ネオクラならディーラー中古車も狙える! 憧れ続けた初代シーマが保証付きで買えた! 【2023アリオ上尾クリスマスファイナル クラシックカーミーティング】

2023年を締めくくるイベントが12月10日に埼玉県のアリオ上尾で開催された。会場には130台前後のクルマが展示されたが、今回は1980年代以降のネオクラシックカーが半数以上を占めていた。今回はネオクラの中から初代シーマを紹介しよう。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1991年式日産グロリアシーマ タイプLセレクション。

近年のネオクラシックカーブームは一過性のものではないようだ。というのも2023年12月10日に埼玉県上尾市で開催された「2023アリオ上尾クリスマスファイナル クラシックカーミーティング」の会場に展示されたクルマのうち、半数以上がネオクラと呼ばれる比較的新しい年式のモデルだったから。以前なら1974年前後で参加資格が制限されることの多かった旧車イベントだが、昨今は年式制限を2000年以前など大幅に広げられる傾向にある。すでにバブル景気の時代ですら30年も経っている。国産車の性能が大幅に引き上げられた時期でもあり、名車と呼ばれるモデルが少なくない。今後はこれらネオクラがイベントの主役になっていくのかもしれない。

フルノーマル状態を保っている。

参加可能な年式が広がると、イベントに参加するユーザー層も大きく変わってくる。旧来のイベントだと現在60代前半なら若いくらいで70代前後のオーナーが数多く参加している。ところがネオクラだと40代や50代の参加者が多く、中には20代の若いオーナーまで見受けられる。旧車の概念について説明するのは控えるが、さまざまなオーナーとクルマが集まるならネオクラの参加をさらに認めるべきだろう。だからこそ、今回のように1991年式の初代シーマと出合うことができたのだから。

ボンネット先端に装着されているエンブレム。

初代シーマについては過去にも「バブルの象徴だった初代シーマに今こそ乗りたい! 歴代日産高級車を愛するオーナーが辿り着いた3ナンバー専用車」という記事を紹介している。この時は年式に縛りがなく事前エントリーも参加費も不要のミーティングだったため、あらゆる年式のクルマたちを見受けられた。今回のイベントは2000年以前までと年式に区切りはあるものの、初代シーマがすでに旧車の仲間入りを果たしていることが実感される事例だろう。初代シーマについては過去の記事でも触れているように、1988年に新発売されたバブル期の名車の一つ。セドリック/グロリアとサブネームは付くものの、従来までのバンパーやモールでボディサイズを大きくした3ナンバー車ではなく、3ナンバー専用ボディが与えられたことが衝撃的だった。

純正アルミホイールに指定サイズのタイヤを履かせている。

全長4890mm全幅1770mmという余裕あるボディサイズは、5ナンバー枠に縛られることのない大胆なデザインが可能だった。さらに今では側面衝突安全基準を満たすことが難しいため絶滅してしまった4ドアハードトップスタイルを採用していたこともポイント。前後のサイドウインドーを全開にすると、センターピラーがないため開放感は抜群。流麗なスタイルは社用車に見えないことから個人ユーザーにも好評で、バブル景気真っ只中という時代背景もあり初代シーマは売れに売れた。この時期の日産車は名車が多く、今でも人気のあるS13シルビアも同時期に発売された。そのためキャッチコピーに「シルビア世代からシーマ世代まで」という言葉も生まれた。

CIMAの下にグロリアやセドリックと書かれたエンブレムが装着される。

ボディこそ専用のものが与えられた初代シーマだが、プラットフォームは基本的に同時期のY31セドリック/グロリアと共通。当時主流だったフロント・ストラット、リヤ・セミトレーリングアーム式サスペンションをそのまま採用していたが、エンジンには新開発されたVG30DET型3リッターV6DOHCターボが採用された。VG30自体はZ31フェアレディZに採用されていたが、新たにハイフローセラミック式ターボが加わったことで、最高出力は当時の国産車最強となる255psを発生した。翌年にZ32フェアレディZが国産車初となる280psを達成したことで最強ではなくなるものの、比較的ソフトなサスペンションだったため全開時にリヤをグッと沈めて加速する姿が強い印象を与えた。

255psを発生する3リッターV型6気筒DOHCターボエンジン。

大いに売れた初代シーマだが、89年に強力なライバルが登場する。トヨタからセルシオが発売されたのだ。セルシオは4リッターV8エンジンに前後ダブルウイッシュボーン式サスペンションを採用するなど、初代シーマより上のスペックが与えられた。また驚異的な静粛性でも話題となり、日本だけでなく世界の高級車たちに大きなインパクトを与えた。このため初代シーマの売れ行きに翳りが見え始めたのも事実。1991年にはフルモデルチェンジして4.1リッターV8エンジンを採用する2代目に進化するわけだが、その前のモデル末期には販売テコ入れのため上級グレードのタイプⅡリミテッドをベースにエアサスペンションをコイル式に変更するなど装備を一部変更した廉価版のタイプLセレクションを発売している。12月10日のミーティング会場に、このタイプLセレクションを見つけることができた。

ステアリング中央にはラジオのスイッチが並んでいる。

初代シーマのオーナーは47歳の磯川廣勝さん。やはり旧来の旧車イベントに参加するオーナーたちに比べてグッと若い方で、昔から憧れ続けていたのが初代シーマだったという世代。初代シーマが発売された当時は12歳だったわけで、多感な時期にリヤを沈めて加速する姿は圧倒的な迫力として映ったことだろう。「いつか乗りたいと思っていました」と語るように、長年の憧れだったわけだが夢を実現したのは2021年のこと。若い時期は仕事が忙しく、またお住まいの土地柄クルマは不可欠だからアシになるものを選んできた。

走行距離は驚きの2万キロ台!

憧れ続けたクルマを手に入れるタイミングは、やはり気持ちの強さと運ではないだろうか。古いモデルゆえにトラブルへの対策も必要。そう考えるとなかなか手を出しにくい相手でもある。そこで磯川さんは高確率で壊れるエアサスペンションではなくコイルバネに絞って探すことにした。当時から初代シーマはV6ターボで上級グレードのタイプⅡリミテッドに人気が集中していたため、残存しているのもエアサス仕様が多い。だがモデル末期のタイプLセレクションならコイルバネでありながらV6ターボエンジンであり、今後乗るなら理想的なグレードであるともいえる。そこで狙いをタイプLセレクションに絞ったのだ。

シフトレバーにはオーバードライブボタンがある。

中古車検索サイトなどで気長に探していると、希望するタイプLセレクションが見つかる。しかも販売しているのは日産の中古車店。走行距離が伸びていないためか、販売後に1年間の保証まで付帯していた。保証がついていることは古いクルマを買おうとするなら絶大な安心感に繋がる。長く憧れてきた思いを現実のものとするタイミングが揃ったのだ。

エアコンの下には純正カセットステレオが残っている。

実際に日産ディーラーで買えたことが後々になって良かったと思えたそうだ。というのも、ある程度走っているうちに消耗部品が劣化してくる。保証の効く1年の間にできるだめ部品交換をしてもらうことで、トラブルを回避することができたのだ。これまで旧車を手に入れるのは運や人と人との巡り合わせが不可欠だと感じてきたし、実際に記事にもした。ところがネオクラになると話はそうでもないようだ。30年以上も前のモデルながら日産ディーラーが保証付きで販売していたことに驚きを覚えたが、こんなケースに巡り合えることもあるのだ。今後ネオクラを入手しようと目論んでいるなら、ディーラー系にも目を光らせてみるといいかもしれない。

年式を希望ナンバーで登録した。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…