ボディ型を転々としてきたインサイト、4代目の姿は?
1999年の初代は風との相談ずくで造形したかのようなエアロボディの2ドアハッチバッククーペ。
リヤタイヤを隠してまで空力低減したがために、ちょっと奇異なスタイリングになった2人乗りで、初代NSXに次ぐアルミボディだったことも忘れちゃいけない。
ホンダ初のハイブリッドの実験作的な雰囲気もあった。
2代目は2004年の2代目プリウス同様の5ドアハッチバックに鞍替え。
ここでようやく乗用車らしくなった。
ただし出たのがリーマンショック後の2009年でタイミングが悪かったこと、最廉価「G」を189万円、中間売れ筋機種「L」を205万円として、ハイブリッドとしてはお買い得な価格にしたのに、少し後の3代目プリウス最廉価「L」に205万円で追われたばかりか、モノグレード化して併売に決まった2代目プリウスに189万円で挟み撃ちされたこと、その3代目プリウスが販促チラシで、名指しこそ避けたものの、エンジンアシストのハイブリッドを「ハイブリッドとしてどうか?」とでもいいたげな揶揄ターゲットにされたなど、まことに気の毒というか、災難続きの2代目インサイトだった。
そして今回の4代目は・・・クロスオーバー型のSUVになって帰ってきた!

ボディ型ばかりではない。
ホンダ初のハイブリッドとして生まれ、走り続けてきたインサイトも今回ついぞハイブリッドを捨て、完全EVに生まれ変わったのだ。
ただしボディ形態として5ドアハッチバック型である点では2代目と変わらず、いわば車高と地上高をかさ上げした5ドアハッチバックである。
それにしても、2ドアクーペに5ドアハッチ、4ドアセダンに5ドアハッチのSUV・・・同じ車名のままボディ型をコロコロ変えた例はインサイト以外に思い当たらない。
初代が4ドアセダンだったプリウスだって、2代目以降は5ドアハッチで一貫している。
ただ、ホンダがEV1本化作戦を変更した矢先である。
気が早いが、次のインサイトはガソリンエンジンの軽自動車に移る可能性がないとはいえない。
もはやインサイトは、ライフ終盤にそっとフェードアウトさせていったん空白期間を置き、世間が忘れた頃に別のカテゴリーにフッと現れるのが伝統化しているのである。
【スタイリング】
新型インサイトの販売計画台数は3000台限定。
たかだか3000台こっきりのために1台のクルマを造るはずはなく、実はこの新しいインサイト、大きく生まれ変わったかのような書き方をしたが、その実態は中国で販売されているe:NP2そのものなのである。
とはいえ、スタイリングは前後にいくらか手が入れられている。
e:NP2のフロントランプが横長コの字を描いているのに対し、インサイトは横型。
コーナーにくの字というか、手羽先を思わせる縦型ランプを配して印象を変えている。


両車、リヤランプもフロントに呼応しており、e:NP2がコの字、インサイトは横一文字のランプ脇に縦ランプが置いてある。

ランプが異なると、それと隣り合うパネルも変わるのはいうまでもなく、写真で比較する限り、前後バンパーとフロントのフェンダー&グリル(といっていいものか)、バックドアがそれぞれ専用品。
ランプ形状変更だけで億単位のお金がかかる。
にもかかわらず形を変えたのは、e:NP2とは違う、この縦ランプスタイルで売る地域が日本以外にもあるのだろう。
とてもとても3000台だけのためにできた変更ではない。
逆にガラスやドアパネルなどは共通のようだ(リヤドアに判然としない部分はあるのだが)。
なお、新型は6ライトではない4ライトゆえ、リヤドア後ろはリヤピラーをはさんでバックドアになるが、このバックドアガラスが大きく寝ている。
これは立てた場合より荷室容量が小さくなる、雨天下、開けたバックドアでの雨しのぎがしにくいといったデメリットがあるが、何も悪いことばかりではなく、ヒンジ位置が前進したルーフ後端となるため、バックドア開時も車両後方への張り出しが少なくなる(だから雨しのぎがしにくいのだが)、開口部が上向きになるため、バックドアの開口角次第だが、長尺物を上から入れやすくなる利点がある。
【パッケージ】
「どのシートに座っても心地よさを感じられる空間をめざした」という車室は、前席は高いアイポイントにより、見晴らしのよい視界を確保。
運転環境は、ガラス投影のヘッドアップディスプレイ(以下HUD)を主体にしたのだそうで、確かにインパネの横一文字の溝の中に埋め込んだハンドル前のメーターのほうこそサイズは控えめだ。

ホンダは前々から、それこそ2代目インサイトも含めてときおり、通常のメーターの他に、ハンドル上向こうに速度計を見る「マルチプレックスメーター」を用いてきた。
いまの他社のHUDは、通常メーターに対して「使いたい人はどうぞ」という脇役の印象があるが、新型インサイトの場合、通常のメーターサイズが控えめなことから、このメーターはマルチプレックスメーターの現代版で、「メーターの主役・速度のご確認は、このクルマではHUDでどうぞ」ということなのだろう。
事実、「メーターは必要な情報をシンプルに整理した」という。
センターコンソールは左右間を行き来できるウォークスルーを念頭に置き、高さをシート座面と同等に抑えてある。
後席は足元空間を大きく確保、背もたれはリクライニング付きで、長時間の移動でも快適な空間を実現したという。

荷室は日常使いから週末のレジャーまで幅広いシーンに対応できる大容量を確保したと。
フロア高さを上下2段にセットできるラゲッジボード、後席可倒機構との併用で荷室の使用性がより向上するというが、ここにさきに述べた、寝かせたバックドアガラスゆえの大きくて上向きの開口形状が荷の積み下ろし性向上を後押しするだろう。
【快適装備群】
世の中のクルマが背高&スペーシィになってからは、メーカーもユーザーもクルマのキャビンを「リビング」と位置付けているかのようだ。
シートやステアリング、車内の各ヒーターの協調動作を可能とする「インテリジェントヒーティングシステム」がその象徴で、後席の乗員有無を自動判別し、空調出力と消費電力の最適化を行うAUTOモードを備える。
また、輻射熱を用いたパネルヒーターが新しく、従来の温風ヒーターに比較して省電力かつ静かで乾燥しづらい温暖環境を追求している。
このへん、消費電力が大きいのが悩みとなるEVならではで、家庭用エアコンも顔負けの制御がリビングを連想させる点だ。
リビング的なのは、エアコン作動時に室内に香りを広げる「アロマディフューザー」の採用。
香りは6種のカートリッジから選択可能で、車内には最大3本まで装着可能。
ディスプレイオーディオ画面から香りを選択することで気分を整え、移動時間そのものを心地よいひとときに変えていく。
他に、車内の雰囲気を光で演出するというアンビエントライトがある。
照明制御はドア開閉ばかりか、空調温度にまで連動するという凝りようだ。
見慣れたものではBOSEプレミアムサウンドシステム。
専用設計のBOSEスピーカー12個を最適配置し、全席で自然な広がりと臨場感あふれる音場を提供する。
【ダイナミクス】
ドライバー操作に対して素直に応える操縦性と、上質で心地よい乗り味の両立を追求。
EVならではのなめらかで静かな走行フィールを活かしながら、安定感のある走り、誰もが扱いやすい自然な操作性により、日常走行から長距離走行まで安心して楽しめるダイナミクス性能を提供する。
走行モードを選ぶこともでき、用意されているのは「NORMAL」「SPORT」「ECON」「SNOW」の4つ。
SPORTでは、アクティブサウンドコントロールを起用し、加速時、減速時ともサウンド制御を行うことで、走行全体を通じての一体感を実現したという。
アクティブサウンドコントロールもホンダがときおり用いてきた技術だが、従来は発生したノイズと逆位相のノイズをスピーカーから発することで、ノイズが消えたようにしていたにとどまるが、新型インサイトでは、音による演出と走行性能を融合させることで静粛性と楽しさを両立したとのことで、アクティブサウンドコントロール技術の役割をいくらか変えたようだ。
【パワーユニット】
高出力、高トルクにしてコンパクトなドライブユニットと、大容量かつ薄型化したバッテリーを搭載。
バッテリーを適温に保つ温度管理システムを組み合わせることであらゆる走行シーンに於いて安定したパフォーマンスを発揮する。
実用上はともかく、少なくともWLTCモードでの航続距離は、電気自動車もいつのまにかここまで来たかという535kmで、充電時間は急速充電で約40分。
また、EVならおなじみAC外部給電器「Honda Power Supply Connector(パワーサプライコネクター)」も販社オプションで用意され、最大1500Wまでの電気を取り出すことができる。
【Honda SENSING】
軽自動車にさえ標準化されている時代だからわざわざ書くまでもないが、インサイトに搭載されるHonda SENSINGの機能は次のとおり。
1.衝突軽減ブレーキ(CMBS)
2.誤発進抑制機能※6
3.後方誤発進抑制機能※6
4.近距離衝突軽減ブレーキ※6
5.歩行者事故低減ステアリング
6.路外逸脱抑制機能
7.渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)
8.車線維持支援システム(LKAS)
9.トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)
10.先行車発進お知らせ機能
11.標識認識機能
12.オートハイビーム
13.ブラインドスポットインフォメーション
14.Honda パーキングパイロット
15.パーキングセンサーシステム
【ボディ&インテリアカラー】
ボディカラーは、
・ダイヤモンドダスト・パール(6万6000円高)
・クリスタルブラック・パール
・スレートグレー・パール(4万円高)
・アクアトパーズ・メタリックII(4万円高)
・オプシダンブルー・パール
の5色(価格はいずれも税込み)。
このうちアクアトパーズ・メタリックIIはホンダの新色である。
内装色は、オーソドックスに販社で買うのならブラックだけなのだが、新車販売オンラインストア「Honda ON」専用でホワイト内装が設定されている。
ただし数量限定だし、組み合わされる車体色も限定されていて、ダイヤモンドダスト・パール、クリスタルブラック・パールのみとのコンビネーションとなる。
ただでさえ販売台数3000台に限定される新型インサイトなのに、明るい内装色のインサイトがほしい方はなお急がねばならない。
【車両本体価格】
新型インサイトの車両本体価格は、税込み550万円。
いわゆるモノグレード構成で、駆動方式もFFのみ。
これを高いと見るか安いと見るかは、乗用車として見るかEVとして見るかで変わってくるだろうが、2026年度クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)が130万円となるので、補助金を入れると420万円となる。
さて、カテゴリーもスタイルもパワートレーンも新たに再々々出発を図った新型インサイト、このコンセプト替えがどのような結果を生むか。
それは消費者の判断に委ねられている。







