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世界のダンロップ・ブランドは再び日本の住友ゴムが商標権を持った

2025年1月、日本の住友ゴムが、世界のダンロップを買収したというニュースがあったね。しかし昔のバブル期に、住友ゴムが世界のダンロップを買った時があった。ドイツ、英国、アメリカ、ニュージーランドなど、いろいろグローバルに展開していたダンロップを全部手中に収めた。が、その後景気が悪くなった時に住友ゴムはグッドイヤーにダンロップを売った。なので、ダンロップの名はしばらくの間、日本だけしか使えなかった。
しかし…困ったな~。
そこで、住友ゴムのダンロップ・グループは、オーツタイヤが持っていた「ファルケン」というスポーツブランドを使い、海外はファルケン、国内はダンロップという展開にした。でも、なんかおかしい?…と思っていたのだが、ここにきてもう一度、世界のダンロップ・ブランドを買い戻した、というのが1月の話。

これで名実ともに住友ゴムがグローバルに「ダンロップ」というブランドを使えるようになった。
ダンロップは英国(スコットランド)の人の名前で、空気入りタイヤを考案した人が、獣医のジョン・ボイド・ダンロップ(John Boyd Dunlop)さん。
ダンロップは日本でもモータースポーツの歴史も古い。ある会社(「ダンロップ護謨[極東]株式会社」と名乗っていた)がダンロップという英国のブランドを使い、1909年に兵庫県神戸市でタイヤ作りを始めた(日本初のタイヤ工場)。その時の会社が、住友グループの住友ゴムだ。
静粛性、操縦性、乗り心地、全てを網羅するSPORT MAXX LUX
SPORT MAXX LUXの試乗会は、サーキットなどのテストコースではなく一般道でのテスト。住友ゴムの東京本社がある豊洲からメルセデス・ベンツのEクラスとGLC、この2台2種類のサイズを試走した。

ラックスとはラグジュアリー=高級という意味。従来からあるスポーツ・マックス・シリーズにLUXシリーズが加わったということ。
※R58=サーキットスポーツ/RS=ウルトラハイパフォーマンス/060+=ウルトラハイパフォーマンス/他、MAXXシリーズとしてスタッドレスタイヤのWINTER MAXX、オールシーズンタイヤのALL SEASON MAXXがある。

LUXは静粛性と乗り心地と操縦性など、全部イイことばっかり言っている。静粛性に関して言えば、デジタイヤ技術(デジタルローリングシミュレーション技術)である特殊吸音スポンジ「サイレントコア」を使ってロードノイズを低減したり、パターンを工夫してパターンノイズを工夫したりしているので、このメルセデス・ベンツやBMWとかの高級車に似合うのだ。今乗っているメルセデス・ベンツGLCも、確かにロードノイズは静かだね。

今のこの路面はサメ肌で、普通だったらロードノイズがウワァ~~~!と出そうなのだが、SPORT MAXX LUXは結構頑張って静か。やっぱりスポンジ入りは効くね。GLCはADASもいいしクルマもいいしエンジンもいい。サスペンションとタイヤも良くなると、本当に極楽楽チングルマだね!
新車装着タイヤは…バツなものも多いのだ!
新車に履いているタイヤが必ずしもいい…とは思わないので、リプレース(交換)で売られているタイヤを上手くチョイスすると、新車が見違えるくらい良くなるケースというのは多々ある。
このメルセデス・ベンツの装着タイヤもちょっとロードノイズがうるさいかな?と思っていたが、SPORT MAXX LUXはかなり静か。こういうタイヤはレクサスRXとかにもいい。レクサスって意外とタイヤをはずしているところがあり、LBXなどもウエット性は良くない。
タイヤのラベリングで言うと、GLCに履いているタイヤは235/60-18、転がり抵抗とウエット性能は両方ともAランク。なのでウエット性は悪くないだろう。
こういうリプレースのタイヤというのは、タイヤの転がり抵抗と二律背反するウエット性能のラベルがちゃんと表示されているが、新車に着いているタイヤはラベリングがない。まぁ自動車メーカーが嫌がっているのだと思うが。
良いクルマには良いタイヤが似合う♪
メルセデス・ベンツE300にSPORT MAXX LUX、プレミアムな乗り味ということで、静粛性と乗り心地と運動性能を両立させているが、特にこのEクラスとの相性は良さそうだ。Eクラスはヨダレが出そうなしなやかな乗り心地なので、その乗り味をさらに良くするのにこのタイヤが貢献しているというのは間違いない。

元々のオリジナル(新車時の装着タイヤ)はコンチネンタルやピレリなのだが、速度無制限のアウトバーンで作ると意外と固め。でもこのSPORT MAXX LUXは本当にEクラスとの相性がいい。ロードノイズはめちゃくちゃ静か。サイズはえっ~と…Eクラスは確か245/45-18。
このタイヤ、まずステアリングのセンターフィールはいいし路面のつなぎ目のハーシュネスもいい。245/45の方がちょっとロードノイズはデカいな。GLCが履いている235/60の方が静かだった。とはいえ、絶対評価で言えば相当静か。もうちょっとスポンジ盛った方がいいのでは?とも思うが。今までこういうラグジュアリーなスポーツタイヤというと、どうしてもミシュラン・プライマシーの独り勝ち?なんて思っていたが、そうでもないな。
やっぱり良いクルマには良いタイヤが似合う。逆に言うと、良いクルマには良いタイヤが必要。もっと逆に言うと良いタイヤには良いクルマが必要。
バランスのいい真ん中性能のタイヤが欲しいのだが、自動車メーカーが採用するのは…
サマータイヤの世界で言えば、サーキット用のハイグリップや燃費のいいエコタイヤ。だが、本当に欲しいのは真ん中性能のタイヤ。最近の日本車は安かろう悪かろうからちょっと脱皮して、いいクルマが出てきている。レクサス、トヨタ・クラウン、マツダCX-5やCX-60しかり、スバルも良くなってきているよね。なので本来、タイヤはもうちょっとクルマの進化に合わせてラグジュアリーな乗り心地性能とウエット性能、二律背反する性能がたくさんあるので、それをバランスしたような真ん中のタイヤが本当は欲しいのだが。

ここで日本のタイヤ事情。自動車メーカーが採用するタイヤは自動車メーカーのご都合で、燃費のいいタイヤが優先されウエット性能は結構悪いタイヤもあったりする。
しかしリプレースの場合、今はラベリング制度があるので、このタイヤは転がり抵抗はAランク、ウエットはBランクとか、その逆も。そういう風にタイヤの性能が情報公開されているが、新車に履くタイヤは自動車メーカーが情報公開を嫌がっているのでよく分からない。
実際、最近の新型車でも、すごくいいタイヤだけどウエットだけはダメっていうのがあったからね。そうなってくると、やっぱりオールラウンドな性能、バランスのいいタイヤっていうのは大事。しかし、それはタイヤメーカーにとって1番開発が難しい。二律背反する性能がたくさんあるので、それを両立していくっていうことは、そこに何らかの技術がないといけない。
そういう意味で、今まで私は個人的に「どのタイヤがいいですか?」って聞かれると、「バランスのいいタイヤとして見れば日本のタイヤメーカーよりも、むしろヨーロッパのミシュランとかピレリなどがいいんじゃないですか?」というアドバイスをよくしていた。

しかし最近になって日本のタイヤメーカーも、リプレースで高級志向に合わせたバランスのいいタイヤが出てきている。その1つが、このダンロップのSPORT MAXX LUXはいい。新しくタイヤを1から設計し直して、ロードノイズ、これはタイヤの内側にスポンジを貼り付けているので、それがタイヤノイズを吸収している。パターンノイズは周波数の高い音なのだが、パターンを設計し直すことによって、14%くらい低減していると言われている。ウエット性能と二律背反する転がり抵抗は、両方ともAランクを狙うようなタイヤになっている。
今回、CクラスのSUV、GLCに235/60-18を履き、E300には245/45-18。同じ18インチだけど、245/45と235/60はタイヤの縦のタッパが違うので乗り心地とかキャラが違う。GLCに履いた235/60は乗り心地がすごくしなやかでロードノイズが見事に静か。本当にサイレントなタイヤでいいなと思っていたのだが、Eクラスの245/45に乗ると、同じスポンジ入りでもちょっとロードノイズが大きい。本当はEクラスの方がCクラスよりも上級車種なので、245/45をもっと静かにして欲しいなと思ったんだけどね。
そういう意味で、45サイズのタイヤが本当に必要なのか?と思うような感じは無きにしも非ず。
そのように、全体のバランスを取るタイヤ作りというのが実用的には1番必要なタイヤではないかなと思っている。最近の日本のタイヤメーカーが作るタイヤはハイグリップ寄りとか低転がり低燃費寄りというのが多かった中で、バランスが取れたタイヤ、ダンロップSPORT MAXX LUXはメルセデス・ベンツのような高級車にピタッと合うようになっていた。メルセデス・ベンツは最近、結構タイヤが硬いんだよね。なので「ベンツの乗り心地…」というのがあまり最近言われなくなってきて、BMWに近づいたのかなっていう気もしていたのだが、こういうタイヤを履くのならばいいと思う。
ドイツの冬用タイヤ使用開始は外気温で決まり、エア圧は乗車人数で決まる
今回はメルセデス・ベンツを使ってテストしているが、ドイツはものすごくタイヤに対して厳格な規定を持っている。アウトバーンの速度規定も冬になると最高速度180km/hくらいまでのウインタータイヤを履けとか。ドイツの場合は雪が降ったらウインタータイヤ…ではなくて、外気温で決めている。サマータイヤのゴム温度のレンジがプラス4℃から上なので、路面温度が4℃より下がったら雪が降っていなくてもウインタータイヤを履きなさい、というのがドイツのレギュレーション。
日本は雪が降ったらスタッドレス。日本の場合はアイスバーンのような路面もあるので、スタッッドレスタイヤというとスケートリンクみたいなアイスバーン用。

一方でサマータイヤはサーキットをガンガン走れるようなハイグリップタイヤ、燃費が良く転がり抵抗の少ないエコタイヤ…。それぞれの機能が特化し過ぎていて、普通に使うのにはちょうど真ん中のところの性能を持つタイヤが欲しい。欲張るわけじゃないがそこそこの転がり抵抗や燃費性能があって、そこそこのウエット性能もあってオールラウンドに使える…雪の世界はまた別の話だが。ダンロップの場合はシンクロウェザー(SYNCHRO WEATHER)というオールシーズンタイヤが最近出てきたが、ちょっとそこは置いといて。
ドイツがどれだけタイヤに対して厳格さがあるか、例えばフォルクスワーゲンゴルフ。FFなので「4人乗るか2人で乗るかで空気圧を変えなさい」というくらいのことを言っている。リヤの空気圧を変えろと。そこまで空気圧を厳格に見ている。
もう1つ、自分のレンジローバーだが、サイズは20インチの255/55なのだが、サイズ表を見ると20インチの235/55まではあるのだが255/55がない。シンクロウェザーもこのSPORT MAXX LUXもそうだが、自分のレンジローバーには履けないのだ。ジャガー・ランドローバーはタイヤの外形がでかいのを使っているので、ちょっと残念。
以前乗っていたメルセデス・ベンツのGLAには、ダンロップ・シンクロウェザーの1個前のオールシーズンタイヤを履いていたが、東京で使うにはちょっとの雪くらいだったらOK♪(もちろんチェーン規制が出たらダメだからチェーンは携帯しなきゃいけないぞ)。
今シーズンも雪が相当降ったので、各地でスタックした車両が出ていたが、スタッドレスタイヤはアイスバーンには効くが深雪にはあまり効かない。深雪に効かすのだったら少し目の荒いタイプのせん断力でグリップが出る方が豪雪地域にはいい。スタッドレスタイヤもメーカーによっては2種類用意しているので、SUV用として売られているのは目の粗い方なので、これは豪雪地域にもいいね。そういう意味でも結構、冬タイヤのチョイスも難しいところではある。
4WDだったらチェーンは要らないかもしれないが、備えあれば患いなし! 人がいないような雪道でもしクルマがスタックしてしまったら救援隊も呼べないし、そこで一晩過ごさなければいけないので、冬は毛布とか水とかシャベルとかは必ず用意しておいた方がいいね。今年も酸ヶ湯では5m積もったし山形では6mくらい積もったらしいし。
ドカ雪の豪雪地域の2025年幕開けだった。これは多分、気候変動も影響していると思えば、豪雨や豪雪というのは必ず日本を襲ってくるから、自動車オーナーさんたちはそういったものに対応する能力、知識を持っていた方がいいと思う。
いずれにしても、タイヤに命を乗せているわけだから、タイヤに対してはもっとしっかりとした知識を持って欲しい。
「車両購入時、予算の1割はタイヤ代に回せ!」の意味とは?
ダンロップもそうだが最近のタイヤは結構、値段が高い。日本人はタイヤにお金をかけない人が多いが、ドイツなどでは速度無制限のアウトバーン(高速道路)があるので、タイヤに対しては非常に厳格だからタイヤにお金を出す。日本人は洗車にお金をかけるが、タイヤにはお金をかけない。
それではダメ! よく新車を買う人が「予算500万円」というとギリギリ500万円のクルマを買うが、そうではなく、「車両は450万円くらいに落とし、その1割、50万円分はタイヤ代に取っておけ!」と私はよく言う。せっかくいいクルマを買っているにもかわらず、「タイヤは何でもいいや…」みたいな人があまりも多くてちょっと悲しい。普通にコンビニへ行くくらいの用途だったらパンクしなければ何でもいいのかもしれないが、ロングツーリングに行く人にとっては、タイヤは人の命を乗せているのだからちゃんと良いタイヤを選んで欲しいと思う。


量販店などで安売りしているタイヤを見ると、製造年月日が4年前とかの売れ残りだったりするところもある。それはサイドウォールにある4桁の数字で分かるようになっている。タイヤはケミカルのゴムなので、経年変化で油分が飛んでしまうとゴムが硬くなる。特にスタッドレスタイヤの場合、硬くなったらアイスバーンのグリップが悪くなるので、そこは注意して欲しい。

例えば、このタイヤは「サイレントコア」静かなタイヤだっていうのが分かり、ここに「245/45-18」というサイズ表記がある。そしてこの辺に4桁の数字があり、「何年の何月に作られたか」というのが分かるようになっている。インデックスで「100W」と書いてあるが、これは過重インデックスだ。
このように、タイヤに書いてあるいろんな数字と情報、これにはそれぞれ意味がある。その意味はGoogle先生かチャットGPTクンにでも聞いてみてくれ。
以上、タイヤに対する意識を高めることが、安全運転の1丁目1番じゃないかなと思う