ホンダ・新型ステップワゴンの福祉車両体験:「だれもが、なにかを我慢することがない」クルマづくりに、開発者の本気と優しさを見た【ホンダ新型STEP WGN:福祉車両編】

標準装備される電動ウインチによって前から絶妙なテンションで引っぱられるため、不安なく気遣うこともなく身体を預けることができる。写真の体験車両は車いす仕様車(2列目乗車タイプ)。
クルマの使いかたは人それぞれで、それはもちろん福祉車両にも当てはまる。そんなクルマづくりは、正解がわからないからこそ “どこまで寄り添えるか ” がキモとなる。今回の試乗会/福祉車両体験では、新型ステップWGNのグランドコンセプトを「#素敵な暮らし」としたホンダの、本気と優しさを感じることができた。

TEXT:生江凪子(Naco NAMAE) PHOTO:Motor-Fan.jp PHOTO&FIGURE:HONDA

どこまで利用者に寄り添えるか

しょっぱなから自身の話で恐縮なのですが、私、学生時代に幼児教育の勉強をしており、保育士および幼稚園教諭免許を所持しています。ライセンスホルダーというだけで、偉そうに言うことでもありませんが。免許取得のための教育実習は、幼児教育現場だけでなく(希望が福祉系だったので)、福祉施設でもかなりの時間勉強をさせていただきました。ただ、卒業後は教育の道へは進まず、多くの年数を教育とは似ても似つかないこのクルマ業界で過ごしているのですが……。
そんな私、じつは数年間ほど車いす利用のかた(とくに子ども)も多く来場されることのある施設で働いていたことがあります。そのときに漠然と、ハンディキャップがあっても、もっと気軽にクルマででかけられたらいいのにな、と。乗降だけでとても時間がかかってしまう状況を見ながら、車いすを利用するかたや介助するかたがもっとラクに、もっと気軽にもっと普通に使えるクルマがあったら、きっともっと外出する機会が増えるんだろうな、と感じていました。当時の私の目に福祉車両は、それほど特殊に映ったのです。

さて、なぜそんな話をし始めたかというと、今回、新型ステップWGNの試乗会で、福祉車両の体験をすることができたから。10数年ぶりに触れる福祉車両を前に、そんなことを思い出したのです。

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クルマ酔いする人にしかこの気持ちはわかるまい。酔うときは酔うのだ。お腹が空いていてもダメ、満腹すぎてもダメ、匂いもダメ……。そこに「クルマ酔いしにくい!」と堂々と謳った新型ステップワゴンの試乗会のお誘い! コレは戦いを挑むしかないでしょ。ウメボシ持って、Let’s go! TEXT:生江凪子(Naco NAMAE) PHOTO:Motor-Fan.jp FIGURE:HONDA

一口に車いすと言っても、身体の状態や身体能力によって利用するものは違い、さっとたためて簡単にクルマに載せるものができるものから、ティルト/フルリクライニングタイプなど、さまざまな種類があります。そのなかにも手動式/電動式とあり、電動式となれば重量が100kgを超えるものも多くあります。

バリアフリーと言われて久しいですが、現状は都心部であってもまだ整っていないところも多く見られます。介助者がひとりだった場合、行動の選択肢がおのずと狭まってしまうこともあるでしょう。クルマで移動でも同様で、クルマに車いすを乗せる、という第一段階は高機能な車いすとなればなるほど大変です。「家族で気軽に」や「介助者がひとりでもラクに」は、現実にはなかなか難しい部分が多いのかもしれません。

ですが、今回のステップWGNには、そんな部分にもしっかりと寄り添った福祉車両がラインアップされました。
本田技研工業 商品ブランド部 福祉事業課・田口健人さんも「細部にまでこだわった力作」と、自信をもって言うだけあって、体験すればするほどとても納得のいく仕上がりになっていました。

「普通に見えること」の大切さ

ステップWGNの福祉車両は2タイプ。車いす仕様車とサイドリフトアップシート車がラインアップ(車いす仕様車には2列目乗車タイプ/3列目乗車タイプ/2-3列目乗車タイプがあります)。
今回、新型ステップWGNの福祉車両を開発するうえで注意したことは「普通であること」だと、田口さん(前出)。

開発は、小児介護をされているかたの声に耳を傾け、全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会にも協力をしてもらいながら進めたという。
利用者の声に耳を傾けると「見た目が福祉車両という特別感のないもの」を希望されるかたが圧倒的に多かったため、新型の開発ではエクステリアのデザインにも徹底的にこだわったと言います。もちろん「操作性がいいこと」は大前提で。
なるほどドアを開けなければ、一目では福祉車両には見えないデザインとなっていることがすぐにわかりました。

福祉車両に乗ることで、周りから「要介護者が乗っているのね」と特別視されることを避けたい、という利用者のかたは多いのかもしれない。新型ステップWGNの福祉車両のエクステリアデザインは、構造が異なるリヤスタイルもほかの仕様とほとんど変わらないニュートラルなデザインになっている。とくにリヤゲートは一部プラチナ調クロームメッキ加飾が施され、高級感をプラス。一見して福祉車両だとはまったくわからない。
リヤゲートは電動式。開けるとエントリースロープが格納されている。※車いす仕様車
2列目乗車時。上記床写真で見えるバックルとタングプレートが、車いす利用者のシートベルトとなる。車いすはウインチで前側、後部ポイントの3点で固定。
電動ウインチにより、車いす利用者も介助者も、どちらにもストレスなく乗降できる。シートベルトに感動する筆者の素っ頓狂な声は、ご容赦いただけたらと思います。
トリプルゾーンコントロール・フルオートエアコンが標準装備され、運転席・助手席・後席の3つのゾーンでそれぞれ温度設定ができ、どこに座っても快適に過ごせる。※車いす仕様車/サイドリフトアップシート車
サイドリフトアップシート車の乗降(動画は降車時)も電動でラクに行なうことができる。

すべての人に、#素敵な暮らし を

ホンダは、今回発売した新型ステップWGNのグランドコンセプトを「#素敵な暮らし」としている。そこには
「クルマが主人公ではなく、家族のみんなが主人公」
「どんなシチュエーションにも合うから、家族の自由が広がる」
という想いが込められている。

運転する人も乗る人も、だれも、なにか我慢することがないクルマ。それを実現することはとても難しい。でも、今回の新型ステップWGNの福祉車両は、その部分を最大限でクリアしてきた。
家族の「みんな」、どんな「シチュエーションでも」は、健常者でも障害者でも、赤ちゃんから年長者まですべての人が「#素敵な暮らし」を送れるようにということだ。使う人を選ばない。乗る人も選ばない。その想いは、福祉車両にもしっかりと息づいている。新型ステップWGNの福祉車両に触れて、ホンダのすべての人に寄り添うという本気と、優しさを強く感じることができました。

新型ステップWGNの福祉車両は、介助される側もする側も、我慢をしないストレスを溜めない。たくさんの人を笑顔にしてくれる、利用するすべての人に優しいクルマでした。

新型ステップWGNの乗り心地は、もちろん最上級。

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著者プロフィール

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生江 凪子

クルマ酔い防止で車外のクルマを見て育ち、気づいたときには取得した幼稚園免許/保育士資格を使うことな…