防衛装備庁が研究・開発を続けてきた対ドローン用高出力レーザー装備車両が、初めて公開された。11月9日、自衛隊創設70周年を記念する観閲式での一幕だ。観閲式はネットでもリアルタイム配信されたが、登場と同時に、SNS上でも大きな盛り上がりを見せた。高出力レーザーとは何か? そして、この車両はどのような能力を持つのか?【自衛隊新戦力図鑑】
TEXT & PHOTO:綾部剛之(AYABE Takayuki)
安価なドローンに対抗する、安価な反撃手段
防衛装備庁では、2010年度より「防空用高出力レーザに関する研究」に取り組み、この成果をもとに2018年度から「指向性エネルギーシステムに関する研究」、そして2021年度から「車両搭載型レーザ装置の研究」に取り組んできた。今回登場した車両は、この「車両搭載型レーザ装置の研究」による試作車両だ(防衛装備庁ではカタカナ語末尾の長音記号を省略し、「レーザー」ではなく「レーザ」と表記している)。
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ドローン対処に用途を絞った10kW級レーザー
重装輪回収車の車体に、レーザー装置・電源・冷却装置など迎撃に必要な機能をおさめており、部隊に追従できる機動性のあるシステムとなっている(ただし、警戒捜索レーダーは分けられているようだ)。
車体上部の回転式砲塔「ビーム指向部」には、レーザー照射口のほか、ふたつの小窓が確認できる。これは目標の追尾・捕捉用の赤外線カメラと、目標までの距離を測定するレーザー測遠器だと思われる。
公開された資料から、搭載するレーザーの出力は10kW級で、主に小型ドローンのみに対処するものと思われる。防衛装備庁では、前述した「指向性エネルギーシステムに関する研究」で100kW級レーザーの研究開発も行なっており、こちらは迫撃砲弾の撃破も可能とされるが、こちらは機動性のある車載システムにおさめるため、出力が抑えられている。
今回、この車両は「車両搭載高出力レーザ実証装置」と紹介された。現時点ではあくまで「実証」のための装置であり、今後その実用性や部隊運用について検討が進められるのだろう。まだまだ部隊配備には時間がかかるだろうが、次世代装備として今後とも注目していきたい。
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