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中国・浙江省杭州にあるZEEKRのヘッドクォーターを訪問した。超高層ビルの23階以上がZEEKR(57階建)内部はすべてのデザインが統一された空間で、働いている人の多くは20〜30代に見えた。インタビューに応じてくれたZEEKR海外事業担当副社長のMars Chen氏も40代に入りたての若きエグゼクティブだ。
アルファードのライバルになるか? 中国プレミアムBEVブランド、ZEEKR(ジーカー)が2025年に日本市場にやってくる!
ZEEKRに入社する前、20年間近くファーウェイで働いていたという。そのうち8年間は海外、たとえば、アジア太平洋地域やヨーロッパで勤めていた。
「ファーウェイ時代の上司は8-9年、日本で働いた経験のある人でしたから、日本のこともよく知っています。私は自動車が大好きです。2004年に大学を卒業しましたが、その時のマイカーはホンダ・シビックでした。私の父は日系企業に11年間勤めていた」と穏やかに語るChen氏とのインタビューを予定の1時間を大きく超えた。
なぜ日本市場に参入するのか?
副社長:初めまして。私はずっと日本のメディアの皆さん、特に自動車メディアの皆さんと交流したかったのです。私も一度日本の市場調査に行ってきました。ZEEKRグループは、すでに世界30カ国以上に進出しています。具体的に言うと、ヨーロッパ、アジア太平洋地域とラテン地域、中東、中央アジアの国々が含まれています。新しい国に進出するときは、まず現地の媒体の皆さんと連携をとることにしています。まず、メディアの皆さんを我々の本部に来ていただくのです。質問もお受けします。
—今回、ZEEKRは日本参入を決めたそうですが、日本のBEVのシェアはかなり低いです。なぜ、日本市場に参入しようと決断されたのですか?
副社長:まずプラス面から言うと、日本の自動車の市場規模は400万台レベルですね。そしてまた、多様性もありますし、競争もすごく厳しいです。そして厳しいながらもオープンな市場だと考えております。欧州、アメリカ、韓国のメーカーも参入しています。それは日本のユーザー、消費者の皆さんがより多様な選択を望んでいるということだと思います。中国の自動車メーカー、たとえばBYDもすでに日本に進出していますが、でも、私たちから見ると、おそらくそれほど売り上げていないと考えています。私たちは、BYDとはちょっと違います。市場のEV化には、いろいろな努力が必要だと思います。まず、4つの要素があります。ひとつは充電、政府の補助金などの整備、あとは一般のユーザーのBEVに対する情熱、そして良い製品です。日本の市場は充電インフラの整備がまだ足りていません。それでも、日本市場では良い製品、ハイエンドでスマートな電気自動車、もちろんZEEKRも含めて、プレミアム・ブランドはそういう市場に挑戦する。挑戦することはすごく意味があると考えています。我々はレクサスがアメリカやヨーロッパに進出したやり方も学んでいるところです。
—ZEEKRが仮に日本市場で成功したら、それはZEEKRグローバルとしてはどんな意味があるのでしょうか?
副社長:まず日本で成功したら、ビジネス面で言うと、400万台市場ですから、すごい成長を意味することになります。もし日本で成功できたら、それはイコールZEEKRブランドが世界レベルのブランドだと言えることになります。
—日本に進出するときに、おそらく必ず最初に聞かれるのは「ZEEKRはBYDとどう違うのですか?」だと思います。どうお答えになりますか?
副社長:じつは中国ではZEEKRとBYDでは購入する層、ターゲットがまったく違うのです。またテスラやボルボなどのBEVメーカーもライバルとは見ていなくて、なんというか、同じ道を歩むメイト(友人)とかパートナーだと考えています。
—日本で成功するためには、良い製品を提供すること、とおっしゃっていましたが、ZEEKRの他社に対するアドバンテージ、USP(ユニーク・セールスポイント)はどこにあると考えていますか?
副社長:市場からのフィードバックで言うと、主にふたつの点ですごく認められています。ひとつは、デザインです。外観がすごく美しい、ふたつ目は、パフォーマンス性能がすごく優れている。デザインは外観だけではありません。インテリアのデザインもすごく良いと評価されました。ZEEKRのエントリーモデルで言うと、BEVから移行するユーザーに我々の車両がもっとも受け入れられやすいと思います。またいろいろ先進的な技術を投入しています。ZEEKRの技術や研究開発の裏に、その開発スピードを追求するだけではなく、乗る人にとっての心地よさ、エクスペリエンスをすごく大事にしています。たとえば、私の記憶が確かならレクサスは最初に竹素材をインテリアに使っていますね。すごく良いと思います。ZEEKRもそういう面に配慮しています。
副社長:デザインに関していうと、デザイナーはほとんど北欧・スウェーデンのデザイナーです。400名以上のデザインチームがあります。北欧のデザイナーですが、東方の文化もすごく活かしながらデザインしてくれています。独特の繊細な感じがあります。アメリカや北欧というと、冷たい、硬いというふうに思われる人もいますが、ZEEKRのデザインはそうではありません。
日本での販売戦略は?
—日本での価格戦略は?
副社長:逆に質問させてください。いま日本市場に進出する場合に考えているのはふたつのモデルです。ひとつは009、もうひとつはXです。皆さんはどちらの方が日本のユーザーに受け入れやすいと思いますか?
—009だと思います。
副社長:トヨタのアルファードの牙城ですね。私たちはこのアルファードを目指すという感じで、合理的な価格戦略、アルファードと比べて合理的な価格を考えなければなりません。具体的な価格は、いまは言えませんね。中国のお客様は、アルファードが大好きです。中国でのアルファードはMSRP(メーカー希望小売価格=税抜き価格)に税金やプレミア分などが加わって非常に高価ですが、とても人気です。009を発表してからは、アルファードのプレミア分がこれまでほど高くなくなってきました。トヨタ・アルファードはZEEKR009が発売されるまで、結構孤独だったんですね。ですから、ZEEKR009はアルファードのライバルというよりは、同じ道を行くメイトのような存在なのです。
43インチモニター、その台座にはヒマラヤの大理石を使っている。
—今回009は、4シーター仕様も日本に入れるつもりですか?
副社長:009の4シーター仕様「光輝」は現在、左ハンドル仕様のみを生産しています。いま、右ハンドルの市場から同じ質問をたくさんされています。すぐには難しいですが、将来はその可能性はあるかもしれません。これは簡単な技術的な問題ではありません。ZEEKRのSEAプラットフォームは右・左ハンドルも開発しやすいです。でも、投資を伴いますので、市場のニーズを慎重に見極めないといけません。
—日本に進出する際に重要なこととして、日本はいま充電インフラがまだ整備されていないというのがあります。ZEEKRは充電インフラを日本で展開する考えはありますか? 日本ではアウディやポルシェ、テスラなどが独自に充電設備を展開しています。
副社長:そこは慎重に考えています。まず自分の充電インフラを建設しますが、でも最終的にそんなに多くの充電ステーションを建設するのは難しいですね。
—日本での販売方法、ディーラーの仕組みはどうなりますか?
副社長:伝統的なブランドと同じやり方ですね。直販でありません。日本の優秀なディーラーさんたちと一緒に協力してビジネスを展開します。
—一方で、いま中国のBEVの過剰生産、過剰供給、欧州やアメリカの規制の問題、関税の引き上げなどの問題があります。そこで余ったBEVを輸出に回しているのはという批判の声もあります。
副社長:関税などの問題、確かにアメリカ市場へ進出するのは難しいですね。欧州でも関税が増えてきました。それは好ましいことではありませんが、現地で生産工場を作って現地での販売を目指しています。
—ジーリーの副社長が欧州で生産拠点を探していると発言しています。その場合は、生産するのはZEEKRブランドになるのですか?
副社長:ZEEKRとLynk & Coですね。
—中国でのZEEKRユーザー像と日本に導入する際のターゲットユーザー像に違いはありますか? それはどんなユーザー像を想定していますか?
副社長:じつは日本のターゲットも中国のターゲットもほぼ同じだと考えています。特徴はふたつあります。ひとつ目はプレミアムカーを体験したユーザーです。ふたつ目は新しいものにすごく興味を持っている人です。技術面に関しては、もともとZEEKRは技術開発会社ですので、すごく重視しています。スマート運転やバッテリー技術など、技術面に関しても日本の皆さんに紹介していと考えています。
—グローバルの展開のお話を教えてください。アメリカへの進出はどう考えていますか?
副社長:関税の問題もありますが、Googleのウェイモと連携しています。
—日本での販売目標は?
副社長:第一に考えるのは、売上、販売台数ではなく、良いやり方で日本に進出することです。日本市場ではBEVの受け入れやすさなど不確定要素があります。ブラジルを例に挙げると、昨年はBEVの販売台数はすごく低くかったのですが、今年の上半期は急増しています。やはりセグメントでトップ1、2になりたいです。たとえば、電気MPVのセグメントではZEEKRはトップです。
—日本企業とのパートナーシップは?
副社長:もちろん日本企業との連携は強化したいと思っています。たとえばディーラーネットワークや充電ネットワークに関する企業、ソフトウェアに関する企業などですね。やはり中国でも日本でも同じですが、コンプライアンスがすごく大事です。現地の法律・法規に従うことが重要です。
日本に導入するのは009とX。Xが先か
—日本に導入するのはXと009からというお話でしたが、そこから先のプログラムはどう考えていますか?
副社長:いま関連するパートナーとも協議していますが、Xと009を同時に出すのか、先にXを出すのか考えているところです。タイではまずXを市場にだして、あとから009を出しました。シンガポールも同様です。
—ZEEKRの知名度はまだ日本では高くありません。広めるための施策は?
副社長:「圏に入る」ということです。ターゲットははっきりすることです。
—来年JMSが開催される年です。ZEEKRは出展しますか?
副社長:可能性は高いと思います。
—中国だけではありませんが、BEVの値下げ競争が激化しています。利益率もかなり厳しいのはないかと思います。全体的なお話でかまいませんが、現在の状況をどう見ていますか?
副社長:たとえば、テスラは粗利率がかなり高いです。ZEEKRもまぁまぁ良い感じです。粗利率は15%を超えています。BEVメーカーの特徴ですが、投資額がかなり大きいですよね。ですから、いまはまだ赤字ですが、それは初期投資が大きいからです。これから全体のBEVの販売台数が増加すれば、生産コストは自然に下がります。ですが、これからの1〜2年はBEV市場の競争はさらに厳しくなると思います。でも、それを生き残った会社はすごく速い発展と遂げると考えています。
—今後HEVを開発・生産する計画はありますか?
副社長:はい。来年、大型のSUVを出す計画があります。同じ車型でBEVとHEVを設定する予定です。
—将来日本にHEVを入れる可能性もありますか?
副社長:まずはBEVだけです。
ーありがとうございました。
インタビューが終わったのが、19時。その後、取材陣はZEEKRのヘッドクォーターが見えるレストランで夕食を摂った。夕食が終わった21時でもヘッドクォーターの多くの窓には灯りがともっていた。通常は21時〜23時くらいまで働いているという。若いスタッフが昼夜を問わず働いている。まるで60〜80年代、日本の自動車メーカーが懸命に欧州・アメリカの自動車メーカーの背中を追っていた頃のようだ。レースは常に追い上げる側に利がある。日本のユーザーにとって選択肢が増えるのは歓迎だ。と同時に、迎え撃つ(世界市場で競争する)日本の自動車メーカーは、脅威を受け止めなくてはならない。