2023年は軽スーパーハイトワゴンの当たり年!N-BOX、デリカミニ、スペーシアどれを選ぶ?

2023年は軽スーパーハイトワゴンのレベルアップが目覚ましい年だった。発売・発表順に振り返ってみれば、1月の東京オートサロンでお披露目された三菱デリカミニが5月に発売、8月からティザーのはじまったホンダN-BOXが10月に発売され、ジャパンモビリティショーでプロトタイプを展示したスズキ・スペーシアは11月から売り出されている。いずれも後席にスライドドアを備えた軽スーパーハイトワゴンに属するモデルであり、同カテゴリーへの注目度を高めていったのは間違いない。その実力は、ニッポンの国民車のレベルアップを実感させてくれた。

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:山本晋也(YAMAMOTO Shinya)/中野幸次(NAKANO Koji)/HONDA

年末のデザイン賞レース、軽スーパーハイトワゴンが相次いで受賞

ひと昔前であれば「軽自動車はクルマじゃない」とうそぶく業界関係者も多かった。その発言が意味するところは「軽自動車としてよくできていても、本質的には登録車と対等に比べられない」というものであったりするのだが、2023年12月には、そうした考えが古すぎると実感する2つの賞が相次いで発表された。

ひとつは、日本カー・オブ・ザ・イヤーのひとつである「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー2023–2024」に軽自動車である三菱「デリカミニ」が選ばれたこと。もう一つは、JAFCAが主催する「オートカラーアウォード2023」に、ホンダ「N-BOX(ファッションスタイル)」の専用色「オータムイエロー・パール」が選ばれたことだ。

デリカミニは4WDに大径タイヤと専用ショックアブソーバーを与えるほどのこだわりで作られている。

軽自動車に限らずプロフェッショナルの目線で評価する賞を、2023年に誕生した軽スーパーハイトワゴンが受賞したことは偶然ではない。切磋琢磨という四字熟語の通り、軽スーパーハイトワゴンという激戦区において各社が知恵を絞り、リソースをかけた結果として、素晴らしいクルマが生まれたといえる。

N-BOXファッションスタイル専用色である「オータムイエローパール」はオートカラーアウォードにも選ばれた。

この2台につづき、軽スーパーハイトワゴンの雄であるスズキ・スペーシアも11月にはフルモデルチェンジを行うなど、まさに軽スーパーハイトワゴン界の競争は激しくなっている。作り手としては心休まらないかもしれないが、我々ユーザーにとっては魅力的な選択肢が増えることは大歓迎だ。

スズキ・スペーシアも標準系(左)とカスタム系(右)ではまったく異なる顔つきをみせている。

コモディティ商品ではない。各車の個性は明確に違う

新型スペーシア&スペーシアギア

国内新車試乗の4割を占める軽自動車、その中でも半分以上が軽スーパーハイトワゴン(全高1700mm以上、後席スライドドアなどが特徴)という販売実績を見ると、数字の上からも軽スーパーハイトワゴンはニッポンの国民車になっていると考えて妥当だろう。

ホンダは新型N-BOXの開発にあたって、「軽自動車は子育て世代に役立つセカンドカー」というイメージから脱却できる「誰もが満足できるファーストカー」を目指したというが、まさに軽スーパーハイトワゴンはあらゆる世代が日常の足として活用するモビリティとなっている。

左が新型N-BOXカスタム、右が先代型。

オールマイティなニーズに応える国民車と記すと、白物家電のようなコモディティ化(一般化)した工業製品を想像してしまうかもしれないが、冒頭で記したようにいまの軽スーパーハイトワゴンというのは個性的なデザインという付加価値によっても魅力を高めている。

コモディティ商品であれば、どれを買ってもベネフィット(得られる利便性など)は変わらないのだから、安いものを選べばいいとなるが、軽スーパーハイトワゴン各車には、「これが欲しい」と思わせる個性がある。だからこそ、このカテゴリーへの注目度は高まり続けているのだろう。

それぞれの魅力については、詳しいレポートを見てほしいと思うが、最後に筆者の印象を簡単にまとめてお伝えしようと思う。

デリカミニは、軽自動車でもなければ、軽スーパーハイトワゴンともいえない「デリカ」ファミリーの一員であるという魅力は代えがたいものがある。ハードウェアについても、基本的には三菱の軽スーパーハイトワゴン「eKスペース」と共通だが、デリカミニの4WDについては大径タイヤと専用セッティングのショックアブソーバーを与えるなど、名前にふさわしい走りを実現するためにこだわっているのもデリカミニを選びたくなるエピソードのひとつだ。

兄貴分であるデリカD:5(右)を単にスケースダウンするのではなく、デリカと感じさせるアピアランスとしているのはDNAのなせるワザ。

言うまでもなく、日本で一番売れている「N-BOX」は、メカニズムはキャリーオーバーでキープコンセプトのフルモデルチェンジを果たした。口の悪い人からは「実質的にはマイナーチェンジ、ホンダは守りにはいった」という批判もあったようだが、新型N-BOXに乗ってしまえば、そんな印象は吹き飛ぶ。圧倒的に静かで滑らかな走りになっている。それは出力的に不利なNAエンジン車でも感じられるところで、前述したように「新型N-BOXではファーストカーを目指した」という開発陣の思いが実現しているといえる出来映えだ。

N-BOX(左)とN-BOXカスタム。ターボエンジンはカスタムにしか設定されない。

スズキ・スペーシアについては、後席を多様に使える新機能「マルチユースフラップ」が話題となっているが、スズキらしい軽量化へのこだわりと、マイルドハイブリッドとの組み合わせにより燃費性能に優れているのは、スーパーハイトワゴンであっても軽自動車の本分が何かをしっかり理解していると感じられるところ。優れているのはカタログでの燃費性能だけではない。市街地と高速道路を組み合わせたルートを試乗してみたところ、スペーシアのNAエンジン車では22km/Lという実用燃費を確認することができた。一般的に空力に不利といわれる軽スーパーハイトワゴンで、この数字を実現するのは、さすがというほかない。

スペーシアカスタムはマイルドハイブリッドとターボエンジンを組み合わせたパワートレインを用意する。

いずれにしても、このように魅力的なモデルが揃った軽スーパーハイトワゴンは、今後も日本の新車市場における中心的カテゴリーであることは確実。ここで紹介できなかった同カテゴリーの車種も含めて、クルマを買うときにはチェックが欠かせないモデルたちといえるだろう。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…