使える3列シートが○。アルヴェルの卒業生にもピッタリ!?【ジープ・グランドチェロキーL】

ジープ・グランドチェロキーL
ジープ・グランドチェロキーL
絶好調のジープが勢いに乗ってフラッグシップのグランドチェロキーを10年ぶりにフルモデルチェンジ。同モデルで初めてサードシートを採用したことが話題だ。大柄なボディのおかげもあって、室内はゆとりたっぷり。アルファード/ヴェルファイアといった高級ミニバンでは飽き足らなくなった人にも注目していただきたい、アメリカンラグジュアリーSUVだ。

TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)
PHOTO●Motor-Fan.jp

大人気ジープのフラッグシップが10年ぶりにフルモデルチェンジ

周知の通り、20世紀に登場した量産型四輪駆動車の祖はJeep(ジープ)であり、同時に4WD市場を牽引してきたのもまたジープだ。SUVという言葉がまだそれほど定着しておらず、どちらかというライトクロカンと言った方が日本では通じる20世紀末に、ジープから高級SUVとして登場したのが「グランドチェロキー」だ。

ジープ・グランドチェロキーL
5代目となる現行型は標準仕様のグランドチェロキー、ロングホイールベース仕様で3列シートを備えるグランドチェロキーLがラインナップするが、日本に導入されているのは後者のみ。

グラチェロの愛称で親しまれることになるこのモデルは、チェロキーの兄貴分として誕生した。ジープブランドには「コマンチ」というピックアップトラックがあり、そのSUV版が「チェロキー」、さらにその豪華版が「グランドチェロキー」という関係になる。

ジープ・グランドチェロキーL
グランドチェロキーLのグレードは2つ。2列目がベンチシートで7人乗りの「リミテッド(788万円)」と、今回の試乗車である2列目がキャプテンシートで6人乗りの「サミットリザーブ(999万円)」がそろう。

当初はチェロキーよりもやや大ぶりのコンパクトSUV(米国のフルサイズに対して)として登場したが、代を重ねるごとに大型化。初代が全長4488mm(前期モデル)だったのに対して、5代目となる現行型は520mmという堂々たる体躯になった。もはやコンパクトと呼べるサイズではなく、アメリカではミドルサイズSUVのカテゴリーになる。

ジープ・グランドチェロキーL
グランドチェロキーLのボディサイズは全長×全幅×全高:5200×1980×1795mm、ホイールベース:3090mm。

ちなみにプラットフォームは、同じFCAのアルファロメオと共有している。ステルヴィオと基本は同じプラットフォームだが、グランドチェロキーLのものはこれをストレッチして使っているという。

デザインもまた、大きく様変わりした。4代目までは初代のイメージが残っていたものの、今モデルは1963年に登場した初代ワゴニアのエクステリアをインスパイアしてデザインされたという。言われると鋭角的に下部が下がっているグリルや、倒れ気味のAピラーが初代ワゴニアを彷彿させる。ちなみに本国には、顔はグランドチェロキー、ボディ後部をストレッチしたようなフルサイズSUVが「グランドワゴニア」として販売されている。

ジープ・グランドチェロキーL
逆スラントノーズはラグジュアリーSUVの草分け的存在のワゴニアをモチーフにしたものだ。

レトロフューチャー的なデザインは、ジープ好きには好意的に受け入れられるであろうもので、同ブランドのアイデンティティであるセブンスロットやヘッドライト形状は非常に美しい。サイドラインやリアデザインも、ジープらしさがしっかりと出ている秀作と言えるだろう。

ジープ・グランドチェロキーL
セブンスロットグリルがジープの一族であることを主張。冷却状況に応じて開口部のフラップを自動制御するアクティブグリルシャッターも採用する。
ジープ・グランドチェロキーL
ボディカラーは4色。サミットリザーブのパルティックグレーメタリックC/Cのみ、ブラックのルーフが標準となる。

インテリアも新しいものだが、初代から受け継いできたグラチェロらしさに溢れている。ブラックとベージュのツートーンカラーは同モデルでは定番だし、液晶ながらメーターやスイッチにも、歴代モデルが受け継いできたDANが感じられる。

ジープ・グランドチェロキーL
サミットリザーブのパルティックグレーメタリックC/Cでのみ、インテリアカラーがテュペロブラウン/ブラックとなる。
ジープ・グランドチェロキーL
サミットリザーブのオーディオはマッキントッシュ。18基のスピーカーと1基のサブウーハーで構成される。

おもしろいのは、駆動系をコントロールするインターフェイスだ。まず、ATのセレクトだが、ロータリースイッチにて行う。グランドチェロキーLの4WDシステムには、路面状況に合わせたトラクションをセレクトする「セレクテレインシステム」が搭載されているため、初めはそのスイッチかと思った。セレクテレインのスイッチは、ロータリースイッチの左脇にあり、路面をセレクトするとインジケーターが変化するようになっている。

ジープ・グランドチェロキーL
ジープでは初となるロータリー式のシフト。左には車両設定を切り替えるセレクテレイン、右には車高調整のレバーが備わる。

一瞬戸惑うATセレクターだが、一度使うと実に塩梅がいい。昨今は国内外問わず分かりにくいATセレクターが多い中で、操作しやすく、ミッションの状態も明瞭に理解できる。Uターンなどで前進後退を繰り返さなければならない時など、スムーズに操作することができる。

クオドラトラックII・4×4システムは、ワゴニア系では伝統的なフルタイム4WDだ。余談だが、市販量産車で初めてフルタイム4WDを採用したのは、初代ワゴニアである。のそれは、当然その時代のものとは比べものにならないほど進化しているが、2WDモードがないのは血統ということになる。通常は前後輪の差動を電子制御でコントロールするアクティブトルクスプリットタイプのフルタイム4WDで走行し、「4WD LOW」を選択すると、センターデフのビスカスカップリングが差動吸収を停止して“直結”状態の4WDになる。

ジープ・グランドチェロキーL
車両の状況は10.1インチのセンターディスプレイで確認可能。ちなみにナビゲーションシステムはアイシン製を採用する。

パワーユニットは3.6L V6ガソリンのみだが、本国では5.7L V8ガソリンやPHEVもラインナップされている。今後、PHEVが日本に導入される可能性もあるかもしれない。エンジンは非常にジェントリーなフィーリングで、同時に大きなグランドチェロキーLのボディを動かすのに十分なパフォーマンスを持っている。この3.6L V6ユニットは、ジープブランドの基幹エンジンで、ラングラーなどにも搭載されている。決して大排気量ではないが、8速ATを使っているため非常にスムーズに加速し、しかも静粛性が高い。

ジープ・グランドチェロキーL
3.6L V6エンジンは286ps&344Nmを発生する。トランスミッションは8AT。

乗り心地も実にいい。同車はクォドラリフトと呼ばれるエアサスペンションを採用しており、そのセッティングは絶妙のひと言。エアサスの想像するようなピッチやロールはなく、路面のハーシュネスをきっちりと吸収する。さらに、カーブが連続するような道でもキビキビと曲がり、5.2mという巨軀をまったく感じさせない。

ジープ・グランドチェロキーL
プラットフォームはインターナショナルでも、乗り心地はジープらしいもの。のんびりとクルージングしたくなる鷹揚さが心地良い。

このサスペンションは車高調整機能も備えており、最大で609.6mmという地上高を確保することができる。これはオフロードを走行する時に使うモードだが、これだけのサイズのSUVでも本格的な悪路走破性を備えているところが、ジープブランドの矜持といったところだろう。

さて、グランドチェロキーLを語るときに、居住性についても触れないわけにはいかない。同車は3列シートを備えており、2列目のシートレイアウトによって6人乗りと7人乗りが用意される。3列シートはエマージェンシーではなく、大人でも快適に座ることができる。身長の条件は出てくるが、しっかりと作ってあるいいシートだ。

セカンドシートは前述の通り、センター部がシート、もしくはアームレストの違いで乗車定員が異なる。セカンドシートにはドリンクホルダーを装備しているほか、左右独立してコントロールできるエアコンのインターフェイスも備える。USBのAとCの端子もそれぞれ2口付いているので、ロングドライブでもガジェット充電の心配はいらない。

ジープ・グランドチェロキーL
サミットリザーブはパレルモレザーシートが標準。キルト風の処理が美しい。フロントシートにはヒーター機能とベンチレーテッド機能のほか、マッサージ機能もついてくる。
ジープ・グランドチェロキーL
身長180cmの乗員が座ると、ポジションはご覧の通り。
ジープ・グランドチェロキーL
セカンドシートはリミテッドがベンチタイプの3人掛け、サミットリザーブがキャプテンタイプの2人掛けとなる。
ジープ・グランドチェロキーL
サミットリザーブのリアエアコンは左右独立して調整可能。USBの充電ポート、12Vアクセサリー電源も用意される。
ジープ・グランドチェロキーL
足元・頭上ともに余裕たっぷりな2列目。
ジープ・グランドチェロキーL
サードシートもおざなりではなくしっかりとした仕立てとなっている。
ジープ・グランドチェロキーL
180cmの乗員でも長時間座ることができ、実用に耐えうるのはうれしい。

安全装備も充実しているが、特筆すべきはジープブランドで初めてナイトビジョンが採用されていることだ。もちろん、ACCも装備しているので、交通量の多い高速道路でも安心してドライブすることができる。

初め見た時は「デカい!」と思ったグランドチェロキーLだが、実際に運転してみるとその大きさを感じさせない各部のチューニングがなされている。日常的な駐車場所など、日本のユーザーには敷居の高さは残るが、例えば脱ミニバンユーザーなどにはうってつけと言えるだろう。788万円というプライスは少々高めに映るが、このラグジュアリーな空間とフィーリングを考えれば妥当と言える。

昨今はアメリカ車もトラブルが少なく、ジープはディーラー網も充実しているのでアフターケアもぬかりない。アメリアの象徴であるジープを、杞憂なく楽しむことができるだろう。大らか、かつスポーティなグランドチェロキーL。一度所有する価値は、十分にある。

ジープ・グランドチェロキーL
3列使用時のラゲージルーム。電動テールゲートはサミットリザーブのみハンズフリー機能が備わる。
ジープ・グランドチェロキーL
サードシートの背もたれを倒すと荷室をフラットに拡大できる。
ジープ・グランドチェロキーL
セカンドシートの背もたれもすっきりと前倒し可能。格納作業はセカンドシートもサードシートも荷室のスイッチでワンタッチだ。

ジープ・グランドチェロキーL サミットリザーブ 主要諸元

■ボディサイズ
全長×全幅×全高:5200×1980×1795mm
ホイールベース:3090mm
車両重量:2250kg
乗車定員:6名
燃料タンク容量:87L(無鉛レギュラー)
■エンジン
形式:水冷V型c6気筒OHV
排気量:3604cc
ボア×ストローク:96.0×83.0mm
最高出力:210kW(286ps)/6400rpm
最大トルク:344Nm/4000rpm
燃料供給方式:電子式燃料噴射装置
■駆動系
トランスミッション:8AT
駆動方式:4WD
■シャシー系
サスペンション形式:Fマルチリンク・Rマルチリンク
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク・Rベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:275/45R21
■価格
999万円

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著者プロフィール

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山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…