連載

自衛隊新戦力図鑑

レールガンのしくみ

あらためて「レールガン」について説明しておきたい。従来の火砲は火薬の燃焼で生じるガスの圧力で弾丸を発射しているが、レールガンは電気の力で弾丸を射出する。より具体的には「フレミングの法則」や「アンペールの法則」を利用したものだ。以下にイラストを交えて、順を追って説明しよう。

①電源に接続された2本のレールを用意する。これが砲身となる。この間に電気を通す電機子を置くと、電気回路ができあがる。
②アンペールの法則(右ねじの法則)により、電気の進行方向に対して「環状・右回り」の磁界が発生する。
③このとき、レールに挟まれた電機子は右向きに電流が流れ、下向きの磁界のなかにある。すると、フレミングの法則(左手の法則)により、前方に向けた「ローレンツ力」が発生する。

原理そのものは小学生でも再現できるが、瞬間的に大電流を流すことによりローレンツ力も巨大になり、電機子は急加速されて弾丸を極超音速で射出する、というわけだ。防衛装備庁で研究されているレールガンの初速(砲口での速度)は、秒速2000m(マッハ6)に達する。比較として挙げておくと、既存の艦載砲(5インチ艦砲)の初速は秒速800mである。超高速で射出されるため、有効射程も極めて長く、ミサイル並みの150~200kmに達すると言われている。

試験艦「あすか」は、海上自衛隊の各種装備品をテストするための専用艦だ。後部のヘリ甲板にレールガンと、関連する白いコンテナが設置されている(写真/モリジュン @HNIEHupY4Nr6hRM)

「あすか」で何をしていたのか?

さて、防衛装備庁では2023年12月に「あすか」艦上で初の発射試験を実施したことを発表している。そのため、今回の「あすか」搭載は少なくとも2回目ということになるだろうか。今回目撃されたレールガンは、ヘリ甲板に複数の白いコンテナと一緒に設置されている。白いコンテナは地上試験でも見かけたものであり、電源または制御のためのものだろう。

左は海上自衛隊より公表された、今回のレールガンの写真。全体がカバーのようなもので覆われているが、わずかに姿を見せた砲身は以前よりテストされている砲(右)と同じ形状のようだ(写真左/海上自衛隊自衛艦隊、写真右/防衛装備庁)

日本のレールガン開発は2016年から「電磁加速システムの研究」としてスタートし、2022年からは「将来レールガンの研究」へと発展した。前者が基礎的な技術研究であったのに対して、後者は実用的な装備化に向けた取り組みであり、連射性能や弾丸の飛翔安定性といった具体的な研究に踏み込んでいる。「あすか」への搭載も、波で動揺する艦上での射撃など艦砲としての実用化に向けた試験のためだと思われる。

「あすか」艦上のレールガン。一般的な艦砲は砲の下に弾薬庫を持つが、今回のレールガンはヘリ甲板に直置きされている。一時的な試験だから…ということもあるが、レールガンは弾丸そのものが小さいため、従来ほどの規模の弾薬庫は必要ないかもしれない(写真/モリジュン @HNIEHupY4Nr6hRM)

今回の「あすか」搭載は、あくまで試験的なものであり、すぐに艦砲として実用化できるわけではないだろうが、レールガンの開発が着実に進んでいることを感じさせる出来事だ。レールガンより射出される長射程・極超音速の運動エネルギー弾は、これまでに存在しないものであり、ゲームチェンジャーとなる可能性も秘めている。今後の開発の進展に期待したい。

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