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軽の高性能化時代に対応したフェローMAX
1970(昭和45)年4月2日、ダイハツの軽乗用車「フェロー」がフルモデルチェンジし、2代目「フェローMAX」を発表、デビューした。フェローは1966年にダイハツ初の軽乗用車として誕生、2代目は高性能化とFF化に対応してMAX(マックス)という冠が付いた。
ダイハツ初の軽乗用車フェロー誕生
1957年に誕生した「スバル360」で日本の軽自動車市場は幕開け、その後マツダ「キャロル」、三菱「ミニカ」、ススキ「フロンテ360」と、各メーカーから立て続けに新型車が投入され、一気に活況を呈した。
そのような中、「ミゼット」や「ハイゼット」の成功によって軽商用車で確固たる地位を築いていたダイハツが、1966年に満を持して市場に投入した軽乗用車第1弾が「フェロー」だった。
フェローは、リアにトランクを持つ3ボックススタイルに、日本初の角型ヘッドランプを採用。搭載エンジンは、実績のあるハイゼット用エンジンを水冷化した最高出力23psの360cc 2気筒2ストロークエンジンで、駆動方式はFRが採用された。
4輪独立懸架の乗り心地の良さや運転のしやすさ、広い室内空間などが評価され、フェローは順調に販売を伸ばした。
ところが1967年、高性能で広い室内、おまけに低価格を達成した「ホンダN360」が登場し爆発的な人気を獲得、フェローの存在は薄れ販売も徐々に失速してしまった。
モデル展開で進化を続けたフェローMAX
ホンダN360が火を付けた軽の高性能化時代に対応するため、ダイハツは1970年、初めてのモデルチェンジで2代目となるフェローMAXを投入した。
フェローMAXは、ロングノーズにカムテールを組み合わせたダイナミックな2ボックススタイルに変貌、また車室内空間を確保するため、FRからFFに変更。搭載エンジンは初代と同じだが、圧縮比を10に高めるなど改良を加えて最高出力を33psまで向上、価格は31.8万円~で販売された。
ちなみに、当時の大卒初任給は3.7万円程度(現在は、約23万円)、単純計算では現在の価値で約200万円に相当する。
フェローMAXは、当時の高性能・高機能競争に対応するため積極的にモデル展開を進め、同年7月には軽最強の40psを誇る高性能モデル「フェローMAX SS」を追加。さらに翌年1971年には、軽としては初のハードトップモデルを投入。セダンとハードトップを用意したフェローMAXは、それぞれ1万台、計2万台を超える販売を記録するヒットモデルへと成長したのだ。
オイルショックと排ガス規制で淘汰された空冷2ストロークエンジン
1960年代に隆盛を極めた軽自動車のエンジンは、軽量コンパクトで低コストの空冷2ストロークエンジンが主流だった。ところが、1966年からCO(一酸化炭素)の排ガス規制が始まり、1973年からは米国マスキー法に倣った本格的な排ガス規制が国内でも始まった。
空冷エンジンは、冷却性能が悪いためにオーバーヒートしやすく、出力が制限される。また2ストロークエンジンはその機構上、大量のHC(炭化水素類)とCOが排出されるので、排ガス規制への対応が難しい。そのため、1970年代に入ると自動車メーカーは空冷2ストロークエンジンに見切りをつけ、水冷4ストロークエンジンへの置き換えを推進した。
1967年に登場したホンダN360は、他社に先駆けていち早く4ストロークエンジンを採用して大ヒット。フェローMAXは1976年でのマイナーチェンジで4ストロークエンジンに変更し、市場では一気に4ストローク化と水冷化が加速した。1970年代のオイルショックと排ガス規制がエンジンの形態を大きく変えたのだ。
1970年代に大きな転換期を迎えた自動車。その中にあってフェローMAXは、2ストロークから4ストロークエンジンへ、FRからFFレイアウトへと変わった、時流に合った進化を遂げた軽自動車だった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
【ダイハツ フェローMAX 主要諸元】 全長×全幅×全高:2995×1295×1305mm ホイールベース:2090mm 車両重量:465kg エンジン:ZM型 0.36L 2サイクル 直2 最高出力:33ps/6000rpm 最大トルク:3.7kgf·m/5500rpm 乗車定員:4名 変速機:4速MT 駆動方式:FF サスペンション(前/後):マクファーソンストラット/セミトレーリングアーム ブレーキ(前/後):ドラム/ドラム タイヤサイズ(前/後): 5.20-10/5.20-10