現代のアメ車も「デカい・フワフワ・燃費が悪い」なのか? 新型グランドチェロキーで調査

日本で輸入車といえば欧州車が主流で、アメ車は国内のラインナップも縮小し寂しい状況となっている。一般的に「デカい・フワフワ・燃費が悪い」と数十年前からイメージがアップデートされていないアメ車だが、近年のモデルはどのように進化しているのだろうか?

そろそろアメ車のイメージをアップデートする時期?

バブル期の日本市場でかつて一世を風靡したアメリカ車、通称「アメ車」。巨大なエンジン、独特のデザイン、そして圧倒的な存在感から、憧れの外車として人気があった。しかし、近年ではアメ車の存在感が薄れ、国内の自動車市場から徐々に姿を消しつつある。

一般的に「デカい・フワフワ・燃費が悪い」と数十年前からアメ車のイメージがアップデートされていない状況が「アメ車離れ」の要因といってもいいだろう。
それでは、最近のアメ車はどうなのだろうか?実際に長距離と日常使いをドライブして確かめてみた。

一般的なアメ車のイメージはここで止まっているのでは? 1990年代に大ブームとなったシボレー・アストロ。(右から2台目)

アメ車っぽい「雑な感じ」は皆無、全体的に上品な仕上がり

ジープ・グランドチェロキー「リミテッド」 全長×全幅×全高=4900×1980×1810mm

今回試乗したのは、2022年10月に国内導入されたジープのフラッグシップSUV「グランドチェロキー」の5人乗り仕様の「リミテッド」だ。全長は4900mmとなっており、7人乗り仕様の「L」に比べて約300mm短縮、ホイールベースも125mm短縮されたことで、日本の道路でも比較的扱いやすくなっている。

ホイールベース:2965mm、車両重量:2070kg、乗車定員:5名、タイヤサイズ265/60R18

約10年ぶりにフルモデルチェンジとなる新型モデルは、ジープらしい存在感のあるエクステリアとラグジュアリーなインテリアが特徴でアメ車の王道モデルとなっている。

まず、新型グランドチェロキーに乗り込むとインテリアに質感の高さに驚いた。アメ車=チープな内装というイメージを覆す。ハイエンドSUVならではレザーとウッドを組み合わせた豪華な素材と、細部までこだわったデザインが好印象だ。シートのクッション性も抜群で、長時間のドライブでも疲れにくい仕様となっている。シートヒーターやベンチレーションなど、快適性を高める装備も充実しており、ドライバーも同乗者も快適に過ごすことができる。

水平基調のインパネは広々として開放感に優れ、10.25インチの大型ディスプレイやフル液晶モニターなど先進性も感じる装備も充実。8ATのギアセレクターはセンターコンソールのダイアル式。
インテリアはレザーとウッドを組み合わせた上品な質感で仕上げている。

走り出してすぐに感じたのは、パワフルで滑らかなエンジンパフォーマンス。今回の新型グランドチェロキー「リミテッド」は、2.0L直4ターボに8速ATという構成の純ガソリンモデルで、最高出力272ps、最大トルク400Nmを発揮する。3列シート7人乗りの「L」が搭載する3.6L V6(286ps/344Nm)と比べても差はわずか。ダウンサイジングで燃費性能が向上しつつもパワーは犠牲になっていない。都市部から高速道路での巡航もストレスを感じることはなかった。

エンジン:1995cc直列4気筒DOHCガソリンターボ 最高出力:272ps/5250rpm 最大トルク:400Nm/3000rpm、トランスミッション:8AT、駆動方式:4WD

東京から金沢へ:高速道路の長距離ドライブを楽しむ

アメ車といえばロングドライブということで、東京から金沢までの往復約900キロのドライブに挑戦してみた。このコースは、関越道から上信越道、さらに北陸道を通り、日本海側へと続く道のり。高速道路がメインなので、グランドチェロキーの快適性や走行性能がどれだけ発揮されるかがポイントとなる。

東京から金沢まではアップダウンの激しい高速道路での走行がメインとなる。

都内の一般道を抜け関越道に入るところで速度を上げると、グランドチェロキーの静粛性と快適な乗り心地に感心した。2.0L直4ターボの純ガソリンモデルだが、エンジンの音は抑えられており、風切り音も少ないため、車内はとても静か。長距離ドライブでは、この静粛性が大きなアドバンテージとなる。交通量が多い関越道でアダプティブクルーズコントロール(ACC)を使用していると、つい時間を忘れてしまいそうになるほど、リラックスして運転できる。

関越道から上信越道、北陸道に入ると、道路のアップダウンやカーブが増えてくるが、グランドチェロキーのサスペンションがしっかりと車体を支えて、路面の凹凸をうまく吸収していく。アメ車特有のフワフワ感はまったくなく、どんな速度でも安定感は抜群だ。これにより、走行中に乗員が揺さぶられることがなく、長時間のドライブでも快適さが損なわれることはない。

ドライバーとしてはもちろんでだが、同乗者にとっても快適な車内空間が確保されているという印象。広々とした後部座席や各所にUSBポートが配置されているため、スマートフォンの充電も問題なくこなせる。シートヒーターが全席に備わっているので快適に過ごせるだろう。

燃費も長距離走行での大切な要素、今回は高速道路の走行が多めだったこともあり平均燃費は10.2km/Lだった。車重2t超えの大柄なボディにしては、なかなかの数値ではないだろうか? そして燃料タンクは87Lと大容量のため給油の頻度も少なく済む。長距離ドライブでは、給油のタイミングを気にする必要が少なくなるのは大きな利点と感じた。

今回の平均燃費は10.2km/Lだった。燃料タンクが87Lのため、航続距離は長くて給油頻度が少ないので長距離ドライブのストレスが減る。ただ、満タンまで入れると給油時間は長い。

金沢に到着した後も、疲労感はほとんどなく、まだまだ運転を続けられるような気持ちだった。復路も同様に、安定した走行性能と快適性のおかげで、東京に戻るまでのドライブも非常に快適に過ごすことができた。

往復約900キロのドライブだったが疲労感は少ない。良い意味でアメ車の「ゆったり、おおらか」な特徴を受け継いでいると感じた。

車体のデカさは慣れで解決できる

全幅1980mmは国産車ではランドクルーザー250や300などが近いサイズとなる。

それでは、東京のような狭い道路や混雑した街中でどうなのか?
確かにグランドチェロキーは全長や全幅が大きいが、ステアリングの軽さと高いシートポジションから見下ろす視界の良さで、思っていたよりも取り回しがしやすい。ステアリングの反応が非常に良く、交差点や狭い道でもスムーズに操作できることと、大きなサイドミラーとリアビューカメラが標準装備されているほか、オプションの360度カメラシステムが死角をサポートしてくれるので、狭い路地も問題なく通行することができた。

360度カメラシステムは狭い道や駐車時に活躍する。

ただ、都内の駐車場事情を考えると、かなりギリギリなサイズのコインパーキングも存在するので、そのあたりは少々気になる点だ。結論としては、車体のデカさは慣れで解決できる範囲。といった印象だった。

新型グランドチェロキーは、数十年前からアップデートされていないアメ車のイメージ「デカい・フワフワ・燃費が悪い」のネガティブな部分を見事に覆して、アメ車に対するイメージを刷新したと言ってもいいだろう。日本でも快適に乗れる個性的なSUVとして選択肢に入れていきたい一台だ。

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著者プロフィール

土屋直軌 近影

土屋直軌

1982年生まれ、静岡県出身。都内の美術大学を卒業後、なんとなくモータースポーツ関連のイベント制作会社…