選んで同じエンジンに組み込まれ、熟練のスタッフによる手組みという一般的な量産車とは異なる手法で製造されるエンジン。基本は「GRヤリス」用と同じだが、304㎰までパワーアップが図られた。モリゾウエディション用はブーストアップなどで標準仕様よりもトルクアップを実施。
ホイールはBBS製鍛造。標準仕様のGRカローラは235/40R18サイズの「ADVAN APEX V601」を履くのに対し、モリゾウエディションは10㎜ワイドな245サイズにするとともに、銘柄もよりハイグリップな「ミシュラン パイロットスポーツ CUP2コネクト」として旋回性能を高めている。
モリゾウエディションは軽量化のためリヤシートを撤去。リヤシートを備える標準仕様でリヤシートを倒した状態とほぼ同じ広さだ。ちなみに床下にはバッテリーを搭載し前後重量配分を最適化。

ちなみに、GRヤリスとGRカローラの両方が販売されるのは日本や豪州など限られた国となる。ベース車の面影を残しつつも、後付け感を強調するかのように架装されたフェンダーや、随所に赤のアクセントを配しアルカンターラをふんだんに用いたコクピットなど、内外装はわかりやすく差別化されている。GRヤリス譲りのG16E-GTS型エンジンは、車両重量の増加に見合う動力性能の強化を図るべく、32㎰もの出力増の実現や、冷却や排気効率の向上、燃料噴射ポンプの増量、ウェイストゲートの制御の工夫によるレスポンスの確保、ピストンの重量合わせなどを行なっている。

インテリア

ステアリングをバックスキン調の素材とし、赤いセンターマーキングを施すのはモリゾウエディション専用の仕立て。4WDモード切り替えダイヤルはシフトレバー後方の手が届きやすい位置に配置。
モリゾウエディションのシートは標準車よりも姿勢保持性能が高い。サイドサポートの張り出しが一段と大きく、フレームが追加されて剛性も高められている。モリゾウエディションには後席はないが、通常モデルにはちゃんと備えられ、大人ふたりが無理なく座れる後席として実用性も高い。
メーターはフルデジタルで、中央と左右の表示項目は好みに応じてセレクトできる。
全車ともトランスミッションは6速マニュアルだが、モリゾウエディションはギヤ比が異なるほか高強度素材で競技など、より過酷な走行にも対応。

また、RZをベースに「お客さまを魅了する野性味」を追求して開発し、70台が抽選販売された「RZモリゾウエディション」では、徹底した軽量化と剛性アップや、さらなる動力性能とコーナリング性能の向上を図り、気持ちが昂りずっと乗っていたくなるような走りの味を追求した。

GRヤリスより日常的に モリゾウモデルは刺激的!

3ペダルの6速MTのみの設定で、手引きのサイドブレーキもある。それだけでも、より操る楽しさをダイレクトに味わえそうでうれしい。期待どおり、ドライブフィールはすべてが刺激的だ。エンジンは低速域は控えめながら、3000rpmあたりから本領を発揮し、いかにも高い過給圧が掛かったような盛り上がり感のある強烈な加速を味わうことができる。3気筒ながら勇ましく野太い独特のサウンドも印象的だ。電子制御多板クラッチを用いたアクティブトルクスプリット4WDシステムは、前後輪のトルク配分を30対70、60対40、50対50から選べるようになっている。四輪を駆動するので基本性能として操縦安定性が高く、その中でモードの選択により操縦感覚が変わり、リヤ寄りにすると一層俊敏な回頭性を楽しめる。

うれしい装備

ルーフはカーボン製で軽量化と低重心化に貢献。
4WDの前後配分は「60対40」「50対50」そして後輪駆動車のようにアクセルで姿勢をコントロールする走りが楽しめる「30対70」に変更可能。
走行制御を「SPORT」にするとメーターはエンジン回転をバーグラフで表示する。 
四輪のトルク配分やブースト計などスポーツ走行に適した表示も用意。

引き締まった足まわりにより挙動の乱れは抑えられているが、乗り心地はそれほど硬いわけではない。高性能を日常的に楽しめるRZに対し、モリゾウエディションは、走りに特化したクルマとして開発されたことが乗ると即座にわかる。低〜中速域をさらに増強したトルク特性のエンジンやローギヤード化が効いて、より速さを直感する。ハンドリングも軽量化と車体剛性の向上や専用の足まわりのチューニングによりスパルタンな雰囲気と走りの一体感が増している。コーナリング限界も高まっているに違いない。まずは受注の再開を願うのみだ。

Country       Japan 
Debut        2022年6月
車両本体価格      525万円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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