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ロータリーが発電に徹するプラグインハイブリッド車
MXとは、〝新しいことへの挑戦〞を意図したモデルにのみマツダが与える称号。ライトウエイトスポーツ不在の時代を打ち破ったマツダ・ロードスターも、海外では〝MX-5〞という名前で売られている。そのスピリットを受け継ぐのが、MX-30。マツダのデザイン・アイデンティティである〝魂動〞とはひと味違う外装を纏い、内装にはマツダの起源である〝東洋コルク工業〞に由来するコルク材を採用。サイドドアは観音開きの〝フリースタイルドア〞にするなど、新しい世界へのチャレンジが随所に見られる。
エクステリア
それはパワーユニットにも表れており、発売された際には24Vのマイルドハイブリッドを、続いて電気自動車(EV)を用意。いずれもマツダの量産車初の試みだった。ただしEVはバッテリー搭載量が少なく、1回の充電で走れる距離(航続距離)が256㎞と短い。そこで用意されたのが、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のMX-30ロータリーEV。外部から充電した電力で107㎞走れ、充電した電力を使い切ったあとは、ロータリーエンジンで発電しながら走れる。ガソリンタンク容量は50ℓあり、ハイブリッド走行時のWLTCモード燃費は15.4㎞だから、単純計算で航続距離は877㎞。実力がこの70%だとしても、約614㎞を無給油で走ることができる。
乗降性
これらの数値はいずれもユーザー調査から得られたもので、一般ユーザーの平日1日あたり走行距離は、100㎞以下が約90%だったそう。だから日常は、充電した電力だけで走れる。休日に遠出する際も、片道300㎞以下のユーザーがほとんどだから、600㎞走れれば、出先で高いガソリンを給油することなく帰って来られる。
インストルメントパネル
充電電力があるうちはEVとして走るが、走行モードを〝ノーマル〞にしておくと、電池残量が45%を切ったところでエンジンが掛かる。電池を使い切らないのは、急加速に対応したり、EVモードで走る余力を残しておくためだ。動力性能は電動車そのもの。アクセルを踏み込めば遅れなく加速するし、変速しないから電車のように滑らかに走る。
居住性
ロータリーエンジンは830㏄の1ローター。燃焼間隔は2気筒エンジンと同じになるので、負荷が高まると野太い音で回るが、通常走行時は思いのほか静か。かつてのように高回転まで回ることを期待すると裏切られるが、これがロータリーエンジンの新しい使い方なのだ。筆者が試乗した際の実燃費は、充電電力による走行込みで22.7㎞/ℓ、ハイブリッド走行だけを切り出すと15.2㎞/ℓ。目を見張るほど良いわけではないが、難癖を付けるほど悪くもない。それで充電を気にせず遠出ができ、電動車の走行感が味わえるのだから上等だ。
うれしい装備
追加モデル 23年9月14日 月間販売台数 617台(23年11月) WLTCモード燃費 15.4km/ℓ
ラゲッジルーム
独自のコンセプトとは裏腹に、操縦安定性や乗り心地はマツダの本流。素直な操舵応答と、正確性の高いステアリングフィールが持ち味だ。ただし、乗り心地が少々硬め。特にタイヤの硬さとダンパーの初動の渋さが感じられ、小さなゴツゴツ感がある。いっそサスチューンも本流から外し、もっと乗り心地に振っても良かったのではないか。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.156「2024 最新国産新型車のすべて」の再構成です。