オートバイの事故で多いのが交差点を直進しているときに、右折されてぶつかるというもの。いわゆる右直事故だ。バイクは心理的に交差点を早く抜けたいとなりがちで加速しているのに対して、右折車もタイミングを見て一気に曲がろうとするから、被害が大きくなりがちなのが特徴だ。
バイク以外でも自動車対自動車というのももちろんあって、バイクよりも重量がかさむため、より悲惨な事故になりがちだ。以前、右直事故で直進車が跳ね飛ばされて、たまたま交差点にいた保育園児が死傷するという事故は記憶に新しい。最近でも、右直事故の両車が大破し、直進車のドライバーが逃亡するという事故も起きていて、ワイドショーやネットを中心に話題になった。
事故にならないまでも、運転していると日常的にヒヤリとさせられることがある。まずバイクの場合、教習所でも習うがバイクはサイズが小さいため、外から見て速度感覚が狂いやすく、遅く感じてしまう。これは錯覚として防ぎようがない部分もあって、白バイの警官にこちらに向かってくるバイクのスピードを問うてもほぼ外れるというほどだ。つまり、バイクの速度感には相当の誤差があるものとして日頃からあらためて認識しておいたほうがいいだろう。
肝心の過失割合だが、両車ともに青で交差点に進入している場合は右折車が8割で、直進車が2割。ちなみに直進がバイクだと、交通弱者の分が考慮されて8.5割と1.5割になることがある。いずれにしても道路交通法で「直進車の進行を妨げてはならない」と定められているからで、先の滋賀県の事故でも直進車は軽い判決になっている。直接園児に突っ込んでいるのに軽すぎるとして非難も出たが、そもそも右折を強引にしなければ発生しなかっただけに、当然の結果と言える。
直進車は2割というのは前方不注意の要素が入ってくるから。よく言われる、少しでも動いていると10対0にはならないというのがここでも関係してくるわけだ。この8割と2割は基本割合で、細かい事情が加わると割合は異なってくる。直進車の場合でいうと、速度超過や前方が詰まっているのに進入したなどであれば、1割から2割ほどプラスされる。また右折車の場合、強引な右折やウインカーを出していなかったなど、同様に1割から2割ほどプラスとなるので、場合によっては10割になってしまうこともある。
さらにいろいろなパターンが想定されるのが右直事故の特徴で、それは様々な方向からクルマが行き交う交差点がゆえ。たとえば、両方とも黄色でギリギリの場合は右折が7割で、直進が3割と青信号の場合とで異なってくる。どちらも突っ込むこと自体が悪いものの、右折はギリギリで曲がることが多いことから、直進車の過失が増える。
そして注意しないといけないのが10割と0割になるパターンで、最近よく見かける状況で起こる。それは、信号が赤になっても直進車が突っ込んでくるときで、右折車が青矢印で右折しようとしているのに直進してくるクルマは最近になって増えているように思える。信号無視は大罪といってよく、そもそも赤信号での交差点内への進入は禁止。にも関わらず直進して、右折車とは言え青信号で曲がってくるクルマとぶつかると直進車は10割の過失になる。
直進車は強引に入ってくることが多いため、たとえば速度が出ているバイクだと悲惨な死亡事故になりがちなのが特徴で、現場の警察官に聞くと「昔はバイクの事故というと信号が変わる前に一気に加速して横からぶつけられるのが多かったが、今では右直でやられるのが多い」というほど。いずれにしても赤信号での進入は厳禁だ。
赤信号での進入については日本は甘いほうで、アメリカや中国など海外では交差点にカメラが付いていて、信号無視をすると自動で取り締まりを行うオービスのようなシステムが運用されている。日本では以前なら赤信号での突っ込みはタクシーぐらいのものだったが、今では地域にもよるだろうが、乗用車も普通にやるようになってきているだけに早急な対策が望まれる。自動車の装備としてはトヨタセーフティセンスに右直感知機能がプラスされたりしている。時間はかかるだろうが、今後は改善の方向に向かうだろうか。