歴代をイッキ見!! あらためてスズキ・アルトのルーツを振り返る

「さわやかアルト47万円!」から「ハロー、エブリデイ!」へ。アルトのルーツを振り返る

9代目スズキ アルトと鈴木俊宏社長。
今回で9代目を数えるスズキ・アルト。その源流は衝撃的な低価格でデビューした軽商用車である。多くの人々に「移動の自由」をもたらした、アルトというクルマのルーツをあらためて振り返ってみよう。

初代アルト 1979-1984年「さわやかアルト47万円」

初代アルト(1979年)

今回で9代目となるスズキ・アルト。そもそもアルトというクルマは1979年に5代目フロンテの姉妹車として誕生した商用車だ。その開発の端緒は、1973年のオイルショックと刻々と厳しさを増す排出ガス規制による自動車の販売不振。“庶民の足”であった軽自動車とて例外ではなく、1970年に125万5917台に達した販売数は、1975年には実に半数以下の58万8306台へと激減していた。

当然ながら他社同様にスズキもこの苦境にあえいでおり、そこから脱却するべく、就任したばかりの鈴木修社長(当時/現・相談役)から開発部門に対し「製造コスト35万円、45万円で販売できる軽自動車」開発の至上命令が下された。

当時の比較的価格が安い同社の軽自動車でも55万円を超えるなか、いったいどうやれば45万円の販売価格が実現できるのか…? そこでスズキの開発陣が選んだのは「商用車として開発する」ことだった。1989年4月の消費税導入以前は、自動車には物品税が課せられていたが、乗用軽自動車の税率が15.5%だったのに対し、商用軽自動車は非課税=0%だったのである。

この税率の優位性に加え、徹底したコスト低減をはかった。ラジオやシガーライター、時計はもちろんのこと、助手席側のドアのカギ穴までもが省かれ、大半の装備がオプションとされたことで、大幅な価格の低減に成功したのだ。さすがに当初目標の販売価格45万円を達成することはかなわなかったが、それでも47万円の低価格は十分に衝撃的であり、「さわやかアルト47万円」のキャッチフレーズとともに初代アルトは大ヒット作となった。

初代アルトの姉妹車、5代目フロンテ。こちらは純粋に乗用車だ。

ちなみにエンジンは550cc水冷直列3気筒2ストロークのT5B型で最高出力28ps/5500rpm、最大トルク5.3kgm/3000rpmで4速MTと組み合わされるが、すべからくオプション装備とされたために軽量を極めた車両重量は545kg、さらに2シーターあるいは実質的2シーター・モデルだったことから、まるでレーシングカーのような機能優先思想に貫かれた1台とも言えた。

初代アルトのインパネ。実にシンプル。
初代アルトのシート。きちんとリクライニング機構を備えている。基本的な部分は決して手を抜いていないのは立派。

初代アルトは公共交通機関が未発達な地域では日常の足として重宝されたことはもちろん、装備は簡素でもヒーターやシートのリクライニング機構は備え、近隣の移動に限れば不自由ないクルマだったことから「47万円ならいいか」とばかりにセカンドカー需要も喚起したのだ。アルトの発売によってスズキは業績を回復し、1980年の販売台数は前年比24%のプラスを叩き出したのである。

このヒットを受けて他社も追従、ダイハツはミラクオーレ、スバルはレックスコンビと相次いで商用車仕様の軽自動車が発売され、「軽ボンネットバン」という一大ジャンルを切り拓くことになる。半面、軽ボンネットバンの大人気ぶりは税務当局の注意を引くこととなり、1981年10月からは「4人乗り軽ライトバン」に対して5%の物品税が課税されるようになってしまったのだが…。以後、アルトはジムニーと並び、スズキの軽自動車を支える2本柱となっていく。その流れを少し駆け足で見ていこう。

2代目 1984-1988年「My Town, ALTO Street.」

2代目アルト(1984年)

1984年に登場した2代目は「My Town, ALTO Street.」のキャッチで合理の美学をデザインに反映させるつくりを実現。室内を有効に利用させるアイデアとして、高いヒップポイントが機能した。

3代目 1988-1994年

3代目アルト(1988年)
3代目アルト スライドスリムドア(1988年)
3代目アルト(新規格・190年)

1988年に登場した3代目は「ベストアルト誕生」のフレーズでデビュー。シンプルをさらに突き詰めた一方、先代より登場したスポーツモデル『アルトワークス』の人気が爆発し、より個性的で速い軽自動車の代名詞的存在となった。

4代目 1994-1998年

4代目アルト(1994年)4

1994年に登場の4代目は80年代末期のバブル景気の影響をうけて変化した人々のライフスタイルに寄り添い上質に進化。「毎日のるなら、このカタチ」のキャッチ通り、無理せず日々乗れる1台として仕上げられた。

5代目 1994-2004年「エコエコアルト」

5代目アルト(1998年)

1998年に登場した5代目は、軽自動車界が1993年に登場したワゴンRによって切り拓かれたハイトワゴンが全盛のなか、「エコエコアルト」をうたって経済性と環境性能をアピールし、ポジションを明確化してスズキ車の底辺を支えた。

6代目 2004-2009年 革新の個性派

6代目アルト(2004年)

2004年にデビューの6代目は革新の個性派で、“モノ”としての価値を高め、クルマであることに引きずられないクルマづくりを実現した。「街をアルトでスキップ!」のキャッチ通り軽快な魅力を誇り、ハードなイメージの『アルトワークス』が廃止された。

7代目 2009-2014年

7代目アルト(2009年)

2009年に登場の7代目は「世代を超えた軽自動車」のキャッチ通り、これまでのイメージを一新するエモーショナルなスタイリングを誇った。経済性の高さを前面にアピールし、エコカーの『アルトエコ』をラインナップに加えた。2013年仕様では35km/ℓを実現している。

8代目 2014-2021年

8代目アルト(2014年)

2014年にデビューしたのが先代の8代目。原点回帰を掲げて初代アルトのコンセプトが大いに意識された。また6代目、7代目で女性ユーザーを意識した方向性にあったデザインをユニセックス方向へ戻し、『アルトワークス』も15年ぶりに復活したのが大きな話題となった。「好きになるのに、1秒もいらない」のキャッチ通りに魅力的な1台である。

さて、今般の9代目アルト、市場はどのような評価を下すのだろうか?

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