マツダMX-30 RE-EV ロータリーエンジンだけが話題なわけじゃない。上質な走りこそ見るべきポイントだ

マツダMX-30 RE-EV
ロータリーエンジン復活が話題のMX-30 RE-EV。発電用の1ローター8C型のフィーリングに注目が集まるが、じつはポイントはそこだけではない。PHEV化でMX-30の魅力はどう高まったか? 確かめた。
TEXT & PHOTO:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)PHOTO:Motor-Fan.jp

エンジンがかかっても、ジェットエンジンが巡航モードの心地良いサウンドが届くだけ

マツダMX-30ロータリーEV Industrial Classic 全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1595mm ホイールベース:2655mm

マツダのMX-30はフリースタイルドアとネーミングされた観音開きのドアや、天然素材に由来するコルクなどをインテリア素材に採用し、従来の流れとは異なるデザインや機能にトライするなど、実に意欲的なモデルだ。パワーユニットに関してもガソリンモデルに加えて、マツダ初の100%バッテリーEVをラインアップし、街ではあまり見かけないものの、中身は思いのほか話題に満ち溢れている。

その勢いは止まることはなく、今度はロータリーエンジンを復活させてきた。2012年にRX-8が生産終了をしてから実に11年ぶりに新型ロータリーユニットを開発。これを100%バッテリーEVの発電機として組み合わせてPHEVモデルとしてラインアップに加えた。

パワートレーン:8C-PH型 エンジン形式:水冷1ローターロータリーエンジン 排気量:830cc 圧縮比:11.9 最高出力:72ps(53kW)/4500rpm 最大トルク:112Nm/4500rpm 燃料供給:筒内燃料直接噴射 燃料:レギュラー 燃料タンク容量:50L

EVモデルでは上手に走ってみても走行距離が100kmを超えると電池残量が3分の2程度に落ちてしまい、街乗り専用車と言ったイメージが強かったが、ロータリーエンジンを発電機として充電させながら走ることで、100%電動駆動車でありながらガソリンモデル同様のロングドライブを楽々とこなせるようになった。

しかも、発電機はロータリーユニットである。おむすび型のローターが繭型のケースの中をグルグルと偏心しながら回っているだけだから静かで滑らか。駆動力として使っていた当時のロータリーユニットでは路面を蹴り出すための抵抗があったはずだが、発電機のロータリーはモーター同様にストレスが少ない。回転領域も2300rpm〜4500rpmと幅が狭くて全然頑張っていない(!)から音変化も小さい。

実際に試乗してみるとノーマルモードにおいては電池残量が45%前後に達するか、キックダウンするような急加速をしない限りはEVとして走行し、従来の100%EVモデル同様、聞こえてくるのは周りの走行音程度。当然エンジンがかかればすぐに気付くはずだが、このクルマは違う。シューンッとまるで海外旅行に行った夜間飛行の時のように、ジェットエンジンが巡航モードで飛んでいるときの、心地良いサウンドが届くだけだ。  

充電リッドは右リヤ側。急速充電(CHAdeMO)にも対応している。

エンジンがかかるときの滑らかさも、チャージモードと乗り比べてみると違いがわかる。チャージモードでは任意の目標電池残量目指して充電効率の良い回転域をターゲットに即座にエンジンをスタートさせるため、火が入ったことを静かなりにも気付かせる。ノーマルモードではまず低い回転でスタートさせ、アクセル開度に応じてエンジン回転をリンクさせるから、スタート時も加速時も音変化が自然で静けさをキープし続けてくれる。

もっともEVモードにしておけばまったくエンジンはかかることなく100km程度までは走れる(EV走行換算距離:107km)から、さらに静かなモードで街乗りはできるし、外部電源を使って充電を繰り返せばガソリンを消費することさえなくなる。新開発の830ccの8C型シングルロータリーエンジンはあくまでも発電機だから、加速時にサポートはしてくれない。走りはあくまでもモーター出力に頼るために、100%EVモデルと同レベル。車重が130kg重くなっていながらも170ps(125kW)にパワーアップさせたことで踏んでいけばその差は気にならない(MX-30 EVモデルは145ps)。

215/55R18 95Hのブリヂストン・トランザT005Aを装着
リヤサスペンションはトーションビーム式
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式

重量増はむしろ操作フィールや安定感を向上させた。EVモデルではスカスカだったボンネット内にしっかりと収まったロータリー&発電ユニットによって、フロント荷重が増し、EVモデルの軽いステアフィールから、どっしりと落ち着いたものになった。旋回中はやや保舵力が重めなことが唯一気になったが、細かな路面変化による硬さや敏感な上下動が収まって、重さは良い方向に振れた印象だ。

ロータリーエンジン復活に期待を寄せていた人には物足りないかもしれないが、ロータリーエンジンのスムースさが充電機としての機能を最大限発揮させたことで、これまで以上に静かなPHEVができた。このロータリーエンジンを使って、代替燃料の利用やパワーアップしたPHEVモデル開発の可能性は間違いなく広がっただろうから、これからの展開こそ目が離せない。MX-30はそんなチャレンジ精神旺盛なマツダの切り込み隊長として、今回も良い仕事をしたに違いない。次は是非デザイン面においても市場を賑わせるチャレンジをしてほしい。

97.1kmの試乗で、EV走行の電費は6.5km/kWh エンジンでは14.3km/L
マツダMX-30ロータリーEV Natural Monotone ボディカラーはマシーングレープレミアムメタリック
マツダMX-30ロータリーEV Natural Monotone(FF)
全長×全幅×全高:4395×1795×1595mm
ホイールベース:2655mm
車両重量:1780kg
エンジン形式:水冷1ローター
総排気量:830cc
エンジン最高出力:53kW(72ps)/4500rpm
エンジン最大トルク:112Nm/4500rpm
モーター最高出力:125kW(170ps)/9000rpm
モーター最大トルク:260Nm/0-4481rpm
使用燃料・タンク容量:無鉛レギュラーガソリン・50L
バッテリー種類:リチウムイオン電池
バッテリー総電力量:17.8kWh
WLTCモードハイブリッド燃費:15.4km/L
同市街地モード:11.1km/L
同郊外モード:18.5km/L
同高速道路モード:16.4km/L
WLTCモード充電電力使用時走行距離:107km
WLTCモードEV走行換算距離:107km
WLTCモード交流電力量消費率:176Wh/km
同市街地モード:165Wh/km
同郊外モード:168Wh/km
同高速道路モード:190Wh/km
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:215/55R18 95H
乗車定員:5名
車両価格:478万5000円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…