7代目ダイハツ・ムーヴ誕生! スライドドア化と上質化で軽ハイトワゴンに新風、旧型とはこう違う!【ダイハツ ムーヴ新旧比較】

軽ハイトワゴンの代表格ダイハツ・ムーヴが2025年、ついにフルモデルチェンジを果たした。初代から数えて7代目となる本モデルは、スライドドアという武器を手に入れ、プラットフォーム、デザイン、安全装備のすべてを刷新、走り・実用性・デザインの三拍子を兼ね備えた“軽ハイトワゴンの完成形”として登場した。ここでは旧型ムーヴと比較しながら、従来のイメージを大きく覆すその内容に迫ってみよう。

■デザイン ー 機能性と洗練を両立した新世代ルック

新型ムーヴ 外観

新型ムーヴ
新型ムーヴ

旧型ムーヴ(MC後) 外観

旧型ムーヴ(MC後)
旧型ムーヴ(MC後)

旧型ムーヴ カスタム(MC後) 外観

旧型ムーヴ カスタム(MC後)
旧型ムーヴ カスタム(MC後)

(参考) ムーヴ キャンバス 外観

ムーヴ キャンバス
ムーヴ キャンバス

新型ムーヴのデザインは、直線基調の精悍なスタイリングが印象的だ。フロントマスクは厚みのあるバンパーとシャープなLEDヘッドランプによって凛とした存在感を放ち、軽自動車の枠を超えた高級感すら漂わせる。リヤビューも初代からの伝統(?)の縦型テールランプを採用するなど、後ろ姿にまで気が配られている。

新型ムーヴ 内装

旧型ムーヴ(MC後) 内装

(参考)ムーヴ キャンバス 内装

内装も水平基調のインパネで広さと見晴らしを重視。加えて、ピアノブラック調やマット素材などを組み合わせた質感の高い仕上げは、旧型ムーヴのシンプルな造形と比べて明確な上質化が図られている。

また、むしろ同じムーヴ・ファミリーであるムーヴキャンバスの方がパッケージングは近しいものの方向性は異なり、あちらがレトロで柔らかな親しみやすさを持つのに対し、新型ムーヴは未来志向の都会派といった趣で、明確なキャラクター分けがなされている。

■サイズとパッケージング ー スライドドア採用でファミリー層に訴求

新型ムーヴ 各部寸法

旧型ムーヴ 各部寸法

(参考)ムーヴ キャンバス 各部寸法

【主要寸法比較表】

モデル全長×全幅×全高(mm)ホイールベース(mm) 室内長×室内幅×室内高(mm)
新型ムーヴ(7代目) 3395×1475×165524602140×1335×1270
旧型ムーヴ(6代目) 3395×1475×163024552080×1320×1280
ムーヴキャンバス3395×1475×165524602180×1345×1275
※数値は参考値。グレードにより若干異なる場合があります。

新型ムーヴは全長、全幅、全高およびホイールベースがムーヴキャンバスと同一寸法となっている点に注目したい。これらは旧型よりも若干拡大されており、居住性と安定性が強化されていることを示す。

新型ムーヴの最大のトピックは、従来のヒンジ式ドアから両側スライドドアへと刷新された点だ。これもムーヴキャンバスと同様だが、実は先の全高やホイールベースの話も、ムーヴキャンバスと共通の、2019年の4代目タント(LA650S/LA660S型)から導入されたDNGAプラットフォームを採用したことで実現されていると考えると合点がいく。大雑把に言えば、新型ムーヴはムーヴキャンバスの実質的な姉妹車なのだ(ちなみにLA850S/860Sという新型ムーヴの型式番号は、現行の2代目ムーヴキャンバスと同一である)。これらにより、新型ムーヴは旧型に対し、ファミリー層に向けた実用性を大きく高めることとなっている。

特に、全長と全幅は変わらないものの、ホイールベースが旧型よりわずか5mm延長されただけにもかかわらず、室内長+60mm、室内幅+15mmと、室内空間の拡張に一役買っている。これにより、後席の足元スペースや横方向の余裕が増し、大人4人でフル乗車した際でも圧迫感は旧型より少なくなっている。もっとも実質的な姉妹車と言えるムーヴキャンバスと比べると、室内長-40mm、室内幅-10mm、室内高-5mmとなっており、ミニバン的キャラクターのムーヴキャンバスとの差別化が見られる点だろう。

新型ムーヴ ドア全開
旧型ムーヴ ドア全開

スライドドアは、たとえば狭い立体駐車場での乗り降りや、チャイルドシートの着脱時などで大きなメリットがあり、実生活に直結した利便性をもたらすことは言うまでもない。これはムーヴキャンバスにも共通する特徴だが、キャンバスがデザインやキャラクター性を前面に押し出したモデルであるのに対し、新型ムーヴはより汎用性の高い“家族の主力車”としての機能性にフォーカスしているようだ。

つまり、単なるフルモデルチェンジではなく、今までムーヴが築き上げてきたパッケージングのフィロソフィを超えて、「生活そのものを支えるクルマ」という方向へと大きくシフトしてきたのが、今回の新型ムーヴなのだと言えるかもしれない。

■パワートレインと走行性能 ー D-CVT+DNGAで快適さと俊敏さを両立

ダイハツ 第4世代 KFエンジン

新型ムーヴに搭載されるエンジンは、自然吸気仕様の658cc 直列3気筒 KF型エンジンで、最高出力38kW(52ps)/6900rpm、最大トルク60Nm(6.1kgm)/3600rpmを発揮する。これは旧型と基本的に同系統のユニットだが、こちらは2019年から採用になった第4世代版だ。吸排気系の見直しや制御ロジックの最適化が施され、よりスムーズな加速感と静粛性が実現されており、世界初の半球型燃焼室が採用されているほか、高EGR下での燃焼を改善するために導入した量産エンジンでは日本初となるマルチスパーク(複数回点火)が採用されているなどの進化版エンジンである。

ダイハツ D-CVT

トランスミッションは、ダイハツ独自のD-CVT(デュアルモードCVT)を採用。世界初のスプリットギヤを採用し、ベルト+ギヤの2系統の動力伝達を組み合わせたこの機構は、発進~中速域でのトルク感と高速域での燃費効率の両立に優れており、CVT特有のラバーバンドフィールを低減。新型ムーヴと同じ構成のムーヴキャンバスと旧型ムーヴとの試乗比較から言えば、特に坂道発進や合流時の加速では、旧型よりもアクセルに対する応答が俊敏になっていると言える。

ダイハツ DNGAプラットフォーム (画像はタント)
ダイハツ DNGAプラットフォーム (画像はタント)

また、新型はDNGA(Daihatsu New Global Architecture)に基づくプラットフォームを採用しており、車体剛性と足まわり剛性の向上に加え、重量配分や重心位置の最適化が図られている。これにより、街乗りでは軽やかなステアフィールと取り回しの良さが、郊外や高速道路では直進安定性と乗り心地の向上が感じられることだろう。

旧型搭載 KFエンジン
旧型プラットフォーム

旧型ムーヴも同様にKF型エンジンを搭載していたが、エンジンも組み合わされるCVTも旧世代のものであり、加速フィールや静粛性、燃費性能で新型には一歩譲る。また、ムーヴキャンバスも同じエンジン・D-CVTを採用しているが、新型ムーヴは車重が軽めなぶん、一段軽快でキビキビした走りが実現されているはずだ。

■安全装備 ー 軽自動車トップクラスの先進性

安全装備についても、新型ムーヴは抜かりがない。全車に標準装備される“スマートアシスト”は、衝突回避支援ブレーキ、誤発進抑制、車線逸脱抑制、さらには全車速対応のアダプティブクルーズコントロールまで備え、軽自動車とは思えない充実ぶりだ。

旧型ムーヴにも後期以降は“スマートアシストIII”が搭載されていたが、機能の範囲や精度は新型に水をあけられる。ムーヴキャンバスも同様の装備を持つが、新型ムーヴではさらに細かな制御や制動性能に磨きがかけられているはずだ。

■コストパフォーマンス ー 高価格に見合う高機能

モデル新車価格帯(消費税込)
新型ムーヴ135.85~202.4万円
旧型ムーヴ113.52~178.2万円(2021年9月現在)

新型ムーヴの価格は135.85万円~202.4万円(消費税込)と、旧型ムーヴに対しても軽自動車としても、やや高額に見えるかもしれない。しかし、スライドドア、上質な内装、DNGAによる走行性能、そして軽自動車トップクラスの安全装備をすべて備えていることを考えれば、十分以上の価値があるだろう。特に子育て世代や通勤・買い物で日常的に車を使う人にとっては、快適で安全な日常の足として、新型ムーヴは購入候補に入れて良い一台だろう。

■総括 ー ムーヴは“実用の道具”から“上質な移動空間”へ

新型ムーヴ

7代目となった新型ムーヴは、単なるフルモデルチェンジ・モデルではない。パッケージング、安全性、走行性能、デザインといったあらゆる面で現代のニーズに対応し、“実用の道具”から脱却して、まさに“上質な移動空間”へと変貌を遂げた一台だと言えるだろう。

ムーヴ キャンバス

その出自に深くかかわりを持つと思われるムーヴキャンバスが、“かわいさと便利さ”を体現した姉妹車なら、新型ムーヴは“端正さと知性”を追求した正統派。日常の足に、ちょっとだけ特別な満足感を求めるなら、今、選ぶべき軽の一台に、この新型ムーヴを入れても良いかもしれない。

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