2022年のWRCの見所 新型ラリー1による選手権争いはどうなる? GRヤリス/i20/プーマ

PHOTO:Toyota Gazoo Racing WRT
2022年11月10〜13日にかけて開催される、WRC(世界ラリー選手権)ラリージャパン。かつて北海道のグラベル(未舗装路)で行なわれてきた日本のWRCイベントが、愛知・岐阜のターマック(舗装路)に舞台変えて、12年ぶりに帰ってくる。

+αの電動パワーをいかに上手く使うか

開幕戦モンテカルロ・ラリーを戦ったヒョンデi20 N Rally 1。ドライバーはティエリー・ヌービル PHOTO:Hyundai Motorsport GmbH

当初、2020年のWRCカレンダー入りを果たした新生ラリージャパンだったが、新型コロナウイルス感染拡大により、2年間の開催中止を余儀なくされたのはご存知のとおり。そして、この2年間でWRCは大きく姿を変えた。実に1997年以来となる新規マシンレギュレーションが導入されたのだ。

2022年シーズン開幕戦ラリーモンテカルロから、市販車をベースに改造が施されたワールド・ラリーカー(WRカー)に代わって、WRC史上初のハイブリッドラリーカー「ラリー1(Rally 1)」がデビュー。ラリー1規程では量産車をベースとする必要はないため、ボディサイズを拡大・縮小することが可能となっている。

参戦メーカーがラインアップから自由に車種を選べるようになったことで、トヨタはスポーツモデルの「GRヤリス」、ヒョンデは従来通りのコンパクトハッチ「i20」、フォード(Mスポーツ)は売れ筋のコンパクトSUVのプーマを選択している。

2021年まで使用されていた旧WRカーは、エアロダイナミクスを徹底的に追求した結果、フロントのカナード類やリヤの大型デュフューザーなど、迫力のアピアランスを特徴としていた。しかし、ラリー1規程では、補修コストがかかる繊細な空力パーツはすべて禁止。それでも拡大された前後フェンダーや大型リヤウイングなど、トップカテゴリーに値する十分な迫力を備えている。

ラリー1規程における最大の変更点がハイブリッドパワートレインの採用だ。従来の1.6リッターターボに、各チーム共通のハイブリッドパワートレーンが組み合わせられた。最高出力100kWを発揮するモータージェネレーターとバッテリーはリヤに配置され、指定されたリエゾンセクションは電気のみで走行する。さらに、スペシャルステージではブースト機能を使うことも可能。この+αの電動パワーをいかに上手く使うかが、勝利への鍵となっている。

この新型ラリー1による選手権争いに目を向けると、こちらも各チームの戦力図が大きく動いた。昨年のドライバーズチャンピオンであり、8度の王座を手にしてきたセバスチャン・オジエが、フル参戦から撤退したのである。この10年圧倒的な強さを誇示してきたオジエはトヨタからスポット参戦となるため、これまで以上に選手権争いが白熱化するのは必須だろう。

同じくモンテカルロ・ラリーのプーマ。

開幕戦モンテカルロは、フォードからスポット参戦した、かつてのWRC王者セバスチャン・ローブが優勝。第2戦スウェーデンはトヨタの若手カッレ・ロバンペラが制した。また、トヨタの4台目をドライブする勝田貴元は、スウェーデンで表彰台まであと一歩となる4位入賞。彼は昨年のサファリラリーでは2位表彰台を獲得しており、すでに優勝にも手が届く実力を身につけている。

この後、クロアチア、ケニア、フィンランド、オーストラリアなど、世界各地を転戦する2022年シーズンのWRC。待ちに待った最終戦ラリージャパンにおいて、最新のハイブリッドラリーカーを駆った勝田貴元が、世界のトップドライバーと優勝争いを繰り広げる可能性はけして小さくないのだ。

第2戦スウェディッシュラリーで第4位となった勝田勝元選手。PHOTO: Toyota Gazoo Racing WRT

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