清水浩の「19世紀の技術を使い続けるのは、もうやめよう」 第4回

脱・温暖化その手法 第4回 —CO₂がなぜ温暖化を起こすのか? 原因は赤外線にあったー

温暖化の原因は、未だに19世紀の技術を使い続けている現代社会に問題があるという清水浩氏。清水氏はかつて慶應大学教授として、8輪のスーパーEVセダン"Eliica"(エリーカ)などを開発した人物。ここでは、毎週日曜日にEVの権威である清水氏に、これまでの経験、そして現在展開しているEV事業から見える「今」から理想とする社会へのヒントを綴っていただこう。

電磁波がもたらす影響は波長が短いほど大きい

電磁波という言葉は定義無しに使うことにしよう。電磁波の性質は波長で決まる。波長が長い方から長波、中波、短波となって、さらに短くなって赤外線、可視光線、紫外線、さらにずっと短くなってX線になる。電磁波の速度は光速と同じで1秒間に30万kmである。光の速さは1秒間に地球を7回り半という言葉もよく使われてきた。7回り半が30万kmに相当する。

電磁波はその波長の長さによって分類される。また波長が短い(図では左側)
ほどエネルギーが強い。(図版出典:環境省ウエブサイト 放射線による健康
影響等に関する統一的な基礎資料 令和元年度版 第1章 放射線の基礎知識 
より env.go.jp)

電磁波は波のような性質を持つが、粒のような性質も持つ。粒に例えるとすると、同じ大きさでも波長が短くなるにしたがって重さが大きくなると考えると理解しやすい。ピンポン玉は直径が44㎜、重さが2.4gである。ゴルフボールはピンポン玉と直径はほぼ同じ42.67㎜だが、重さは45.93gである。もし、44㎜の直径の鉄球であれば、その比重が7.9なので重さは350gである。

これらの球が人にぶつかったとすると、ピンポン玉でけがをすることは考えられない。これは可視光や赤外線に相当すると考えよう。ゴルフボールは当たれば大けがはないが、痛い。これは紫外線と考えよう。紫外線は体にはよくない。鉄にあたったら相当に痛いだけでなく、大けがにもつながる。これがX線だと考えると、これがどんなに危険か理解しやすい。そのために、レントゲンなどでのX線の運用方法は慎重を極める必要がある。

太陽からやってくるエネルギーの大半は可視光線だが、赤外線、紫外線も一部含まれている。物体はその温度に応じて、電磁波を放出する。太陽光はほとんどが可視光だというのは太陽表面が約6,000℃という高温であるからである。

赤外線は波長が長いから安全? いや、問題はその量が気温を左右する

太陽(右・赤線)と地球(左・青線)の熱放射と波長の強度。
横軸に波長を取ると高熱の太陽は波長が短い。そのため多くは
可視光の範囲に入る。可視光より短い範囲は紫外線。長い範囲
は赤外線の領域。この赤外線部分が地球の温度を司り、太陽が
温度を高め地球が温度を放出する(マイナス表記)。二酸化炭
素は放出する熱を溜め込むが、増えると温暖化に進む。(図版
資料:文部科学省ウエブサイト 「持続可能な光の世紀」に向
けて 第1章 光と地球環境より mext.go.jp)

太陽光より低い温度の物体からも電磁波は放出されている。それは温度によって波長は変わるが、地球の表面や、人の体の表面からも赤外線の形で放出されている。太陽からの光を地球が受けると雲で一部反射され、地球表面に達する。その光は地球表面で反射するか、表面で吸収される。吸収された光は熱として地表面を暖める。もし地球が光を吸収するだけだと、表面はどんどん熱くなるが、地球は表面温度に対応する波長の赤外線を宇宙空間に放出する。こうして地球は太陽光を受け熱を吸収し温まるが、自らが放出する赤外線によって平均気温が保たれてきた。

現在の地球の大気には約0.3%のCO2が含まれている。CO2は地球から放出される赤外線の一部を吸収して、自らが暖まるという性質を持つ。暖まったCO2は周りの空気分子に熱を伝えるとともに自らも赤外線を放出する。

もし大気中のCO2の量が変わらなければ、地球の平均気温は約15℃で一定に保たれていたのだが、化石燃料の大量消費で大気中のCO2が増えて来た。これが温暖化である。

ところで、赤外線は人間の目には見えない電磁波である。これを肌で感じてもらうには、手のひらを大きく拡げて自分の頬に数㎜の間隔で近づけてみて欲しい。すると、どう感じるか。暖かいと感じる。どこがと言うと、頬も手のひらも暖かいと感じる筈だ。これは手から放出された赤外線を頬が受けて暖かいと感じ、頬からの赤外線は手のひらで受けることで暖かいと感じることによるものだ。

出典:清水浩著 温暖化防止のために一科学者からアル・ゴア氏
への提言 ランダムハウス講談社(2007年)

地球は太陽から光を受けることで様々な成長を果たしてきたが、赤外線の放出という作用によって温度を下げてきた。その調整役となるのがCO2だ。だからこそCO2の量を保つことは、人類の住む地球にとって極めて重要なのである。

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著者プロフィール

清水 浩 近影

清水 浩

1947年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部博士課程修了後、国立環境研究所(旧国立公害研究所)に入る。8…