ライバル不在の悪路走破性。孤高の「SUVミニバン」三菱デリカD:5【最新ミニバン車種別解説

19年のビッグマイナーチェンジ以降、継続的に安全装備などの進化を続ける「三菱デリカD:5」。現在はクリーンディーゼルエンジンモデルのみのラインナップとなり、走破性はライバルたちとは一線を画すもの。先代アウトランダーをベースに、リブボーンフレームを構成したボディは際立つ個性だ。全長が若干短く、街中での取り回しのしやすさ、それでいて3列目シートの確保など絶妙なパッケージングも特徴だ。
REPORT:竹岡 圭(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:大須賀あみ

歴史あるディーゼル一本勝負 高剛性ボディと走破性は別格

2019年のビッグマイナーチェ ンジでガラリと顔が変わって新型と 呼べるまでになり、その後も安全装 備が進化するなどして、継続的にブ ラッシュアップを続けているデリカ D:5。その当初は、ガソリンエン ジンモデルも平行して販売が続けら れていたが、現在はクリーンディー ゼルエンジンモデルのみのラインナ ップとなっている。とはいえ、デリカスターワゴン、 スペースギアの時代から、ディーゼ ルエンジンモデルが活躍してきた歴 史をもつクルマなので、ある意味自 然な流れなのかもしれないが、その 時代と違うのは力強さはもちろんの こと、8速ATと組み合わされ、ス ポーティと思えるほど気持ち良く走 れるクルマになっているということ だろう。

エクステリア

標準車、アーバンギア ともにビッグマイナー チェンジで迫力満点の 顔つきに変身。リヤは、 テールランプとガーニ ッシュを一体化した形 状に変更された。
運転席/助手席ともにワンタッチ式電動スライドドア(クローズ&ロック機能付き)を備えるほか、助手席ドア、助手席側スライドドアと連動するLEDステップ照明付き電動サイドステッ プを用意し、高めの床面による乗降のしにくさをアシストする。また、空間効率の高さも特徴で、3列目の頭上まで余裕があるのは、典型的な箱型スタイルの恩恵でもある。

そんな走りができるのは、なんと 言ってもこのクルマのいちばんの魅 力であるベース性能の高さにある。 生い立ちとしては、SUVである先 代アウトランダーをベースとして、 生まれたクルマなのだ。というわけで、そんじょそこらの ミニバンと比べると、走破性の高さ が違う。もちろん、ミニバンという 形状を考えると、その走破性をきち んと生かすためには、ボディがしっ かりしていないと意味をなさないが、 恐竜の肋骨を彷彿とさせるリブボー ンフレーム構造を用いることで、ラ イバルをまったく寄せ付けないほど、 ガッチリしているのだ。

乗降性

普通に街なかを走らせていても感 じられるほどのガッチリ感なのだが、 実は特殊なテストでも証明されており、例えば全長が長い箱型ミニバン は、斜度がついたところにクルマを 横向きに停めると、ボディが捻じれ てしまって電動ではスライドドアや バックドアが開閉できなくなってし まうクルマが依然として多いのだが、 デリカD:5はまったく問題なく開 閉できてしまう。それほどボディが 捩れないのだ。

インストルメントパネル

狭い道や悪路でも取り 回ししやすい水平基調 で、インパネシフトを 採用する。最上部の 10.1型オリジナルナビ はオプションで、メー ターはシンプルだが、 視認性の高い二眼式。

だからこそ足まわりもしっかり動 くし、そこに加えてSUV譲りのア プローチ&デパーチャーアングルで、 普通のミニバンだとお腹がつかえて しまうようなところでも、問題なく クリアできる。CMなどでお馴染み の 度の壁を上るイベントで活躍で きるほど、走破性が高いのである。 さすが、ダカールラリーの伴走車と して完走しているという実績はダテ じゃないのだ。

居住性

4WD性能もさすがは三菱といっ たところで、例えば高速走行中の安 定感は相当心強い。横風を受けやす いミニバンだからこそ、なおさらの 恩恵を感じるところだ。しかし残念ながら、デビュー時が 相当前のために、シートアレンジ性 能などは進化していなかったりする。 シートの座り心地や表皮などは最新 なのだが、3列目シートにもしっか り座れるぶん、シートの重量が重か ったり、アレンジする際のサポート がなかったりする。

うれしい装備

スイッチ操作で、特に楽に閉じることができるエレクトリックテールゲートは、小柄な人でも操作しやすい。電動開閉、 クローズ&ロック機構に加えて、半ドアを防ぐイージークローザーも備える。「G」「M」を除き標準装備。
セカンドシートは、キャプテンもベンチシートもチップアップが可能。荷室最大時 の奥行きが稼げるだけでなく、この空間に大きな荷物を積む際にも重宝する。
月間登録台数   1057台(21年6月〜11月平均値)
現行型発表    07年1月(一部改良20年12月)
WLTCモード燃費  12.6km/l 

ラゲッジルーム

ライバルのLクラスミニバンより も全長が若干短く、街なかでの取り 回しがしやすかったり、駐車場に困 らない利点はありつつ、きちんと3 列目スペースは取れていたりと、パッ ケージングも絶妙なのだが、細かい ところに古さを感じるのは否めない。 アウトランダーも新型になったこと で、そろそろ次作に期待が掛かる。

※本稿は、モーターファン別冊ニューモデル速報統括シリーズVol.139「最新ミニバンのすべて」の再録です。掲載データは作成時点での参考情報です。

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