スバル「レオーネ エステートバン」の摩訶不思議な8速(!?)操作法とは? 元SUBARUワークス、清水和夫の戦闘機を見よ!

レオーネエステートバン
レオーネ・エステートバンのエンジンルーム室内側にスペアタイヤが鎮座する
国際モータージャーナリスト・清水和夫氏の試乗動画『StartYourEnginesX』紹介、今回は試乗…ではなく、かつての相棒SUBARUレオーネバンとの懐かしの再会でニヤついている回をお送りする。

IMPRESSION:清水和夫(Kazuo SHIMIZU)/MOVIE:StartYourEnginesX/PHOTO:三栄 AUTO SPORT/ASSIST:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU)

清水和夫SUBARUラリーの原点、それがレオーネバン

ラリースト・清水和夫を語るうえで絶対に欠かせない車両、それがスバルのレオーネバンだ。ラリーでバン?と思う方もいると思うが、とにかくレオーネしかもバンなのだ。そんな清水氏にとってラリー競技の原点と言えるレオーネバンに苗場スキー場で遭遇! クロストレックS:HEVゲレンデタクシー仕事の合間に、摩訶不思議な操作を必要とする昭和のスバル4WDについて語った。

SUBARUレオーネ・エステートバン✕清水和夫
かつての相棒と再会。「オレが乗っていたのは初代、コレは2代目だね」

クアトロよりも先をいっていたSUBARUの4WD

今日は、苗場スキー場でSUBARUのイベント“ゲレンデタクシー”のドライバーとして参加している。

SUBARUゲレンデタクシー
この日、清水氏はSUBARUゲレンデタクシーの運転手さんとして参加
DCCSウィンターラリー
1983年2月、群馬・長野で行なわれた全日本ラリー選手権第1戦「DCCSウィンターラリー」にてBクラス優勝を果たした清水和夫/大沢英道のスバル・レオーネRX 4WD。この時点での車両はバンではないが、初優勝!(AUTO SPORT 1983年4月1日号より)
DCCSウィンターラリー
左が清水和夫選手…若い!(AUTO SPORT 1983年4月1日号より)

私がチームスバルに入った時(80年代初頭)はまだアウディの4WDシステム、クワトロが出る前だったが、スバルは乗用車4WDのハシリ。スバル4WDの歴史を見ると、ここにあるレオーネは2代目だが、1970年代最初にスバルはすでに4WDを作っていた。その時から日本スキー連盟と一緒にデモカーを作り、いろんなイベントに参加していた。

日本スキー連盟歴代オフィシャルカー
日本スキー連盟歴代オフィシャルカー

このスキー連盟との関係は2026年で50周年を迎えるそうだ。長い間、スバルは雪道で4輪駆動の技術を培ってきたわけだ。

日本スキー連盟歴代オフィシャルカー
レオーネを先頭に、歴代の日本スキー連盟オフィシャルカーが駆け下りてきた

ここに歴代のスキー連盟の4WD車が並んでいるが、非常に懐かしい! このレオーネは4ナンバーのバンだが(レオーネはワゴンではなくてバン)4輪駆動。で、隣が近代のクロストレック・ストロングハイブリッドS:HEV。

スバル レオーネ・エステートバン
スバル レオーネ・エステートバン

考えてみれば、レオーネからレガシィに変わったのが昭和から平成に変わる1989年だった。つまり、スバルのレオーネは昭和を走ってきて、それをレガシィにバトンタッチして、令和の時代に移ってきたわけだ。そのレガシィも令和の時代になるとレガシィから新しいクロストレックやフォレスターという時代に変わってきている。

スバル4WDの50年の歴史を紐解くと、まさに昭和、平成、令和という3つの時代を駆け抜けてきた。このような雪道でいろんな経験をしながら、スバル4WDの技術が磨かれてきたのだ。

レオーネからクロストレックへ
レオーネからクロストレックへと引き継がれてきたスバルの4WD技術

最近のスバル4WDはストロングハイブリッドで、モーターとバッテリーとプロペラシャフトの付いている4WD。こういったハイブリッドの4WDに進化させて走りと環境性能を両立しないと、この時代に競争できない。スバル4WD、50年の歴史の中でこのクロストレック・ストロングハイブリッドS:HEVに受け継がれてきた、という風に考えていいと思う。

レガシィツーリングワゴンの先祖、レオーネ・エステートバン

レオーネ・エステートバン
レオーネ・エステートバンをゲレンデで遊ぶ

懐かしいスバルの2代目レオーネ・エステートバン! これは4ナンバーの4輪駆動で、これがその後のステーションワゴンの4WD(レガシィ)になっていく。

それにしてもこの個体、綺麗だよね!

↓↓↓レオーネバンの味のある(?)不等長水平対向エンジンサウンドが
コチラで聴けますのでど~ぞ!↓↓↓

レオーネエステートバン
レオーネ・エステートバンのエンジンルーム室内側にスペアタイヤが鎮座する

1.8LのNAキャブレター。パッと見て分かるのは、エンジンルーム内にスペアタイヤがある。なぜか? それは理にかなっていて、FFなのでフロントに荷重をかけてしっかりトラクションをかける。この時代は全てが舗装路というわけではなく、時に未舗装路もあり、もちろん雪道も。前後重配分…とか言う前に、“FFベースだからフロントタイヤのトラクションをしっかりかける”という意味で、フロントに荷重をかけたのだ。結果的にエンジンルーム内にタイヤがあることで、衝突安全もタイヤ部分でエネルギー吸収をしたということも後々、分かってきた話。

スバル レオーネ・エステートバン
スバルの4WDの歴史を紐解いてみる

もう1つ重要な点は、サイドブレーキがフロントタイヤにかかること。これも荷重のあるところに制動力をかけるのがいいということ。サイドブレーキをリヤにかけてしまうと、レバーをしっかり引かないと坂道に止めたクルマが下がってしまう。そういったところも、スバルは理にかなったクルマ作りをしているな、というのが分かる。

4速×2種=8速! その操作方法は…忙しい(笑)

SUBARUレオーネ・エステートバン
こんなミッションで全日本ラリー選手権をSUBARUワークスとして戦ってきた清水氏

この当時の4WDシステムは、パートタイム4WDなので、この4WDレバーを戻すとFF、4WDにする時はレバーを引き上げる(※デュアルレンジと呼ばれた副変速機)。

レオーネ・エステートバン
レバーを引いて、1速、2速、レバーを戻して…でトータル8速(?)!
レオーネ・エステートバン
操作方法は動画のほうがよく分かるよ!
レオーネ・エステートバン
摩訶不思議な操作方法は動画で!

引き上げるのだが、1ノッチ引くとハイで、もう1ノッチ引くとロー。なので、1速のロー、1速のハイ、で2速のロー、2速のハイ…とやって、結局『4速×2=8速』だったのだ! こんなことをガチャガチャガチャガチャやりながら全日本ラリーを走っていた。パワーが無いから使うしかなかったのだが…! 懐かしいな~。

【SPECIFICATIONS】※年式により数値が異なる場合もある
車名:スバル レオーネ エステートバン1800(2代目1979~1984年)
全長×全幅×全高:4285×1620×1445mm
ホイールベース:2445mm
トレッド(前/後):1310/1340mm
車両重量:1005kg
乗車定員:2/5名
エンジン種類:水平対向4気筒4サイクルOHV
内径×行程:92×67mm
総排気量:1781cc
圧縮比:8.7
最高出力:95ps/5200rpm
最大トルク:15.0kgm/3200rpm
駆動方式:四輪駆動
トランスミッション:4速MT(4Rデュアルレンジ/前進4段・後進1段 副変速機付)
サスペンション(前/後):マクファーソンストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ(前/後):ディスク/リーディングトレーリング(ドラム)
タイヤサイズ(前/後):155R13-6PR(※PR=プライレーティング)

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著者プロフィール

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツ…