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地を這うようなスタイリングが二代目NSXの真骨頂
多くの熱狂的なファンに愛され続けた初代NSXの跡を受け、2016年に肝煎りで登場した二代目NSXだが、2022年12月をもって生産終了することが決定。最終モデルとなるNSX Type Sが、昨年お披露目された。そのType Sは、世界限定350台。そのうち日本割り当てはわずか30台で、すでにその受注も終了している。今回、そんなNSX Type Sに触れることができたので、この国産車史に残る生粋のスーパースポーツカーを、今一度紹介して置くことにしよう。
二代目NSXは、2016年、長いインターバルを経て登場した。V6 3.5Lツインターボ+3モーターのハイブリッドスーパースポーツカーとして、初代NSXとはミッドシップレイアウトこそ踏襲するものの、現代的な、まったく新しい電動スーパースポーツカーとして登場したのである。北米オハイオ州に新設されたNSX専用工場で生産されることや、2370万円という車両価格など、スポーツカーとしてのパフォーマンス以外にも話題を呼ぶことが多かった。とくに2370万円の車両価格は国産車として類を見ない高価格であり、従来のホンダ車とはそもそも顧客層が異なるという事態にも至った。
大きく姿を変えた新生NSXはまさに、夢のスポーツカーともいえる存在だった。ディメンションは、全長4490mm、全幅1940mm、全高1215mm。車幅の広さと低さは尋常ではなく、欧州スーパースポーツカーの中に混じっても一歩も引けを取らない地を這うような迫力あるフォルムは、これまでの国産車にはないものだった。
パフォーマンスも圧倒的で、エンジンだけで507ps、56.1kgm。これに、フロント2基、リヤ1基のモーター出力が加わる。スポーツハイブリッド SH-4WDにより、有り余るパワーは余すところなく路面に伝えられた。トランスミッションは9速DCT、カーボンセラミックブレーキも用意される。左右前輪を個別に制御するモーターによるどこまでもグイグイと曲がっていく感覚は、これまでのスポーツカーにはないもので、新時代スーパースポーツカーの提案という意味でも大きな意義を果たした一台だった。
最終仕様「Type S」は日本割り当てわずかに30台
さて、日本限定30台と言われるType Sである。フロントフェイスは従来型と大きく異なるスタイリングが与えられた。本来これは、フェイスリフト版のNSXとして、継続生産される予定で開発が進められたものではないだろうか。フロントエンドはバンパー部分が大きく異なり、センターやサイドインテークに風を導くためのフィン形状がより大胆でシャープな造形に改められている。リヤに回れば、センターエグゾースト左右のディフューザーがより存在感を増しているのが分かる。専用カラーのカーボンマットグレー・メタリックの効果もあって、極めてレーシーで迫力を増したスタイリングだ。
インテリアでは、セミアニリンレザー×アルカンターラのシートが心地良く身体を包み込む。グローブボックスに施されたType Sロゴの刺繍は特別感を演出する。エンジンコンパートメントには、350台限定車のシリアルナンバーが刻印され、通常のNSXではブラック塗装となるエンジンセンターカバーはレッドに彩られる。
スポークの間から存在感を主張するのはカーボンセラミックブレーキディスクだ。フロント380φ、リヤ360φの大径で、標準ディスクに比べて23.5kgもの軽量化を果たしているという。
スポークの間から存在感を主張するのはカーボンセラミックブレーキディスクだ。フロント380φ、リヤ360φの大径で、標準ディスクに比べて23.5kgもの軽量化を果たしているという。
乗ることに緊張感を伴うクルマはたまにあるけれど、NSXはその筆頭だろう。特別な緊張感を味わいながら、ホンダ最高峰のポテンシャルを堪能する。30名のオーナーだけに許されたその権利がただただ羨ましい。オーダー受付を終了しているので注文は叶わないが、参考までに車両価格は税込2794万円である。