NATS[日本自動車大学校]がレストアしたマツダ・ルーチェは一桁ナンバーの新車ワンオーナー! 当時感はそのままに美しく復活【東京オートサロン2024】

2024年1月12日(金)〜14日(日)に千葉県の幕張メッセで開催された『東京オートサロン2024』。このビッグイベントには「自動車大学」もその成果を発表する場として出展しており、中でも「NATS」こと「日本自動車大学校」は常連校のひとつ。今年もブースにはカスタムカーからフォーミュラマシンまで、さまざまなクルマが展示されていた。その中で逆に異彩を放っていたのが、1台のクラシックカーだ。

NATS(日本自動車大学校)の『東京オートサロン』への出展車はオリジナリティ溢れるド派手なカスタムカーの印象が強い。実際、『東京オートサロン』に出展するようになってから、同イベントのカスタムカーコンテストではグランプリを1回、部門賞では合計19回の最優秀層・優秀賞を獲得している。

2023年の「東京国際カスタムカーコンテスト」で優秀賞を獲得したNTASアルファード・スーパーデューリー(東京オートサロン2023)。

“カスタムカーの祭典”である同イベントでこういったカスタムカーが注目されるのは当然だが、NATSの展示はそれだけにあらず。特に、袖ヶ浦が展示するレストア車はまるで新車のような仕上がりで同校とその生徒の技術力の高さを窺わせる。
昨年はスバル・アルシオーネVSターボのレストア車が展示されていたが、今年はどんなクルマがレストアされたのだろうか?

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オートサロン出展車両では最古級のマツダ・ルーチェ

今回展示されたレストア車はマツダ・ルーチェ(SUA型)。昭和43年(1968年)式の新車ワンオーナーモノだそうだ。装着されたままのナンバープレートがその証拠。NATSと懇意の株式会社吉井自動車工場の会長から譲り受けた車両だそうだ。

展示されたマツダ・ルーチェは1968年式の初代モデル。初代ルーチェは1966年にデビュー、1972年まで生産された。マツダの普通車としてはファミリア(1963年デビュー)に続く2車種目だった。1968年にマイナーチェンジされた。

来歴を尋ねたところ、もともと吉井会長はマツダ(東洋工業)で働いていて、独立開業する際にその記念として購入したそうだ。その後、NATSが譲り受けて大切に保管していたが、流石に経年劣化が進んできたことから今回のレストアに至ったという。

当時ベルトーネに所属したジョルジェット・ジウジアーロによるデザイン。2ドアセダン、4ドアセダン、ハードトップが用意され、海外用には5ドアステーションワゴンも設定。のちにステーションワゴンをベースとした5ドアライトバンを追加した。

これまで多くのクルマをレストアしてきたNATSだが、1968年式のルーチェはその中でも最も古いクルマになったそうだ。それだけに、これまで手がけてきたクルマとレストア作業に違いはあったのだろうか?

レストアは欠品パーツと錆との戦い

吉井会長所有時から程度は良く、NATSでもコンディションは維持されてきたが、そこは流石に1960年代のクルマということもありボディまわりの劣化や錆が進んでいた。特に錆は水が抜けにくいところで大きく進行しており、ドアまわりには穴が空いてしまっているところもあったそうだ。また、その錆穴を一度アルミ板で塞いだ形跡もあり、そこから電蝕によりさらに錆が進行している部分もあったという。

レストア車の協賛各社。

板金では錆びた部分を一度切り取り、新たに鉄板を溶接して穴を塞いでいる。また、劣化した黄土色のボディカラーは、純正風のカリビアンブルーに塗装し直された。
塗装に際しては窓なども全部外してボディだけの状態にするのだが、窓のモール類は当然純正部品が手に入るわけもなく、脱着作業では破損しないようにかなり気を使ったそうだ。

リヤフェンダーには車名の欧文筆記体エンブレム「Luce」。
リヤにはグレードのエンブレム「Deluxe(デラックス)」。

また、当時の雰囲気を出すべくタイヤはホワイトリボンタイヤを装着。サイズもなるべく純正サイズに近いものを選びたかったが、条件に合うものがなかなか見つからず苦労したそうだ。
また、ホイールキャップももちろん新車装着のモノで、しっかりと磨き上げている。

装着したホワイトリボンタイヤは教師が探してきたRADAR Dimax Classic(185/70R14)。

ちなみに、このルーチェのグレードはエンブレムを鑑みると「デラックス」で、価格は当時で69万5000円。同クラスではトヨタ・コロナ(T40系)のデラックスグレードが58万4000円〜60万9000円だった。69万円ならワンクラス上のコロナ・マークII(T60系)の1.6Lが買える価格だ。

インテリアの雰囲気は当時のまま!

ルーチェのインテリア。コラムシフト+ベンチシートの6名乗車。

逆に言えば外装以外はほとんど手を入れる必要はないほど程度が良く、まさに吉井会長が乗っていた当時の状態が保たれている。シートカバーはもちろん、ダッシュボードのスプリングタイプのドリンクホルダーもあえて残している。

センターコンソールのカーオーディオがセットされている。
スピーカーは日立のLo-D SX-101。

何より驚きなのが、リヤドアには新車から付けたままのビニールがそのまま残っていること。インテリアの保護ビニール自体が今では稀だし、当時にしてもあのビニールを剥がすのが新車購入時の儀式・楽しみでもあった。それが綺麗なまま残っているのは奇跡と言ってもいいだろう。

リヤドアに残ったインテリアの保護ビニール。内装そのものの状態も極上だ。

2024年はいよいよ車検を取得して公道走行へ

オートサロンへの出展を目指してまずは外装からリフレッシュを重ねてきたため、まだ車検を通すまでには至っていない。とは言え、NATSはオートサロンに展示した車両はカスタムカーでも車検を通して公道走行するまでがカリキュラム。昨年のNTASアルファード・スーパーデューリーも2023年春の「モーターファンフェスタ」に実走で登場している。

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ルーチェに搭載されるのは1.5L直列4気筒SOHC2バルブのUB型エンジン。ボンネットは前ヒンジタイプ。
吸排気レイアウトをクロスフローとした多球型燃焼室を採用し、1490ccの排気量から78ps/5500rpn・11.8kgm/2500rpmを発揮。1050kgの車重を150km/hまで加速する。1967年に追加されたセダンSSに搭載されたツインキャブ仕様は86psにアップし、最高速も160km/hとなった。
塗装し直しているため、エンジンルーム内のラベルは貼り直し。これは使用オイル類の指定表。
こちらは排出ガス規制適合ラベル。
型式プレート。型式、エンジン、車台番号などが記されている。

車検を通すにあたっては、現在装着されている一桁のナンバープレートを継承する予定だそうだ。今や二桁すら少なくなってきたナンバープレートだが、一桁に一文字のナンバープレートはさらに貴重な存在だ。

「千」は今の「千葉」ナンバー。1987年まで運輸支局名を一文字に略したナンバープレートが交付されていたところがある。また地名の横の数字は1967年から二桁化が開始されたので、1968年式の一桁ナンバーはその末期にあたる。ちなみに三桁化は1998年から。

オートサロン当日は元オーナーの吉井会長もNATSブースを訪れ、ほぼ当時のままの姿で美しく蘇ったかつての愛車の姿に感涙したという。さらに、車検を取得し公道を走る姿を見ればその感動も一入のものとなるだろう。

フロントグリルにはズラリとJAF(日本自動車連盟)のエンブレムが貼り付けられている。かつて加盟者に配布されたエンブレムは金属製で、多くのオーナーの愛車を飾っていた。また、中央のマツダエンブレムを囲むのは蹄鉄(馬蹄)。蹄鉄はヨーロッパ由来のラッキーアイテムで、日本では「馬は人を踏まない」と言われたことから、交通安全のお守りとして愛車に装着するオーナーもいる。

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