【プロが選んだ思い出の愛車・ベスト3】サーフィン、テニス、スキーの相棒として活躍した日産グロリアワゴン

日産グロリアワゴン
日産グロリアワゴン
ときに舌鋒鋭く自動車をレビューするモータージャーナリストは、どのような愛車とともに人生を過ごしてきたのだろうか。カメラマンや編集者を経て、現在はラジオパーソナリティとしても活躍する高橋アキラさんに、歴代のお気に入りの愛車・ベスト3を聞いてみた。

TEXT●高橋アキラ(TAKAHASHI Akira)

今回、編集部からのお題は「歴代愛車のお気に入り・ベスト3」です。これまで所有してきた愛車の中からベスト3を、という企画ですが、タカハシの出身が『オプション』(三栄刊)ということもあり、どうもまともなクルマは少なく改造車が記憶に残っている次第です。ポルシェだベンツだと華々しいクルマはなく、油臭い改造車でごめんなさい。ではご紹介。

3位:フォード・マスタング グランデ

「オプション編集部時代に購入したアメリカン・マッスルカー」

クルマへの興味は中学生くらいからで、高校生になると自動車雑誌を買い込み、休み時間になると、このインパネはセリカ、こっちはフェアレディZ、これはシビックなんて写真だけで車種当てするクイズを友だちとしていましたね。

免許が取れる年齢になるとクルマ選びが現実的になり、バイトを重ねて貯金。そんな時代を経てオプション編集部に所属したころは、世のクルマ好きの間ではマッスルカーが全盛期。アメ車ブームがありました。

オプション編集部では、日々チューニング記事を書き、自分で触ることも多く、整備工場やチューニングショップに入り浸りでした。そんなある日、机を並べて原稿書きをしている福野礼一郎先輩が自身のフォード・マスタングを三栄・美術部のキンちゃんに売却ました。福野さんはこの頃、ランボルギーニ・ミウラを所有していたり、トヨタ・ソアラを持っていたりで、よくスーパーカーの記事を書いてました。住む世界が違う…。

その福野さんが所有していたマスタングを、そののちキンちゃんからタカハシが購入したのでした。

フォード351クリーブランドのエンジンを搭載したV8型エンジン。ランブル音を響かせ、ひとふかしでガソリンが減るのを実感する燃費の悪さと大パワー。でもフル加速したときの感動は忘れません。

この頃オプションの記事では自らチューニングエンジンを作る企画をやっていて、RE雨宮へ通い詰め12Aロータリーのサイドポートチューニングをやりました。自分でエアリューターを使い、サイドポートを削ったあとは手磨きしてポートをピカピカに。そいつをSA型のRX-7に搭載してゼロヨンと最高速を自分で計測というのもやりました。

記憶ではゼロヨンが14.7秒で、最高速は210km/hだったくらいの記憶。その後、このエンジンを読者プレゼントにしたのですが、応募ハガキが山のように届いたことを覚えています。

脱線しましたが、とにかくこの頃はパワーがほしかった時代で、マスタング グランデは記憶に残りますね。その後、1998年にもマスタングを買っちゃうのですが。。。

アメリカを代表するスポーティカー、フォード・マスタング。その豪華版がグランデだ。写真は2代目マスタングのグランデ(1973年式)。

2位:トヨタ・カリーナ バン

「2.0Lエンジンに載せ替えてゼロヨンはバカ速!」

オプションに入る前の大学生の時、カリーナバンを中古で格安に購入し、エンジンを載せ替えて乗ってました。もともとバンなので2T型のSOHC4気筒1.6Lですが、マークIIGSSに搭載している18RG型2.0LのDOHCを載せようとしました。憧れのDOHCです。

型式が違うから簡単には載せられないことは容易に想像できますが、大学生は向う見ずなものです。自分でエンジンを降ろし、解体屋から18RGのエンジンと5速マニュアルミッションを購入。が、クロスメンバーの位置が干渉して載せられません。懇意にしていた修理工場に泣きつき、無理やり載せてもらうことに。

そうしたら、エンジン重量が重すぎてホッドロッドスタイルに。でもそれがなんとなくカッコよく思えてそのまま乗ってました。

ミッションはGSSの5スピードを載せているし、ウエーバー付き2.0LのDOHCなので馬力はすごい。そしてバンならではのローギヤードなファイナルギヤで、ゼロヨンはバカ速でした。が、ブレーキは4輪ドラム。止まれない恐怖がいつもありました。

アメ車、ホットロッド、ゼロヨン、最高速に憧れていたアホな時代です。その後RE雨宮でロータリーエンジンを勉強しますが、雨さんの作ったシャンテロータリーは衝撃でした。軽自動車シャンテに13Bのペリフェラルポートチューンのエンジンを載せた伝説の名(迷?)車です。

こいつを借りて首都高速を走りましたが、マジで死ぬかと思った経験をしています。速いのはまだしも、ブレーキがシャンテの純正。止まらないのです。カリーナ バンで学習したことを一切活かしていないバカハシでした。

1981年に登場した3代目のトヨタ・カリーナ バン。緩やかなカーブを描くベルトラインが特徴的だ。

1位:日産グロリア ワゴン

「ホワイトレタータイヤにエアサスを入れてホットロッド風に」

その後メルセデス・ベンツ190Eとかフィアットとか、欧州車に乗り「クルマというのは…」という学習をし、改造車から脚を洗いました。しかしモチベーションやエネルギーは余りまくり、そのパワーは体を使ったスポーツへと転身します。

サーフィン、スキー、テニスという当時の軟派な三種の神器に手を染め、日産グロリア ワゴンはベンチシートのコラムオートマ。コイツに遊び道具を詰め込んでエネルギーを発散していました。これ40歳ころの話で、成長がひとより遅いことを実感しています。

グロリア ワゴンもさすがに受注生産の時代になっていて、神奈川ニッサンでも月販5台がせいぜいという噂。なので納車までに半年くらい待たされて納車になりました。

エンジンは何の変哲もないVG20型の2.0Lに5速ATだったか? そしてモスグリーンの外板塗装にBFグッドリッチのホワイトレタータイヤを履かせ、ステアリングはエアバックをはずしてコーンタイプのウッドステアリングに交換。リヤショックはエアショックを入れてホットロッドに。40歳過ぎているのに…。

結局、アメ車好きなのと改造が好きという青い時代の話が最も記憶に残るんですね。今はすっかり大人になり、フルノーマルのドイツ車に乗っています。覚えている範囲では23台くらいが所有した愛車、愛機たちでした。

7代目となる日産グロリア(Y30型)は1983年に登場。ガソリンV6エンジンのVG型を初搭載したことが話題となった。
セダンは1987年にY31型、1991年にY32型、1995年にY33型とモデルチェンジを重ねていったが、ワゴンはY30型のまま1999年まで生産が続けられた。
ベンチシート&コラムシフトの仕様もラインナップされていた。
ざっくりとしたモケット生地のシートもいい雰囲気だ。

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著者プロフィール

高橋 アキラ 近影

高橋 アキラ

チューニング雑誌OPTION編集部出身。現在はラジオパーソナリティ、ジャーナリスト。FMヨコハマ『ザ・モー…