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期間限定受注の「G 580 with EQ Technology Edition1」から日本上陸
45年の歴史を誇るメルセデス・ベンツGクラスに、バッテリーEV(BEV)版の「G 580 with EQ Technology Edition1」が加わった。その場で720度回転する「G-TURN」、回転半径を大幅に縮小させる「G-STEERING」などの飛び道具を用意している。
同モデルは、期間限定で注文を受け付ける、いわゆる導入記念車、ローンチエディションと理解していいそうだ。つまり、将来的にはカタログモデルが追加されることになるのだろう。なお、受注期間は未定で、日本向けの割り当て台数などは決まっていないという。
「G-TURN」も「G-STEERING」も公道では使えない?
GクラスのEV版である「G 580 with EQ Technology Edition1」のプレス発表会では、「G-TURN」が披露された。その場で最大2回転、つまり720度回転する機能だ。同装備は、林道やオフロードコースなどで行き止まりになった際などで、Uターンをせずに、その場で旋回して元の道に戻れることなどが想定されている。「G-TURN」ボタンを押すと、ステアリングが固定されその場で回転することで、狭い場所からの脱出を可能にする。
後輪軸を中心に小回りが利く「G-STEERING」は、いわゆるドーナツターンのイメージ。「G-TURN」も「G-STEERING」もメルセデス・ベンツ日本では、公道では使用できないと、前置きしている機能だ。なお、一般的な摩擦係数μのアスファルト路面で「G-TURN」をすると、タイヤをはじめ、車両へのダメージも相当なものになる。プレス向けの広報車両を使ってこうした路面で同機能を試すのは厳禁とのこと。
こうしたインパクト大の飛び道具だけでなく、ただでさえ重いヘビー級クロカンモデルをBEV化したのは、EVシフトへの本気度を示す狙いもあるのかもしれない。なにせ車両重量は3120kgもある。駆動用バッテリーを保護するアンダーボディプロテクションは、厚さ26mmに達し、カーボンファイバーを含めた多様な素材を組み合わせで軽量化も図られたという。
4輪のホイール近くにそれぞれモーターを配置
パワートレーンは、メルセデスのBEVで初となる4輪独立式モーターで、4輪のホイールの近くに永久磁石同期モーターが配されている。4つのモーターは、ラダーフレームの前後アクスルに2つずつ組み込まれていて、短いシャフトにより車輪が駆動される。EPSと集中制御ユニットがモータートルクを緻密に制御し、急勾配から滑りやすい路面まで圧倒的な走破性を確保するという。
電動化されたものの、最大の目標は、圧倒的な悪路走破性だというからGクラスの思想はまったくぶれていない。そのため、ラダーフレームの大幅な強化、新開発されたド・ディオン式のリジットリヤアクスルを用意。先述したとおり、4つのモーターはラダーフレームに配置され、ホイールとデュアルジョイントシャフトでつながれている。そのため、サスペンションの動きによりキャンパー角が変化せず、安定したハンドリングをもたらすという。さらに、車速や路面に応じて減衰特性を連続的に調整するアダプティブダンピングシステムも採用された。
加えて、トルクベクタリングを使う仮想ディファレンシャルロックが備わり、4輪独立式モーターとトルクベクタリングにより、各輪に自在に駆動力を配分できる。オフロードだけでなく、オンロードでの俊敏な走りも可能になるという。そのほか、ICE(内燃機関)モデルと同様に、ローレンジモードが備わる。各軸のモーターにそれぞれトランスミッションが用意され、減速比を2:1とすることで、トルクを高める。そのほか、ドライバーが操舵に集中できる悪路用クルーズコントロールであるオフロードクロール機能、ボンネットが透けて見える「トランスペアレントボンネット」などを備えている。
見た目は内燃機関のGクラスとほとんど変わらない
BEV化されたにもかかわらず、エクステリアはパッと見では分からないほどICE(内燃機関)と同じテイストに仕立てられた。エンブレムや普通用/急速用の充電リッド、リヤホイールアーチに開けられたダクト(エアカーテン)などのほか、充電ケーブルが収まるテールゲートのデザインボックスは、スペアタイヤに変わって用意された装備だ。
インテリアには、デフロック機能のスイッチまわりが「G 580」の専用デザインになり、「G-TURN」、「G-STEERING」の起動スイッチも配置されている。センターディスプレイと連続したメーターパネルや音声対話型インフォテイメントシステムの「MBUX」、最新世代のマルチファンクションステアリングホイールなど、最新メルセデスのエッセンスと、Gクラスならではのタフさが表現されている。
搭載される駆動用バッテリーは、容量116kWのリチウムイオンバッテリーで、216個のセルを12のモジュールに組み込んでいる。最大4mm厚のスチール製ラダーフレームに組み込まれ、低重心化と車体剛性の向上に寄与。泥や水の浸入を防ぐケースに収められている。なお、最大渡河水深は700mmの内燃機関仕様を超え、850mmに達している。
航続距離は530kmで、急速充電は最大出力150kWのチャデモ規格に対応し、10%から80%までの充電時間(目安)は、約40分だそうだ。普通充電は6.0kWまでに対応している。オーストリアで行われたテストでは、ハードなオフロードコースを14往復できたそうで、航続距離と極限での連続走行にも自信を見せている。なお、上り坂でSOC(充電率)が5%下がっても下り坂で3%回生できるという。
EVになってもGクラスの資産価値はあるのか?
クロカン4WDのプレミアム化は、現行Gクラスも例外ではなく、供給の問題もあり、現在も中古車価格が新車価格を上回っている個体も多い。BEVはいわゆるリセール価格(再販や下取り価格)が下がる傾向があり、Gクラスを走る資産として捉える層がどう判断するかも気になるところだ。なお、「G 580 with EQ Technology Edition1」には、高電圧バッテリー(駆動用バッテリー)の8年16万km以内で、70%に満たない場合は保証の対象とした。さらに、専用の充電カードを使えば全国約2万2100基の提携充電器が利用でき、1年間は月額基本料金と充電料金が無料になる。「G 580 with EQ Technology Edition1」の価格は、2635万円となっている。