最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート

5月28日、「令和6年度自動車アセスメント表彰式 ~ファイブスター大賞発表~」が、東京・秋葉原の「秋葉原UDX」内を会場に行われた。
ここではその様子をお伝えすると同時に、会場に展示されていたオフセット衝突試験を受けた車両の解説もしていく。

TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:SUBARU/トヨタ自動車/マツダ/本田技研工業/日産自動車/モーターファン・アーカイブ/山口尚志 MATERIAL:独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)

概要・自動車アセスメント

令和6年度自動車アセスメント大賞受賞については5月29日のニュース記事ですでにお伝えしているが、本稿ではもうちょい具体的に述べていきたい。

「自動車アセスメント」とは、自動車の安全機構やチャイルドシートの安全性を評価、その結果を公開し、顧客が安心して選択できる環境を作ると同時に、メーカーによる安全デバイスの開発や安全なクルマの普及を促進する事業で、国土交通省と自動車事故対策機構が手を組んで行なっている。

「自動車事故対策機構」の正式名称は「独立行政法人自動車事故対策機構」で、これを英語にした「National Agency for Automotive Safety & Victims’AID」の頭文字をとった「NASVA(ナスバ)」が通称だ。

自動車アセスメントの事業を説明する資料。

よく話題に挙がる衝突試験は1995年にスタート。このときはフルラップ衝突だけだった。以降、ブレーキ性能試験や側面衝突テスト、オフセット衝突などが追加され、自動ブレーキ車が出始めれば被害軽減ブレーキのテストまでが加わるなど、順次テスト項目を増やしてきた。時代によって評価方法も少しずつ変化している。

以上が簡単な歴史だが、この表彰式では、最高評価「ファイブスター賞」を受けた10車種が受賞し、その中で最高得点を獲得したクルマの頭上、いや、ルーフ上に「ファイブスター大賞」の冠が輝く。

カタログなどの安全説明のページで「★」が並んでいるのを見たことがあると思うが、もし「★★★★★」とあったならそのクルマは自動車アセスメントに於ける数々の試験のうち、「衝突安全」「予防安全」「総合評価」の分野でファイブスター=★5つの評価を受けたことを意味する。

2023年度自動車アセスメントの評価項目。これだけのテストを受けるのだから、各々のユニット開発者はたまらない。

自動車アセスメントで定められている評価項目の中の衝突に関する評価は「予防安全性能」「衝突安全性能」のふたつに分けられ、衝突テスト結果をそれぞれをAからE、5つのランクに分けて各々得点を定める。これらの合計点で「総合評価」、すなわち星の数が決まり、その中にあっていちばん高い合計点のクルマが大賞に選ばれるという取り決めだ。

その算出基準は次のようになる。

【予防安全性能(89点満点)】 
・Aランク:72.00点以上
・Bランク:52.12点以上~72.00点未満
・Cランク:34.48点以上~52.12点未満
・Dランク:17.16点以上~34.48点未満
・Eランク:17.16点未満

【衝突安全性能(100点満点)】
・Aランク:84.63点以上
・Bランク:71.89点以上~84.63点未満
・Cランク:59.07点以上~71.89点未満
・Dランク:46.33点以上~59.07点未満
・Eランク:46.33点未満

【総合評価=★の数】
・合計156.63点以上:★★★★★
・合計124.01点以上~156.63点未満:★★★★
・合計93.55点以上~124.01点未満:★★★
・合計63.49点以上~93.55点未満:★★
・合計63.49点未満:★

★5つの獲得基準は「156.63点以上」。つまり予防安全性能と衝突安全性能のAランク最低得点の合計・・・72.00以上 + 84.63以上 = 156.63点以上に由来しているが、これとて合計が156.63点以上でありさえすればいいというものでもない。
これでは予防安全性能がBランクの70点だったとしても、衝突安全性能がAランクトップの100点満点なら合計170点となり、★5つとなってしまう。

衝突テストに関する配点の考え方。
このようにして最終的な得点および評価が決まる。

というわけで、★5つを獲得するには、「合計156.63点以上である」と同時に、「予防安全と衝突安全の両者がAランク以上であること」、そしてSOSコールなど、「事故自動緊急通報装置を搭載していること」が要求される。

前置きが長くなったが、ファイブスター賞受賞車のうち、最高得点を獲得してファイブスター大賞に輝いたのはこのクルマだ。

【令和6年度・自動車アセスメントファイブスター大賞受賞車】 

・SUBARUクロストレック/インプレッサ(193.53点/197点)

大賞に輝いたのは、SUBARUクロストレックと・・・
インプレッサの2車種。

・総合評価:★★★★★(193.53点/197点:98%)
・予防安全:
Aランク(88.50点/89点:99%)
・衝突安全:
Aランク(97.03点/100点:97%)
・事故自動緊急通報装置:

登壇したのは、SUBARUの商品事業本部 プロジェクトゼネラルマネージャー、只木克郎さん。

5つ星が最も輝いたのは六連星の上だった。令和6年度だけは「シックススター大賞」にしてあげれば6揃いでよかったのに。
内訳を見ればわかるとおり、予防安全も衝突安全もAランク域のなかでも満点に近い。当然総合評価も197点満点のうちの193.53点となり、達成率は98%となる。何を加えるとマイナス2%が帳消しになるのか興味がわくが、あともうちょいで100%だ。がんばれ!

以下、ファイブスター賞受賞の9台だ。総合評価順に掲載する。

・トヨタクラウン クロスオーバー/クラウン スポーツ(188.39点/197点)

5つ星次点はクラウンクロスオーバーと・・・
クラウンスポーツの2台。

・総合評価:★★★★★(188.39点/197点:95%)
・予防安全:
Aランク(89.00点/89点:100%)
・衝突安全:
Aランク(91.39点/100点:91%)
・事故自動緊急通報装置:

プリウスも受賞しているが、トヨタを代表して登壇したのは、トヨタ自動車のMS製品企画 ZS チーフエンジニア、清水竜太郎さん。

・マツダCX-60(186.77点/197点)

3番手の受賞車はマツダCX-60。

・総合評価:★★★★★(186.77点/197点:94%)
・予防安全:
Aランク(88.21点/89点:100%)
・衝突安全:
Aランク(90.57点/100点:90%)
・事故自動緊急通報装置:

壇上でコメントを述べる、マツダの商品開発本部で主査を務める柴田浩平さん。

・ホンダZR-V(185.41点/197点)

次はホンダZR-Vが受賞。

・総合評価:★★★★★(185.41点/197点:94%)
・予防安全:
Aランク(88.70点/89点:99%)
・衝突安全:
Aランク(88.71点/100点:88%)
・事故自動緊急通報装置:

・レクサスRX(184.52点/197点)

そしてレクサスRX。

・総合評価:★★★★★(184.52点/197点:93%)
・予防安全:
Aランク(88.82点/89点:99%)
・衝突安全:
Aランク(87.70点/100点:87%)
・事故自動緊急通報装置:

レクサスNXと共に受賞しているが、レクサスを代表してRXを開発した大野貴明さん(レクサスインターナショナル 製品企画 ZL5 チーフエンジニア)が壇上に。

・日産セレナ(184.34点/197点)

次は日産セレナ。セミキャブオーバー3列シート車唯一の5つ星!

・総合評価:★★★★★(184.34点/197点:93%)
・予防安全:
Aランク(88.93点/89点:99%)
・衝突安全:
Aランク(87.40点/100点:87%)
・事故自動緊急通報装置:

セレナの開発まとめ役、日産自動車 第三製品開発本部 第三製品開発部 第三プロジェクト統括グループ 車両開発主管 姫木浩明さんが、エクストレイルのぶんも併せて日産代表として壇上に。

・レクサスNX(183.28点/197点)

レクサスNX。

・総合評価:★★★★★(183.28点/197点:93%)
・予防安全:
Aランク(89.00点/89点:100%)
・衝突安全:
Aランク(86.28点/100点:86%)
・事故自動緊急通報装置:

・ホンダN-BOX/N-BOXカスタム(181.20点/197点)

軽自動車界からはたった1種、ホンダN-BOXとN-BOXカスタムが受賞。

・総合評価:★★★★★(181.20点/197点:91%)
・予防安全:
Aランク(85.58点/89点:96%)
・衝突安全:
Aランク(87.62点/100点:87%)
・事故自動緊急通報装置:

N-BOXシリーズ開発リーダー、本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センター LPL室 チーフエンジニア 諌山博之さんが、さきのZ-RVのぶんと併せて壇上に。

・トヨタプリウス(180.60点/197点)

トヨタプリウス。

・総合評価:★★★★★(180.60点/197点:91%)
・予防安全:
Aランク(86.12点/89点:96%)
・衝突安全:
Aランク(86.48点/100点:86%)
・事故自動緊急通報装置:

・日産エクストレイル(180.34点/197点)

日産エクストレイル。

・総合評価:★★★★★(180.34点/197点:91%)
・予防安全:
Aランク(85.77点/89点:96%)
・衝突安全:
Aランク(86.57点/100点:86%)
・事故自動緊急通報装置:

オフセット衝突試験後のクロストレックを眺めてみる

ファイブスター大賞を受賞したクロストレック/インプレッサだが、ステージ横には新車のクロストレックとオフセット衝突を受けた後のクロストレックの2台が展示されていた。

テストを免れたクロストレック。
オフセット64km/h衝突テストを受けた後のクロストレック。

例外もあるが、不正なく公平に試験が行なえるよう、車両はNASVAが一般販社から購入したものが使われる。

このクロストレック(だけではなく、テストを受けたクルマすべてだが)にしてみれば、生産ラインを流れていた自分の前後のクロストレックと同様、どこか一般のひとに買われ、その家族といっしょに何年にも渡ってあちらこちらにドライブするはずだったのが、自分だけはNASVAに買われたがために衝突試験に駆り出されたという不運な道をたどったわけだ。
その犠牲と引き換えにクロストレック(とインプレッサも)の安全性が証明され、みんなが納得できるようになるとはいえ、生まれたばかりなのに衝突試験に身を捧げたことで短い一生を終えたことを思うと、このボディをじっくり見ているうち、敬礼しなければいけない衝動にかられてくる。

その哀悼の意を込めて詳しく解説すると・・・

クルマの事故形態でいちばん多いのはオフセット衝突だ。対向車が斜め前方からこちらに向かってきた、あるいは正面衝突する直前にいくらかでもドライバーが本能的に回避操作するさなかでぶつかるといったことが多いからだろう。
オフセット衝突の試験方法は、壁に相当するアルミハニカムに対し、運転席側を車両外側から40%の位置までラップさせ、64km/hの速度で前面衝突させるというものだ。

クロストレックのオフセット衝突試験の詳細を示した説明パネル。

いっぽうのフルラップ衝突試験は試験車を55km/hでコンクリート壁に真正面かぶち当てる。
ついでにいうと、オフセットは運転席と後席に、フルラップは運転席と助手席にダミー人形を乗せ、衝突後に受けた傷害の度合いを解析する。
衝突をフルラップで受けたときの対策も楽ではなかろうが、フロント幅の半分以下・・・たった40%のエリアだけで、しかもフルラップ試験の55km/hより9km/hも高い64km/hで速度でぶつけてキャビン変形を抑えようというのだからボディ設計者はキツイ。

右側40%だけで障害物に当たるとこのように。
わずか40%の部分だけで衝撃を受けると損傷度合いも激しい。
40%とはいっても、当然他方60%の部分だってこのようになる。

試験車両をサイドから見て、衝撃エネルギーを顔幅の40%だけで受けるとなると、変形は前後方向のフレーム(クラッシャブルゾーン)全体におよんでいることがわかる。当然、前輪のホイールアーチもフードも原型をとどめておらず、Youtube の「自動車アセスメント公式チャンネル【ナスバ】」にあるクロストレックの試験映像のフルラップ衝突シーン(2:35から)の車両と比べると、あちらはホイールアーチの損傷はバンパーにとどまっていて、フードもキャビン側は元の形を保っているところがまるで違う(どのみちもう使いものにはならないが)。

サイドはクラッシャブルゾーンの上下いっぱいに使って衝撃を吸収。

車速が9km/hも異なるから壊れ方の単純比較はできないものの、ラップ量40%ならなおのこと、いかにクラッシャブルゾーンをギリギリまでフルに使ってキャビンを守ろうとしたかがわかるというものだ。

キャビンを形成するフロントピラーやサイドシルは、パッと見では原型を保っていてもいくらか変形しているはずだ。なのに説明員の方がやって見せてくれたドアの開け閉めが、新車と同じようにできていたことに何よりも驚いた。
前歯で下唇を嚙んでベンツのドアロックの音まねをする柳沢慎吾風にいうと、ドアハンドルを引いた瞬間の「ドフッ!」に閉めるときの「ヴォフッ!」・・・音だけ聞いても動きを見ても、つぶれたフロント部に目を向けなければそのままドライブに行けそうなほど新車とまったく変わらない。逆にクルマがこれだけ変形していながらヒンジからギコギコきしむような音が一切しなかったのにも恐れ入った。やはりキャビン変形は最小限に抑えられているのである。

それでもドアは通常のクルマと同じように開いたのには驚いた。

視界向上策はほかにないのか?

ところで筆者は最近のクルマの対衝突性能のおかげでピラーが太くなっていることに「何とかならんものか」といい続けている。SUBARUのほか、最近では他社でもフロントピラーの断面形状に工夫を与え、ドライバーから見える面は極力細く、見えない部分をフロントガラス側に向けることで死角を極力抑えているが、まだまだ太いままのクルマはあるし、SUBARU車とてセンターピラーやリヤピラーは太い。
国産車からピラーレスハードトップがなくなって久しいが、その間に進歩したボディの設計手法をフルに活かし、現在の対衝突性能をクリアする最新版ピラーレスハードトップがいまあらためてできないかとたずねたところ、「特にセンターピラーはサイドからの衝撃に対する役割が大きいのでなくすことはできない」とのことだった。おおよその答えはわかっていながら聞いたことだったが、やはり2024年の技術をもってしても無理か。

ならば負けじと、せめてサッシュレスドアはできないかとしつこく聞いてみた。
同じ開口面積なら、柱は残るにしても、サッシュレスならいくらかでもサイド視界が開けるのではないか。ついでにいうと、車庫サイズは昨日と同じでもいまのクルマは幅広になっているから相対的に狭くなっている。外からのリモコン操作でガラス昇降できるようにしておけば、窓枠がないぶん狭い場所でも乗り降りがしやすくなる道理だ。
1971年のレオーネ時代から21世紀の4代目レガシィ&2代目インプレッサまで、「セダン」といいながら他社でいうピラードハードトップを長らく続けてきたSUBARUが相手だからこその質問だったが、安全性の問題というよりは、ガラスの保持性、高速走行時の外側への吸い出しが問題なのだそうで、その対策に苦労しながらSUBARUは長くサッシュレスを続けてきたのだと。
ドア内部にいろいろと手当てを施さなければならないぶん、サッシュレスドアのほうがサッシュ付きドアよりもやはり重くなるという。もしこのクロストレックのドアをサッシュサレスにすると重量もかさむことになる勘定だ。これもダメかッ!

初代レオーネ(1971年)。当初はクーペでスタートした。
翌1972年に発売されたレオーネセダン。いずれもドアに窓枠がないサッシュレスドア。
2代目レオーネ(1979年)。ボディ型問わず、引きつづきサッシュレスドアで登場。
実は広告の写真でした(モーターファン1981年1月号掲載)。
3代目レオーネ(1984年)。
1985年に追加されたレオーネクーペ。
国際戦略車に位置付けられ、当時の富士重工を経営不振から救った初代レガシィ(1989年)。昭和から平成に移っても、SUBARUのサッシュレスドア路線はまだまだ続く・・・
初代インプレッサ(1992年)。初代レガシィを母体に、レオーネと入れ替わりで発売された。
1993年、レガシィが初のモデルチェンジ。
富士重工の主力に成長したレガシィとインプレッサの間にフォレスターというニッチ商品も発売された(1997年)。いまではSUBARUの主力にまで昇格。2台めまでサッシュレスドアを用いた。
3代目レガシィ。この代からセダンはサブネームに「B4」がつけられた(1998年)。
レガシィに2度のモデルチェンジを許した初代インプレッサも2000年になってようやく2代目にチェンジ。まだまだサッシュレスドアだ。
4代目レガシィ(2003年)。いよいよ車幅で小型車枠を超えて3ナンバーボディに。レガシィのサッシュレスドアはこの代で終わり、次の5代めでオーソドックスなサッシュ付きドアになる。

やはり聞かなければわからない。試験後のクロストレックに敬礼し、会場をすごすごと後にした。

少しはクロストレックオフセット試験車の供養になったかな?

NASVAにお願したいふたつのこと

試験はトランスミッションがN(ニュートラル)、エンジンはかかっていない=イグニッションだけがONのエンジン停止状態で行なわれる。しかし事故は普通、一般路上で起こるものだ(あたり前だ)。自分から何かの間違いで相手に向かってぶつかる、信号待ちのときに向こうから突っ込んできた・・・このとき、エンジンは始動中であると考えてまちがいない。
ならば衝突試験もエンジン始動状態で行なうべきではないだろうか。
事故の形態は千差万別だが、現在の試験方法は、キャビン変形量や乗員の傷害値を解析することはできても、エンジンがかかっていないから本当の意味での事故再現にはなっていないと思う。

テレビの交通事故のニュース映像で、クルマが景気よく燃え盛る光景を目にすることが少なくない。いまのクルマは衝撃を受けると燃料ポンプが止まって燃料カットが行なわれる機能を有しているにもかかわらず、だ。事故形態によってはやはり何らかの理由で炎上するのである。もしエンジン始動状態で衝突試験を実施すれば、車両火災に至るプロセスをも解析することができるのではないか。
55km/hや64km/hなら、マニュアル車なら4速か5速、CVTも含むAT車ならシフトはDで、エンジン回転は2000~2500回転あたりだろう。この状態でクルマをぶつけるのが本当だと思う。衝突試験後にクルマがうまく火を起こしてくれればの話だが、どのような理由で発火ないし引火し、どのような経路で火が伝わって炎上に至ったかの道すじがわかればそれが車両開発に活かされ、事故後の車両火災の可能性を減らすことができる。

いろいろとご都合があるだろうし、もしかしたらエンジン始動時のフルラップ、オフセット、側突試験用と、車両を倍の数だけ買わなければいけなくなるかも知れないが、検討してもらえたらと思う。

もうひとつは、後ろから追突されたときの後席乗員の保護性能の公開だ。
ビッグキャビンを誇るハイト型や3列シートのミニバンor SUVが全盛のおり、私が心配しているのは2列車なり3列車なり、最後列シート位置と車両最後部が極めて近いクルマの、後部からの衝突安全性だ。後席を最後部までスライドさせるとヘッドレストがリヤガラスに接触せんばかりのクルマだってある。軽自動車のハイト型が信号待ちのとき、大型トラックが後ろからぶつかってきたときのことを思うとゾッとする。その意味でリヤオーバーハングが荷室になっているセダンやステーションワゴン型が後席の安全度は高いと思っているし、いま売られているクルマだってそれなりの設計はなされているのだろうが、クルマは前に進み、後ろに下がると同時に、停まっていても否応なしに前からぶつけられるだけでなく、後ろから追突される可能性だってあるのだ。
前方向の試験公開だけでなく、フロントと異なり、エンジンルームのようなクラッシャブルゾーンが僅少のハイト型やミニバンの、後ろ方向の衝突試験&公開も実施してもらえれば自動車アセスメントの存在意義はより高まると思う。

以上、NASVAへのお願いを添えながら、令和6年度自動車アセスメント・ファイブスター大賞受賞式の様子をお届けしました。

1 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の1枚めの画像
N-BOXシリーズ開発リーダー、本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センター LPL室 チーフエンジニア 諌山博之さんが、さきのZ-RVのぶんと併せて壇上に。

2 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の2枚めの画像
軽自動車界からはたった1種、ホンダN-BOXとN-BOXカスタムが受賞。

3 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の3枚めの画像
レクサスNX。

4 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の4枚めの画像
セレナの開発まとめ役、日産自動車 第三製品開発本部 第三製品開発部 第三プロジェクト統括グループ 車両開発主管 姫木浩明さんが、エクストレイルのぶんも併せて日産代表として壇上に。

5 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の5枚めの画像
次は日産セレナ。セミキャブオーバー3列シート車唯一の5つ星!

6 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の6枚めの画像
レクサスNXと共に受賞しているが、レクサスを代表してRXを開発した大野貴明さん(レクサスインターナショナル 製品企画 ZL5 チーフエンジニア)が壇上に。

7 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の7枚めの画像
そしてレクサスRX。

8 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の8枚めの画像
次はホンダZR-Vが受賞。

9 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の9枚めの画像
壇上でコメントを述べる、マツダの商品開発本部で主査を務める柴田浩平さん。

10 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の10枚めの画像
3番手の受賞車はマツダCX-60。

11 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の11枚めの画像
プリウスも受賞しているが、トヨタを代表して登壇したのは、トヨタ自動車のMS製品企画 ZS チーフエンジニア、清水竜太郎さん。

12 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の12枚めの画像
クラウンスポーツの2台。

13 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の13枚めの画像
5つ星次点はクラウンクロスオーバーと・・・

14 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の14枚めの画像
4代目レガシィ(2003年)。いよいよ車幅で小型車枠を超えて3ナンバーボディに。レガシィのサッシュレスドアはこの代で終わり、次の5代めでオーソドックスなサッシュ付きドアになる。

15 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の15枚めの画像
レガシィに2度のモデルチェンジを許した初代インプレッサも2000年になってようやく2代目にチェンジ。まだまだサッシュレスドアだ。

16 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の16枚めの画像
3代目レガシィ。この代からセダンはサブネームに「B4」がつけられた(1998年)。

17 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の17枚めの画像
登壇したのは、SUBARUの商品事業本部 プロジェクトゼネラルマネージャー、只木克郎さん。

18 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の18枚めの画像
インプレッサの2車種。

19 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の19枚めの画像
大賞に輝いたのは、SUBARUクロストレックと・・・

20 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の20枚めの画像
富士重工の主力に成長したレガシィとインプレッサの間にフォレスターというニッチ商品も発売された(1997年)。いまではSUBARUの主力にまで昇格。2台めまでサッシュレスドアを用いた。

21 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の21枚めの画像
1993年、レガシィが初のモデルチェンジ。

22 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の22枚めの画像
初代インプレッサ(1992年)。初代レガシィを母体に、レオーネと入れ替わりで発売された。

23 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の23枚めの画像
国際戦略車に位置付けられ、当時の富士重工を経営不振から救った初代レガシィ(1989年)。昭和から平成に移っても、SUBARUのサッシュレスドア路線はまだまだ続く・・・

24 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の24枚めの画像
1985年に追加されたレオーネクーペ。

25 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の25枚めの画像
3代目レオーネ(1984年)。

26 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の26枚めの画像
実は広告の写真でした(モーターファン1981年1月号掲載)。

27 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の27枚めの画像
2代目レオーネ(1979年)。ボディ型問わず、引きつづきサッシュレスドアで登場。

28 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の28枚めの画像
翌1972年に発売されたレオーネセダン。いずれもドアに窓枠がないサッシュレスドア。

29 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の29枚めの画像
初代レオーネ(1971年)。当初はクーペでスタートした。

30 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の30枚めの画像
クロストレックのオフセット衝突試験の詳細を示した説明パネル。

31 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の31枚めの画像
それでもドアは通常のクルマと同じように開いたのには驚いた。

32 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の32枚めの画像
サイドはクラッシャブルゾーンの上下いっぱいに使って衝撃を吸収。

33 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の33枚めの画像
40%とはいっても、当然他方60%の部分だってこのようになる。

34 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の34枚めの画像
わずか40%の部分だけで衝撃を受けると損傷度合いも激しい。

35 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の35枚めの画像
右側40%だけで障害物に当たるとこのように。

36 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の36枚めの画像
オフセット64km/h衝突テストを受けた後のクロストレック。

37 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の37枚めの画像
テストを免れたクロストレック。

38 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の38枚めの画像
日産エクストレイル。

39 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の39枚めの画像
トヨタプリウス。

40 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の40枚めの画像
このようにして最終的な得点および評価が決まる。

41 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の41枚めの画像
衝突テストに関する配点の考え方。

42 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の42枚めの画像
2023年度自動車アセスメントの評価項目。これだけのテストを受けるのだから、各々のユニット開発者はたまらない。

43 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の43枚めの画像
自動車アセスメントの事業を説明する資料。

44 / 44

「最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート」の44枚めの画像

キーワードで検索する

著者プロフィール

山口 尚志 近影

山口 尚志