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この写真、なんだかおわかりになるだろうか? と言ってもタイトルに書いてあるから、これがドアヒンジだというのは、なんとなくおわかりになると思う。


このドアヒンジは、VWゴルフ(ゴルフ7)のものだ。欧米車の主流である形鋼ヒンジだ。
では、こちらは?
スバルWRXのドアヒンジ


国産車の場合は、ボディ側・ドア側ふたつのプレス成形した枠に軸を差し込んで上下からカシメる構造だ。欧州車は、鍛造、もしくは鋼材からの削り出しで成形し、片持ちの軸部にドア側を上部から差し込む「リフトオフ」という手法を採ることが多い。
プレスヒンジと形鋼ヒンジ


リフトオフが求められる理由

国産勢のプレスカシメ、欧米勢の形鋼or鍛造という違いは製造の初期段階まで遡る。元々欧州ではヒンジをボルト締めではなくボディに溶接していたのに対し、日本では鋳物をねじ留めしていたことが、今に至るまで違いに表れているという。
リフトオフ式3種の構造



軽量化は現代の自動車の優先開発テーマだから、ドアヒンジといえどもその例外ではない。またドアの形が複雑になる傾向があるので、ヒンジの場所取りも厳しくなってきている。その意味でも形鋼ヒンジが有利だという。
ヒンジ自体の部品としてのコストは、形鋼ヒンジの方が高い。しかし、ドアの組み付け工程を考えると、プレスヒンジと形鋼ヒンジのコスト差は大きくないという。
ヒンジ部品だけで、ドアの優劣が決まるわけではない。が、そこから見えてくる背景もある。また、ドアヒンジにもじつにさまざまなノウハウと特許があるという。
では、国産・輸入車のドアヒンジ図鑑をご覧下さい。とくに注意書きがない場合は、右フロントドアの上のドアヒンジである。
国産車に多いプレス成形ドアヒンジ
トヨタ・ランドクルーザー250


トヨタ・プリウス


トヨタRAV4


レクサスRZ450e


ホンダWR-V


新型GR86/SUBARU BRZ



MAZDA2


MAZDA3


日産ノート


スバルXV(先代)


日産リーフ


ルノー・キャプチャー


プジョー308


プジョー408


マツダCX-8


トヨタ先代クラウン


日産スカイライン



ヒョンデ・コナ(KONA)


欧州車に多い形鋼材を使ったドアヒンジ
アウディQ8 Sportback 55 e-tron


アウディRS4


日産GT-R



メルセデス・ベンツAクラス


メルセデス・ベンツCクラス


メルセデスAMG SL43


VWゴルフ8


レクサスUX


VWアルテオン



アルファロメオ・ジュリア


アルファロメオ・トナーレ


ボルボEX30


トヨタ・センチュリー


トヨタ・クラウンセダン

新型クラウンは、クラウンクロスオーバー、クラウンスポーツ、クラウンエステート、そしてクラウンセダンの4つの車型で構成される。クラウンセダンは、エンジン縦置きの後輪駆動ベースのプラットフォーム、TNGA GA-Lを使うが、セダン以外はエンジン横置きのGA-Kプラットフォームを使う。ドアヒンジはプレス成形のヒンジだ。だが、GA-Lのクラウンセダンは写真のように形鋼材のヒンジを使う。同じGA-Lの先代クラウンはプレス成形のヒンジだったから、新型クラウンセダンのドアヒンジは、トヨタMIRAIと同じタイプを使ったということかもしれない。


ドアの開閉のフィーリングを司るのは、ドアチェックという部品
ドアの開閉フィーリングを左右するのは、下の写真の黒いパーツ、「ドアチェック」を呼ばれる部品だ。本来は、ドアを全開までの中間位置で止められるようにする機構。それが次第に、ドアの開閉、特に閉まる直前のフィールを左右する重要な部品となった。

ドアチェックとは、元来はドアを全開までの中間位置で止められるようにする機構。それが次第にドアの開閉、特に閉まる直前のフィールの醸成機能を付加されるようになってきた。キモとなるのはハウジング(左側の四角い部分)に仕まれたばねとリンクアームに付けられたテーパー形状。両者でドアを人力に頼らず「引き込む」力を生み出す。ヒンジ部分にトーションバーを仕込んで同様の効果を出す「インテグレーテッドヒンジ」もドイツ車では採用例が多い。


というわけで、ドアヒンジ図鑑をお送りした。おそらく、他ではあまり見ることがない図鑑だったと思う。冒頭に書いたが、次にマイカーのドアを開いたとき、ぜひドアヒンジ部分、ドアチェック部分に注目していただきたい。
最後にお見せするのが、こちら。
レクサスLC500/500hのドアヒンジだ。
