洗練と革新の4WDターボ進化形「フォルクスワーゲン・ゴルフR」【最新スポーツカー 車種別解説 VOLKSWAGEN GOLF R】

スタートから抜群の瞬発力と加速感を誇る「フォルクスワーゲン ゴルフR」。23年7月にはチタンエキゾーストシステムなど多くの専用装備が施された日本投入20周年を記念した特別仕様車も登場。スピードを求めるスペシャルモードからコンフォートモードまで、モードによってそれぞれ異なる顔を見せるが日常使いでも快適な乗り心地は正統派のオールラウンダーと言えるだろう。
REPORT:岡本幸一郎(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:宮門秀行

R専用の独自メカニズムでGTIと明確に差別化

初めてゴルフに「R」と名のつくモデルがラインナップされたのは、ゴルフ4に3.2ℓの挟角V6エンジンを搭載した「R32」だ。4WDの4MOTIONを搭載するのもGTIとの大きな違いで、続くゴルフ5にも同様の組み合わせで設定された。

エクステリア

R専用エクステリアはもちろん、走りを求めたシャシーセッティングによりスタンダードなゴルフ比で15㎜ローダウンしたフォルムが、走りへの期待を高める。クローム仕上げのデュアルツインエキゾーストも迫力だ。
フラットに太いトルクを発生する2.0ℓターボに、現代の基準としてはクロス気味といえる7速DCTを組み合わせたパワートレインは、シームレスな加速感を実現。4気筒エンジンだが意外にフロントヘビー傾向であり、軸重から計算した前後重量配分は62対38となっている。
前後のタイヤサイズは同一で、指定空気圧は270kPa。タイヤ銘柄はブリヂストン・ポテンザS005だ。ゴルフRの特徴的なブルーのアクセントカラーはブレーキキャリパーにも使われている。
後席中央のトランクスルー機構を用意するなどラゲッジの使い勝手は、実用車であるゴルフの良さをしっかりと踏襲。フロアボードを低い位置にセットすることで荷室高をさらに約10㎝稼ぐことができる。

ゴルフ6以降はGTIと内容は異なるが同じ2.0ℓ直4ターボのスペックを差別化して搭載されるようになった。ゴルフ8では従来比で10㎰増、20Nm増となるゴルフ史上最強の2.0TSIエンジンが搭載された。GTIに対しては、75㎰と50Nmのアドバンテージとなる。すでに他モデルの「R」にも採用されている「Rパフォーマンスベクタリング」や、電子制御デファレンシャルロックの「XDS」とアダプティブシャシーコントロールの「DCC」を統合制御し、さらに4MOTIONと高度に連携した「ビークルダイナミクスマネージャー」が新たに採用されたのが現行型の特徴だ。

インテリア

主に握る部分にディンプル加工を施したDシェイプ・ステアリングと対峙しているだけでスポーツマインドが昂る空間となっている。フル液晶メーターと大画面インフォテイメントシステムが適格に情報を伝えてくれる。
10.25インチ液晶メーターはオーソドックスな表示。中央にタコメーターを置くデザインで、地図を表示するモードなど多彩な表現が可能。
マニュアルモード用のパドルシフトも備えている。
剛性感あふれるブレーキペダルが気持ちいい。

発売時から車両価格が上昇し、執筆時点では670万円を超えるほどになった。VWらしく控えめな中にも、「R」の一員として専用に仕立てられた内外装からもタダモノではない雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。さらに、7月には出力が向上した専用チューニングのエンジンを搭載するほか、チタンエキゾーストシステムやナッパレザーシートをはじめ数々の専用装備が与えられた日本導入20周年を記念した特別仕様車が発売された。

4MOTIONだから可能な脅威の瞬発力とグリップ力

320㎰で420Nmを誇るエンジンと7速DCTに4MOTIONを組み合わせたゴルフRは、発進加速から抜群の瞬発力を誇り、踏み込むと刺激的な加速を味わうことができる。そこは前輪駆動ゆえ空転しないようにどうしても発進加速を抑えざるをえないGTIとは異なる部分に違いない。さらに、新たに採用したトルクベクタリングやビークルダイナミクスマネージャーも効いて、ハンドリングも楽しい。歴代ゴルフRはアンダーステアが強い傾向だったのに対し、新型は小さな舵角でターンインできて、それを維持したままアクセルオンでグイグイと曲がっていける。コーナリングの感覚がだいぶ違う。DCCでレースモードを選択すると、走りに特化した乗り味となり、アクセルオフ時にパンパンと音をたてるような演出とともに、メーターも気分を高揚させる専用の表示となる。

うれしい装備

10インチのタッチ液晶はナビ機能にとどまらず、車両セッティングなどの入力装置としても活用される。
スマートフォンのワイヤレスチャージ機能を標準装備。
ステアリングの「R」ボタンを押すと、レースモードとなり、排気音が勇ましく変身する。 
ヘッドレスト一体型のスポーティなフロントシートは背面ポケットが豊富で実用性が高い。

20周年記念の特別仕様車では、出力向上とともにドリフトモードとニュルでタイムを出すのに適したスペシャルモードが追加されている。一方でコンフォートを選択すると高性能を味わえながらも乗りやすく、日常使いで不満のない快適な乗り心地を提供してくれるあたりも、あくまでVWの一員らしい。そうしたオールラウンドな性格の持ち主である点も、ゴルフRならではの側面といえそうだ。それなりに高い値付けではあるが、実車に触れるとその価値に納得できる。

Country       Germany
Debut        2022年10月
車両本体価格      677万円2000円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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