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日米で人気を博した80年代の名車!完成度の高いコンバーチブルカスタム
同じ日本車でも、日本国内の車名と北米市場での車名が異なることは、旧車の世界ではよくあること。特に日産は北米に進出した当初、「Datsun(ダットサン)」のブランド名を使用していたため、顕著な例が多い。
そのひとつが、歴代のシルビア。北米市場に初めて輸入されたシルビアは二代目にあたるS10型で、アメリカでの車名は「Datsun 200SX(ダットサン・トゥーハンドレッド・エスエックス)」だった。続く三代目(アメリカでは二代目ということになるが)のS110型にも、同じくダットサン200SXという車名が継続して使用されていた。
カリフォルニア州ロングビーチで開催される旧車イベント「JCCS(ジャパニーズ・クラシック・カー・ショー)」の会場で出会った、こちらのS110型ダットサン200SX。1983年式で、エンジン排気量も2.2Lとのことなので、いわゆる後期型に該当する一台だ。
当時のダットサン各車は車名に排気量を盛り込むのが慣例となっており、200SXも2.0Lエンジンを搭載していることが示されている。当初はL20B型の直列4気筒だったが、後に排ガス規制に対応するためインジェクション仕様のZ20E型も投入。さらに、82年モデルからフェイスリフトしたと同時に、2.2LのZ22E型も追加されたが、車名は変わらず200SXのままだった。
S110型シルビアは2ドア・クーペと3ドア・ハッチバックの設定で、それは北米仕様の200SXも共通。だが、この車両はパッと見てわかる通りオープントップのコンバーチブルとなっており、ご丁寧にボディサイドにRoadsterのエンブレムまで付いている。
はて、S110にオープンカーの設定ってあったのかしらん? と、しげしげ眺めていたら、今度は「American Custom Coachworks Ltd」というコーチビルダーと思しき会社のバッジを発見! わざわざビバリーヒルズにある私書箱の番号まで刻印されている代物だ。つまり、この車両は2ドア・クーペをベースに件のコーチビルダーがコンバーチブルに作り変えたモデルということのようである。
「American Custom Coachworks Ltd」をネットで検索すると、Coachbuilt.comというサイトにヒット。それによると、どうやら1953年に創業された歴史のあるコーチビルダーだったようだが、2003年に廃業しており、現存はしていないようだ。ドアの内側にはアメリカの連邦自動車安全基準(FMVSS)に準拠していることを示すプラークも取り付けられていたので、真っ当なコーチビルダーだったことが窺い知れる。
インテリアも抜群のコンディション!オーナーの愛情を感じる一台
屋根が開いているおかげで、インパネのデザインや計器類、シートなどもよく見えるのがありがたい。三角スポークのステアリングは、日本仕様の場合はシルビアのSマークが入るのだが、200SXはDATSUNのロゴが入っているのが見て取れる。
豪華さを演出する横長のメータークラスターやオーディオパネルも、80年代らしいテイスト。当時話題になったドライブコンピューター(指定した車速を入力すると目的地までの残距離に対する先行時間や遅れなどを表示)は、装備されていなかった。
DatsunのDマークが入った純正のホイールカバーもグッドコンディションをキープ。トノカバーに包まれた幌の状態まではわからなかったが、内外装を見るにオーナーの愛情とこだわりが詰まっていることがよくわかるため、きっとキレイなまま保たれているに違いない。
トランクフードに直付けされたキャリアがコーチビルトによるものか、オーナーによって後付けされたものかは定かではないが、レトロなクーラーボックスとの相性は抜群だ。
年間を通して快晴の日が多いため、オープンモデルの人気が高いカリフォルニア州。この手の仕事を請け負うコーチビルダーは昔からたくさん存在したようだが、S110のコンバーチブルはなかなかお目にかかることのない貴重な例だ。
日米で人気を博した80年代の名車として、また当時の職人技を今に伝える文化財として、長く乗り継がれていってもらいたい一台である。