迫力のパフォーマンスとスタイリングで復活したスープラの使い勝手を検証する!

トヨタ・スープラの使い勝手を徹底チェック!

スポーツカーづくりのこだわりを実感
新世代のスープラに触れて強く感じるのは、背景にあるスポーツカーづくりの思想だ。例えば後席がなく荷室も広げないなど割り切りのパッケージングで運動性能を高めるとともに、低い着座姿勢など守るべき部分は死守。運転中でも動かしやすいスイッチなど、インターフェイスも奥深い。

REPORT●工藤貴宏(KUDO Takahiro
ASSISTANT●大須賀あみ(OSUGA Ami)(身長163㎝)
PHOTO●中野幸次(NAKANO Koji)

〈取材車のプロフィール〉スープラ SZ

ボディカラー:ライトニングイエロー
インテリアカラー:ブラック

※撮影車両はプロトタイプであり、販売中の「SZ」 にライトニングイエローの設定はありません。
また一部のカットは別グレードの車両を撮影しています。

〈最新のインターフェイスを搭載〉ナビなどインフォテイメント系は、コマンダーによる遠隔操作を前提にしたインターフェイスを採用。ダイヤルの上面はタッチパッドになっていて、ナビの目的地などを手書き文字で入力することもできる。
〈トヨタ車だがウインカーは左〉トヨタ車ながら輸入車を感じさせるのがウインカーレバー。日本で一般的な右側ではなく、左側にある。開発責任者は「右に変更するコストは高く、それを行なうよりは車両価格を下げることを選んだ」という。右か左かは慣れの問題で、オーナーになればすぐに馴染むだろう。

〈運転席まわり〉フル液晶のメーターが多くの情報をドライバーに伝える

ドライバーを包み込む意匠だった旧80型に対して、新型は水平基調へと変化。囲まれ感が控えめになる一方で、適度な開放感を得ている。空調などセンターパネルのスイッチにしっかりと手が届く距離にレイアウトされていることからも、機能性を感じる設計だ。
水温計と燃料計以外はTFT液晶パネルとして先進感を持たせつつ、表示自体はアナログ的なデザインの大型タコメーターを中心とした伝統的なスタイルを貫く。右側はマルチディスプレイで、写真はオーディオ表示。車両情報やナビ案内などにも切り替えられる。

右側のレバーはワイパースイッチ。左側はウインカーのほかにドライブ情報の切り替え&リセット、そしてオートマチックハイビームのオン/オフも備わる。

ステアリングスイッチは右がオーディオ関係と音声入力、そしてハンズフリー通話。左はクルーズコントロール(全車速追従機能付き)の操作スイッチになっている。

シフトのセレクトレバーは操作後に元の位置に戻る電子式。Pへはボタンで切り替える。マニュアルモード時は、前(奥)へ倒してシフトダウンする少数派だ。
ナビ、オーディオ、そしてディスプレイや車両設定の操作を行なうコマンダー。ダイヤルの上面はタッチパッドだ。
セレクトレバー後方に走行モード切り替えや電動パーキングブレーキのスイッチが並ぶ。ここは走行中も押しやすい位置だ。
スターターは全車ともプッシュボタン式。運転席の向かって左側に組み込まれている。
昨今の新型車としては大きめのパドルを標準装備。スポークに固定されていて、ステアリングと一緒にまわる。
インパネ右端にあるヘッドライトスイッチは「AUTO」を前提にしたデザイン。パーキングライト機能付き。
運転席足元のボンネットオープナーは、レバーを2回引くことでボンネットが開く仕掛け。
「SZ」のシート調整はマニュアルタイプ。リクライニングはダイヤルではなくレバー式だ。
アクセルペダルは大型で、支点を下にしたオルガン式。フットレストも大型でしっかり踏ん張ることができる。

車両の状況を素早く掴めるインフォメーションが充実

走行制御もメーター内に表示される。「TractionMode」は、TRC、VSCの介入を抑え、ドライバーの思い通りの走りを実現しやすくする。
ドアやテールゲートが開いているときはグラフィックで表示。開いている箇所は赤く示されるので一目瞭然だ。
音声入力時はマイクのアイコンが現れる。車両の機能だけでなく、接続したスマホのボイスコントロールも可能だ。

〈居住性&乗降性〉スポーツカーを実感する低い着座位置が乗員を迎える

座った瞬間に驚くのが着座位置の低さで、ローポジション好きの筆者でも最下部は低過ぎだと感じるほど(上下調整幅は広くて好みに合わせられる)。頭上には十分なクリアランスがあり、ヘルメットを被っても問題ない設計なのだと実感。シートは脇腹を中心にサイドサポートする形状で、「RZ」と「SZ-R」はサイドサポートまで調整できる。

シート高:450-480mm ステップ高:390-450mm

低い着座位置ゆえに、乗り込む際は沈み込む感覚が強い。加えて極太のサイドシルのため足先の軌跡も大きくなるが、そのサイドシルに片手をついて(運転席ではさらに左手でハンドルを持ち)体重を支えるのがスマートに乗り降りするコツだ。

水平基調かつ上面を低めにしたダッシュボードにより、助手席の前は意外に視界が開けていて閉塞感は少ない。また、足元にも十分な空間が用意されている。ちなみに、ヘッドレストはシートと一体化した固定式だ。

RZとSZ-Rの特別装備

「RZ」と「SZ-R」のシート表皮はアルカンターラ+本革で共通だが、レッドが選べるのは「RZ」のみ。
シート形状は全車共通。ヘッドレスト下は4点式シートベルトを通せそうに見えるが、穴が開いているのは中央部分だけだ。
「RZ」と「SZ-R」にはヘッドアップディスプレイが標準装備で、カラー表示式。速度やナビ情報、クルコン設定などを表示する。
運転席と助手席のシートヒーターは「RZ」と「SZ-R」に標準装備。空調コントロールパネルのスイッチで3段階に温度調整可能。
「RZ」と「SZ-R」のサスペンションはショックアブソーバー(ダンパー)の減衰力の設定まで任意で切り替えできる。
「SZ」のパネルがダークシルバー塗装なのに対し、「RZ」と「SZ-R」はカーボンを採用。レーシングカーをイメージさせる演出だ。
マニュアルシートの「SZ」に対し、「RZ」と「SZ-R」は電動調整式。8ウェイ+ランバー&サイドサポート調整も可能だ。
ペダルレイアウトは全車共通だが「RZ」ではシルバーの装飾が加わった仕様となる。ブレーキペダルの表面は滑りにくい仕上げ。

〈ナビ・AV・空調〉ディスプレイは横長8.8インチタッチパネルでの操作も可能

HDD式のナビゲーションシステムを全車に標準装備。画面はかなり横長で、地図を全面に表示することもできるが、左右で分割して多くの情報を表示することを前提に考えられている。左右の画面は独立して好きな表示をセレクトでき、写真は左がナビで右側はドライブ情報。右側にはVICSによる渋滞マップや高速道路案内なども表示可能だ。
追突被害軽減ブレーキなど先進安全運転支援システムの作動状況確認や設定などもディスプレイを使って行なえる。グラフィックを添えているので、設定状況を把握しやすい。
「スポーツ表示」として、エンジンの出力とトルクを確認できる。バーグラフと数字がリニアに変化するものだ。走行中にチェックするためというよりは、遊び心の演出か。
走行モードはノーマルと「SPORT」があり、その上で「SPORT」には、各要素の設定を好みにあわせて組み立てられる「INDIVIDUAL」も用意されている。
「INDIVIDUAL」で切り替えられる項目は「ステアリング」の重さ、「エンジン」の反応、そして「シフト」のタイミング。「RZ」と「SZ-R」はサスペンションの硬さも変更できる。
エンジンオイルの量も車両チェック項目に含まれており、ディスプレイで確認可能。オイルレベルが規定以下になるとディスプレイに車両メッセージが表示される機能も備わる。
タイヤ(ホイール)に空気圧センサーが組み込まれ、電波を使って車両がその情報をキャッチ。ディスプレイに四輪それぞれの空気圧を表示し、簡単に確認できる機能も搭載する。
通信ユニットも標準搭載。天気予報やニュースなどの情報が見られるほか、Google検索からの目的地設定も可能。
カーナビの目的地設定は、手書き文字入力でも可能。入力方法はタッチパッドと画面タッチの2通りに対応する。
カラーバックモニターはハンドルに連動した進路予測も表示される。後方の障害物に反応する緊急ブレーキも全車に搭載される。
トランスミッションは、エンジンの高回転を保つシフトタイミングや、変速レスポンスを高める制御も設定できる。
エアコンは左右独立温度調整式で、温度設定をダイヤル式とすることで操作性を高めている。その上にあるのは、左端がオーディオソース切替、オン/オフ&ボリューム、そして交通情報。数字が書いてあるのは登録した機能を呼び出せるプログラムボタンだ。
センタートレイにはDC12VのアクセサリーソケットとUSBインターフェイスを設置。USBは1.5Aで車両との通信も行なう。
「SZ」は4スピーカーのオーディオシステムを採用。「SZ-R」や「RZ」にはJBLと共同開発した12スピーカーのプレミアムサウンドシステムを標準搭載する。
リヤスピーカーはキャビン後方のフロア(左右サスタワー間)に組み込まれる。荷物との接触を防ぐためのガードもスマートにデザインされている。

〈室内の収納スペース〉必要なものを使いやすく配置する

❶ 小さいように見えるが、実際はティッシュボックスも収まる。リッドは運転席から届きやすいようレバーが右寄りで、施錠も可能。
❷ 欧州車で採用例が多い助手席足元のネットポケット。ふたつ折りのサイフやデジカメなど立体物もしっかりホールドする便利収納だ。
❸ センターコンソールの最前部は全車とも同形状のトレイが備わっており、ガムなどの小物を収納するのに便利なスペースとなっている。
❹ サンバイザー裏のチケットホルダーはベルト式で、サンバイザー自体は小さいものの、クレジットカード大のサイズのものまで挟める。
❺ ドアハンドルは底があるので小物入れとして使うことができる。収納スペースの数が少ないだけに、ちょっとしたポケットが役立つ。
❻ ドアポケットはかなりコンパクトで、他の多くのクルマとも異なりボトルホルダーは非採用だ。写真は小さな手帳を入れた状態。
❼「RZ」と「SZ-R」にはシートバックポケットも用意している。運転席と助手席の背中にあり、取扱説明書一式を収納するのにも重宝。
❽ ドリンクホルダーはセンターコンソールの後方に配置。アジャスターが付くので細缶もしっかりホールドしてくれる。
❾ センターコンソールの後方にあるポケット。ガムのボトルケースも置ける深さがあり、センターコンソールボックスの代わりも務める。

〈ラゲッジルーム〉290ℓのラゲッジルームには大型スーツケースも積載可能

電動開閉機構やクローザーなど重量増になる仕掛けは盛り込まれていない。開いたクローズグリップの位置は高いように見えるかもしれないが、実際には地上1840㎜と一般的なミニバンと同じ水準だ。背の低い女性は手が届きにくいかもしれない。
高さ:650mm 奥行き:780mm 最大奥行き:1270mm 最小幅:980mm

広さのイメージは「2人の小旅行」。機内持ち込みサイズのケースならゆったりふたつ、大型スーツケースでも1個は積める。前方の床が高くなっている部分(左右サスタワー間)を活用すればゴルフバッグも収まる。

トノボードはテールゲートを開くのに連動して跳ね上がる。床からボードまでの高さは390㎜と低いから、状況によってはボードを外して大きな荷物を積むのもアリだ。その際は、バーから後方までの奥行きが930㎜ある。
デザインやボディ剛性を優先して車体が設計されていることもあり、開口部は横幅が広くない。大きな荷物の積み下ろし時に気になるシーンも考えられる。
トランクリッドのオープナーは車両後方にはなく、運転席ドアにあるオープナー、もしくはリモコンキーなどを使って開く。
クローズグリップは左右両側に組み込まれているので、状況に合わせて使える。
壁面にはベルトがあり、標準装備されている救急セットなどをホールドできる。また、荷室内にはDC12Vアウトレットも用意しているのが便利。
右側の壁を外すと、車載工具などが搭載されている。「SZ-R」「RZ」はパンク修理キットを積むが、「SZ」はランフラットタイヤで対応。
後方の壁面に、緊急時に使う三角表示板が埋め込まれているのは機能的。とっさの時に、サッと取り出すことができるのがいい。

〈注目装備〉

〈照明付きバニティミラー〉スライド式のリッドを開けると連動して天井に組み込まれているルームランプが点灯。運転席にも助手席にも備わる。
〈助手席エアバッグ警告灯〉チャイルドシート装着時は助手席エアバックの作動を停止する必要がある。停止中はルームミラー脇のインジケーターに作動停止を表示する。
〈救急通報システム〉緊急時に、天井のSOS ボタンを押すことでオペレーターに接続。緊急車両の手配などを行なってくれる。エアバッグ展開時は自動で発報。
〈自動防眩機構ルームミラー〉夜間、後続車のヘッドライトが眩しくないように明るさを自動調整してくれる機能がルームミラーに組み込まれる。全車に標準採用だ。
〈助手席エアバッグキャンセラー〉助手席エアバッグの作動停止スイッチはダッシュボード側面に組み込まれる。ドアを開けた状態で、キーを差して切り替える。
〈ISO-FIX アンカー〉2シーターなのでチャイルドシートは助手席に装着することになる。そのため助手席にはISO-FIXチャイルドシートの装着金具も内蔵。
〈シートの後ろにカバンが置ける〉シートの前後位置によっては、その後ろに荷物を積載可能。助手席を前に出せば、大きなトートバッグなども置ける。

〈キーはトヨタエンブレム付き〉トヨタ車としては珍しい形状の非接触式キー。一番下のひし形マークは、長押しで一定時間ヘッドライトが点灯する。

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