日本自動車工業会(自工会)は3月22日、東京都内で記者会見を実施。2024年に自工会の会長に就任した片山正則会長(いすゞ自動車会長)ほか6名の副会長が、自動車業界が直面する喫緊の7つの課題について語った。
片山会長は2024年1月、自工会前会長の豊田章男氏の後任として会長職に就いた。今回の会見は、片山新体制となってから初となる。
自工会では、現在の“自動車産業”が“モビリティ産業”へと発展し、日本の基幹産業として貢献すべく、今後2年で注力すべき課題を7つ設定している。各項目は以下の通り。
●自動車業界「7つの課題」
1:物流・商用・移動の高付加価値化/効率化
2:電動車普及のための社会基盤整備
3:国産電池・半導体の国際競争力確保
4:重要資源の安定調達/強靭な供給網の構築
5:国内投資が不利にならない通商政策
6:競争力あるクリーンエネルギー
7:業界をまたいだデータ連携/部品トレーサビリティの基盤構築
「1:物流・商用・移動の高付加価値化/効率化」においては、長年にわたり商用分野で活躍してきた片山会長自身がオーナーとなり、物流の2024年問題の解決に向けたデータ連携や、自動運転の実用化を目指し検討を進めているという。
「2:電動車普及のための社会基盤整備」は内田誠 副会長(日産自動車 代表執行役社長)、「3:国産電池・半導体の国際競争力確保」は三部敏宏 副会長(本田技研工業 代表執行役社長)、「6:競争力あるクリーンエネルギー」は日髙 祥博(ヤマハ発動機代表取締役社長)副会長、鈴木 俊宏副会長(スズキ 代表取締役社長)が受け持つなど、それぞれの課題を各会長・副会長が分担するかたちで解決に取り組んでいくという。
その一方で、自動車産業が直面している課題と正面から向き合い、他産業とも連携しながら自工会が一丸となるという決意を新たにした。
片山会長はまた、3月に日産自動車が公正取引委員会から下請法違反の勧告を受けたことについても言及。この件について自工会として重く受け止めており、この日開かれた理事会にて「一層の適正取引の浸透に向けて早急に、法令遵守状況の緊急点検を行うなど全会員企業で、再発防止の取り組みを徹底することを申し合わせた」という。
「自工会としましても、自動車部品工業会とも連携いたしまして、価格交渉における明示的な協議の実施や労務費転嫁指針に則して、価格転嫁をしっかりと図っていくことなど全会員企業への浸透を徹底してまいる所存でございます。先日、春交渉の結果が概ね出揃いましたが、自動車産業はこれまで、厳しい経済下でも雇用を守りながら大手製造業平均を上回る水準の賃上げを継続してまいりました。今回の交渉においては、特に物価動向を重視した賃上げに取り組み、ほぼ全ての会員企業で満額回答を行いました」
「物価上昇が続く中、自工会各社は『成長・雇用・分配』に積極的に取り組むとともに、サプライチェーン全体で適正な価格転嫁が実現するよう一層の取引適正化を推進してまいりたいと思っております」