速い・楽しい・カッコいい!3.0L・V6ターボ+10速AT+AWDのスポーツセダン、アキュラTLX Type S

アキュラTLX Type-S
ホンダのプレミアムブランドであるアキュラのスポーツセダン、TLXに北米コロラドスプリングスで試乗した。舞台はパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムのコース。しかもトップグレードのType-Sである。

アキュラのラインアップはいまこうなっている

アキュラTLX Type-Sのインテリア

ホンダのプレミアムブランド、アキュラ(ACURA)。そのプレミアム・スポーツセダンがTLXだ。現在の北米アキュラのラインアップは
INTEGRA(インテグラ):プレミアムスポーツコンパクト
TLX:プレミアムスポーツセダン
ZDX:プレミアムBEV SUV
RDX:プレミアムスポーツクロスオーバー
MDX:プレミアムパフォーマンスSUV
となっている。

パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム取材に際し、アメリカホンダの好意でアキュラTLXに試乗する機会を頂いた(メディアツアーに特別に合流させていただいた。多謝)。しかも「Type-S」モデルである。つまり、もっともスポーティなTLXというわけだ。

スポーツセダンのTLX Type-Sとはどんなクルマ?

コロラドスプリングスの市内の老舗ホテルの前に駐められたTLX Type-S

コロラドスプリングス市内の老舗ホテルの前に駐まっていたTLX Type-Sは、見るからにスポーティ。ちなみに、価格は5万7000$~(1ドル=158円で約900万円)。

このTLX Type-Sをドライブして、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムのコースを駆け上るという趣向だ。

全長×全幅×全高:4942mm×190mm×1432mm ホイールベース2870mm 車重:1915kg

TLXのボディサイズは
全長×全幅×全高:4942mm×1910mm×1432mm
ホイールベース2870mmだから、日本の路上に現れたらそれなりに大きなクルマに見えるかもしれないが、巨大なピックアップトラックやSUVがゴロゴロしているアメリカの路上では、筋肉質の見るからにスポーティなセダンでけっして大柄ではない。

ノーマルのTLXは2.0L直4ターボ(K20C6型)+10速ATの組み合わせ。Type-Sは、3.0L V6直噴ターボ(360ps/480Nm)を搭載する。組み合わせるトランスミッションは、ホンダ新開発の10速ATである。エンジンもトランスミッションも日本には導入されていない。駆動方式はAWD。ホンダ得意のSH-AWDだ。

パイクスピークを駆け上がる

さて、コロラドスプリングスの市内を出て、パイクスピークHwyに入る。ドライブモードは、COMFORT/NORMAL/SPORT/SPORT+/INDIVIDUALの5つ。まずはNORMALから。

シフトはこの位置に。使いやすい。Pの上のボタンがドライブモードセレクター。
V6横置きレイアウトは、最近ではだいぶ少なくなった。
ターボチャージャーはツインスクロール式。
エンジン
形式:3.0L V型6気筒ターボ
型式:J30AC型
排気量:2997cc
ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm
圧縮比:9.8
燃料供給:DI(筒内燃料直接噴射)
最高出力;360ps/5500rpm
最大トルク:480Nm/1400-5000rpm
駆動方式:AWD(SH-AWD)
燃料タンク容量:60L

マルチシリンダー信仰の強い北米でも、現代ではなかなか大排気量V8は数少なくなってきた。その代替がV6ターボである。

「やっぱりV6はいいなぁ」と思わせる滑らかなフィール。そして480Nmという大トルクが気持ちいい。VCM(気筒休止)を採用しているが、パイクスピークへの上り坂では3気筒運転にはならなかった(と思う)。

パイクスピークは、有料道路で誰でも走ることができる。

ここがパイクスピーク有料道路のゲート
パイクスピークは有料道路なので、レンタカーでも料金を払えば走ることができる。オススメだ。
料金を晴らすと、このパスを貼ってくれる。
隊列を組んで登っていく。

料金は
大人(16歳以上):15ドル/人(約2400円)
子ども(6-15歳):5ドル
5歳以下:無料
クルマ1台:50ドル(7950ドル)

コロラドを旅する機会があれば。ぜひレンタカーを借りて、走ってみてほしい。

我々も50ドル(4人乗車だったので)を払って走り始める。10kmほど走ると翌日に控えていたパイクスピークヒルクライムレースのスタート地点に着いた。

ここで標高が2862mだ。気圧は720hPa(標高0mで1013hPaだとして)、酸素濃度は地上の71%となる。気温も地上が25℃のとき、2900m地点は8℃となる。涼しい。

ここからは、SPORT+モードに切り換えた。音も、エンジンレスポンスも変わる。いい音がする。

ガードレールはほとんどない。コースを逸れたら転落する……。
クルマには酸素が積まれていた。これは、コロラドスプリングスの市内では割と入手しやすいもの。ちなみに、市内も標高は1800-1900mもあるのだ。

ここから標高4302mの頂上まで駆け上るのだ。
コースの長さは23.2km、最大上り勾配は10.5%、最大下り勾配は10.0%、平均勾配が7%だ。
といっても、レーシングドライバーが全開で走るところを、40-50km/h程度で登っていく(いや、もっと遅いです)。なにせ、勾配が急で目の前は青空と雲しか見えない(Race to the Cloudsとはよくいったものだ)し、助手席側はガードレールなしの断崖。調子に乗って速度を出しすぎたら大変なことになるからだ。

アキュラTLX Type-Sで走った前日に、私はレンタカーのトヨタ・カローラLEで同じコースを走っていた。カローラ、じつに良いクルマなのだが、2.0L直4NA(169 hp /205Nm)は、やはり非力さを感じた。なにせ、4300m地点ではエンジン出力は70%程度に下がってしまう(空気が薄いから)から、余計アンダーパワーを感じてしまうのだ。

サスタワーの作りも美しい。

対するTLX Type-Sは360ps/480Nmだから、7掛けになったとしても余裕だ。しかも駆動方式がAWDだから、ぐいぐいと登っていく。

4302mの山頂に到着!
標高4302mの頂上。寒い。

レースのゴール地点4302mは、富士山頂よりもだいぶ高い。空気が薄いから、予め酸素ボンベがクルマに載せられていた。うっかり山頂ではしゃいで走ったりしたら、すぐに目の前がクラクラするほど、やはり空気が薄いのだ。

頂上で名物のドーナツを食べた(存外、美味しかった)。4300m地点の水の沸点は87℃。ドーナツを揚げる油の温度も低くなるから、ベチャっとしたドーナツだと思っていたのだが。

これがパイクスピーク頂上名物のドーナツ

4302mからのダウンヒルでブレーキの良さがわかる

ブレーキはブレンボ製4ピストン(フロント)タイヤサイズは255/40R20 タイヤはピレリP ZEROを履く
下りのチェックポイントでは係員がブレーキ温度をチェックする。

今度は下りだ。ひたすら下る。下る。

となると、心配なのはブレーキだ。途中、係員がフロントブレーキの温度を計測。ブレーキ温度が高いドライバーは、そこで強制的に休憩を取らなくてはならない。もちろんフェード対策のためだ。

TLX Type-Sのブレーキはブレンボ製4ピストンブレーキが付いている。安心である。さすがハイパフォーマンスモデルだ。

街中を含めて150kmほどの試乗機会だったが、TLS Type-S、気に入った。3.0L V6ターボ+10AT+SH-AWDのスポーツセダンなんて、いまや世界的に見ても貴重だ。これを選べるアメリカのホンダファンが羨ましい。

5万7000$は、円安の現在では900万円だが、1ドル=132円(2023年1月の為替相場、わずか1年半前のことだ)だったら、約752万円である。性能・内容からしたら、バーゲン的なのではないだろうか?(とにかく、も少し円高方向に振れてほしい)

コロラドの美しい道を、アキュラTLX Type-Sで走るのは、得がたい体験だった。

アキュラTLX Type S
ボディサイズ
全長×全幅×全高:4942mm×1910mm×1432mm
ホイールベース2870mm
車重:1915kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/マルチリンク式
エンジン
形式:3.0L V型6気筒ターボ
型式:J30AC型
排気量:2997cc
ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm
圧縮比:9.8
燃料供給:DI(筒内燃料直接噴射)
最高出力;360ps/5500rpm
最大トルク:480Nm/1400-5000rpm
駆動方式:AWD(SH-AWD)
燃料タンク容量:60L

価格:57000ドル(1ドル=158円で約900万円)

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…