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意外と需要が高いコンパクトな一人乗り電動コミューター
カーボンニュートラルにSDGs、電動化に自動運転などなど“100年に一度の変革期”と呼ばれる自動車業界には課題が山盛り状態です。そんな次世代へ向けた問題解決のソリューションをいっぺんに見ることができるイベントが「人とくるまのテクノロジー展」です。
公共社団法人 自動車技術会が主催する「人とくるまのテクノロジー展」がリアルに開催されるのは3年ぶり。2020年~2021年はコロナ禍に対応したオンライン開催となっていましたが、ようやく毎年おなじみの会場であるパシフィコ横浜に帰ってきました。
その会場には、自動車メーカーやサプライヤー、部品メーカー、素材メーカーなどが自慢の技術や製品がずらりと並んでいました。そんな目新しい展示の中で、ちょっと懐かしいとさえ思ってしまったのが、トヨタ車体のブースに飾られていた電動コミューター「コムス」です。
コンビニエンスストアの配達などでも活用されているので、そのスタイルを目にしたことがある方も多いでしょうが、コムスはミニカー規格の一人乗りBEVです。開発・生産はトヨタ車体が行なっていますが、トヨタディーラーでも買えることもあってますから、個人ユーザーも増えてきているといいます。
家庭用100Vコンセントにつなぐと6時間で満充電になるという手軽さもあって、ガソリンスタンドまで遠く、公共交通機関も整備されていないような地方集落では、近場を移動するコミューターとして活用されているケースもあるといいます。
前述したようにコムスはミニカー規格のモビリティです。言ってみれば原付バイクと同等の乗り物であり、高速道路や自動車専用道路は走行できません。法定速度は最高で60km/h、ヘルメットや2段階右折は不要ですが、シートベルトの装着は義務となっています。ちなみに運転するのに必要な免許の種類は「普通自動車免許」となります。原付免許や二輪免許では運転できません。
30km/h定地走行テストでの航続距離は102kmとなっていますが、もう少しリアルワールドに近いJC08モード相当で計測したときの一充電航続距離は57km(参考値)ということです。
そんな短い距離しか走れないのか……と思うかもしれませんが、おそらく実際に運転すると長時間乗っていたいとは思わないでしょう。コムスの見た目は四輪車ですが、分類としては原付であり、標準ではドアのないむき出しの乗り物だからです。オプションとしてキャンバス地のドアも用意されていますが、空調機能はないために夏場にドアを閉めて運用するのは非現実的でした。
暑い夏の必需品がオプション装備で登場か。
“でした”と過去形にするのは理由があります。なんと、今回の人とくるまのテクノロジー展においてトヨタ車体がコムス用クーラーを参考出品していたのです。一人乗りのコムスは右からも左からも乗り込めるようなパッケージになっていますが、この後付けクーラーは左側からの乗降スペースを利用して取り付けるようになっています。
冷たい風をドライバーの顔にあてるスポットクーラーといった構造と機能になっていますが、開発者によればキャンバスドアを閉めた状態で使えるような冷房性能を満たしているそう。これでコムスのウィークポイントである夏の暑さから解放されることができれば、ますますパーソナリティモビリティとしての価値が高まるといえるのでは? さらに後付けクーラーは車両側の駆動バッテリーとは別のバッテリーを使う設計なので、冷房を使ったからといって航続距離が短くなるということもありません。
後付けクーラーの価格などは未発表となっていますが、コムスの車両価格が79万9700円~98万4500円ですから、仮に10万円台では商品力がないのは自明。一桁万円でのリリースに向けて鋭意開発中ということです。
ちなみに、コムスはBEVを対象としたCEV補助金20万円が期待できるということで、後付けクーラーやキャンバスドアといったアクセサリーをつけても100万円以下で手に入れることができるといえそう。電動化時代の近距離専用セカンドカーとして再評価すべきタイミングになっているといえるかもしれません。