フラットかつ安定したハンドリング「トヨタ ヴェルファイア」【最新国産新型車 車種別解説 TOYOTA VELLFIRE】

23年6月に兄弟車「アルファード」と同時にフルモデルチェンジを果たした「トヨタ ヴェルファイア」。ハイクラスミニバンとしてお馴染みの姿はさらにシャープさと迫力を増し、インテリアも新たな試みが装備されている。コンセプトの「ドライバーズミニバン」らしくターボモデルも用意され、アルファードとのきめ細かな作り分けにはドライバーの心をくすぐるエッセンスが注がれている。
REPORT:佐野弘宗(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:田丸りさ

周波数感応型バンパー全車標準装備はヴェルファイアのみ

アルファードとヴェルファイア(以下、アルヴェル)はもはやミニバンというより、日本で最も定番の高級サルーンである。政治家や芸能人なども「アルヴェル」の2列目に座って移動するのが令和の常識だ。

エクステリア

リヤスポイラーやバックドアガーニッシュのモール類が漆黒めっきとなっているのが「Z Premier」グレードの識別点だ。上級グレードの
E x e c u t i v eLounge」ではこの部分がめっき処理となる。最小回転半径は5.9m。

8年ぶりにフルモデルチェンジされたアルヴェルだが、今や様式美すら感じさせる王道の定番高級車なので、その内容も正常進化だ。スタイリングも先代より抑揚と迫力を増したが、誰が見てもアルヴェルとしか見えない。ボディサイズも全長が少し伸びただけで、他はほぼ先代どおり。特等席の2列目は現時点では独立キャプテンシートのみで、周辺装備やシート表皮によって「エグゼクティブパワーシート」と「エグゼクティブラウンジシート」があるこのようにレイアウトやデザインはキープコンセプトながら、ハードウェアはほぼすべて新しい。室内外の快適便利装備も枚挙にいとまがなく、初めて見る新機軸も多い。そんな機能がテンコ盛りの大型ルーフセンターコンソールも標準装備である。

乗降性

従来のアルヴェルは販売チャンネルと外観の細部デザインが違うだけの、事実上同じクルマだった。しかし、2020年5月からトヨタの国内販売体制が「全販売店で全車種取り扱い」に変わったことで、新型では両者の位置づけも変わっている。ちなみに、従来のヴェルファイアはネッツ店専売車種だったが、当初から全店舗取り扱いを前提に企画された今回の新型では、ヴェルファイアは廃止の予定で途中まで開発が進められていたという。しかし、以前からヴェルファイアを社用車として使っていた豊田章男社長(現会長)らの要望もあり、ヴェルファイアもこうして生き残ることになった。ただ、今はアルファードと同じショールームで併売されるので、これまで以上に明確な差別化が図られている。

インストルメントパネル

ディスプレイオーディオはコネクティッド対応で14インチの大画面。ブラックとのコントラストが美しいサンセットブラウンの内装色は、ヴェルファイアのみの専用色だ。前席は適度な包まれ感が心地良い。

アルファードに対する新型ヴェルファイアのコンセプトは「ドライバーズミニバン」である。パワートレインも主力の2.5ℓハイブリッドこそ両者共通だが、先代3.5ℓV6の後継となる高出力2.4ℓターボは、ヴェルファイアのみに搭載。逆に、手頃で穏やかな2.5ℓ自然吸気はアルファード専用となった。

居住性

シャシー関連でも、全車19インチホイールとなり、今回の新機軸である「周波数感応型ショックアブソーバー」が全車標準装備されるのはヴェルファイアの特権だ。さらに、ボディ前端部のコアサポートとサイドメンバーをつなぐブレースも専用に追加されるなど、基本骨格やインテリアの基本デザインはアルヴェルで共通ながらも、アルファードとのつくり分けは非常にキメ細かい。

うれしい装備

スライドドアとリヤクォーターウインドウのサンシェードは電動式で、上から降りてくるタイプ。陽射しを除けながら景色も楽しめる。
フルモデルチェンジ   23年6月21日
月間販売台数        3297台(23年6月~11月平均)
WLTCモード燃費     17.7km/ℓ※「Z Premie(r ハイブリッド)」のFF車

ラゲッジルーム

新型アルヴェルは先代比で飛躍的に正確になったステアリングやフラットな乗り心地、そしてリヤがしっかり踏ん張る安定したハンドリングを身上とするが、特にヴェルファイアはその傾向が強い。最上級ショーファードリブングレードの「エグゼクティブラウンジ」も、低速域での2列目の乗り心地はアルファードの方が柔らかだが、そのぶん、路面や運転手の技量によってはふらつくこともある。よりしっかりと上下動が抑制されるヴェルファイアの方が、2列目のVIPにとっても快適なケースも少なくない。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.156「2024 最新国産新型車のすべて」の再構成です。

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