4代目インサイトの価格は550万円。一充電走行距離は535km

インサイトはモノグレード。試乗車のボディカラーはアクアトパーズ・メタリックII

2026年4月17日、ホンダが「インサイト」を発表した。

すでに多くの報道で目にしている情報だろうが、3000台限定販売(その理由は後述)であり、クロスオーバーSUVスタイルのBEVとなった。1999年に初代モデルが誕生して以来、3代目までずっとハイブリッド専用モデルだったインサイトは、ついにエンジンを失ったともいえる。

個人的なことをいえば、フリーランスになって最初に所有していたのが初代インサイト(5速MT)だった。子どもが生まれた頃に乗っていたのは2代目インサイトで、省燃費を活かして全国を旅した思い出もあったりする。

はたして4代目となったインサイトは、名前にふさわしい仕上がりなのか、元オーナーとしての思いもあっての試乗となったことは、最初に白状しておきたい。

マイカーだった初代インサイトと、若かりし日の筆者。アルミボディで車重は820kgと超軽量だった

さて、4代目インサイトのプロフィールやスペックについて簡単に整理しておこう。

生産国は中国、現地では2024年から「e:NS2」という名前で販売されている。2年遅れの販売タイミングから「中国製BEVを手直しして日本に導入した」という見方もあるようだが、さにあらず。初期の開発段階から日本やタイといった右ハンドル圏での販売は織り込まれていたという。

ボディサイズは、全長4785mm・全幅1840mm・全高1570mm

インサイトのボディサイズは、全長4785mm・全幅1840mm・全高1570mm。最小回転半径は5.9mとなる。車両重量は1770kg、車検証で確認した前後軸重は前1010kg/後760kgとなっていた。

BEVの重要はスペックとなるバッテリー総電力量は68.8kWh、気になる一充電走行距離は535kmとなる。フロントを駆動するモーターの最高出力は150kW(204PS)、最大トルクは310Nm。乗車定員は5名だ。

ステアリングホイール中央のロゴが「Honda」となっているのは新しい

新車販売オンラインストア「Honda ON」専用で、ホワイト内装のLimited Editionは設定されるが、基本的にはモノグレード。メーカー希望小売価格は550万円。BEVの購入検討では重要なCEV補助金は130万円となっているから、実質的には420万円で購入できるといったイメージだろうか。

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本田技研工業は2026年3月5日、新型EV「INSIGHT(インサイト)」を発表した。発売は2026年春を予定しており、3月19日から先行予約の受付を開始する。 Photo:宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)/HONDA

結論:ホンダ史上もっとも落ち着いた乗り味の一台

インサイトの加減速もハンドリングも、ひと言で表すなら“しっとり上質”だ。 ホンダ車では珍しい重厚で味わい深いフィーリングとなっている。

ボディサイズ的には、ホンダのSUVフラッグシップであるCR-V(全長4700mm・全幅1865mm・全高1680mm)に対して、少し長くて、わずかに細くて低いシルエット。じつは車重についてもCR-VのFFは1750kgなので、インサイトはBEVとしては軽量に仕上がっているといえそうだ。

なお、インサイトにCEV補助金を考慮しないと価格的にも同等(CR-VのFFグレードは約512万円)だったりする。まさにホンダSUVのフラッグシップにどちらがふさわしいのか、というテーマも浮かんでくる。

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https://motor-fan.jp/article/1439547/

はたして、新型インサイトとCR-Vの乗り味は、まったく違うものだったというのが筆者の印象だ。

たしかにCR-VのFF車は、同モデルの4WDがホンダ的なスポーティ系ハンドリングを感じさせるのと比べるとサルーン的なテイストが強い印象がある。しかし、CR-VのFFはスーッと走ると表現したくなるような軽やかさもあった。

一方、インサイトはまったく異なる。加減速もハンドリングも”しっとり”と表現したくなるテイストだった。

過去に、レジェンドなどフラッグシップサルーンに試乗したときにも感じたことがない、ホンダ車には珍しい重厚なフィーリングがあった。しかし、けっして鈍重な印象という意味ではない。ガトーショコラのような味わい深さがあるといったら伝わるだろうか。

いい意味での落ち着き感が、明確に意図をもって作り込まれていると感じるのは、発進加速だ。

BEVの加速は、モーターの特性を活かしてエンジン車より機敏に演出するという傾向もあるが、インサイトの発進加速は非常にマイルドになっている。しかも、それはモーターの性能が劣っているからではない。

その証拠に、ドライブモードでスポーツを選ぶと、BEVらしいキビキビとした加速が味わえる。スポーツモードにすると機能が疑似サウンドシステム「アクティブサウンドコントロール」がオンになるのも刺激的だ。

ただし、ノーマルモードでは非常に落ち着いた発進性に仕上げている。気を遣わずにアクセル操作ができる味付けは、これまでのホンダ車とは一線を画すイメージを受ける。

アクセルコントロール性の開発コンセプトは「意のままにスッと動き、同乗者もストレスがない運転しやすさ」となっているが、たしかにファーストタッチとして「運転しやすさ」は印象に残った。

ハンドリングの印象も同様で、芯の強さを感じるしなやかさがある。こうした走り味には、余計な動きを抑える周波数応答ダンパーの採用や、コンチネンタルの高性能タイヤといったパーツチョイスも貢献しているだろう。

ハンドリングをまとめると、BEVの重いボディを上手に使ったセッティングがなされていると評価できる。それがホンダ史上最高といえるインサイトの「しっとり感」を生み出している。

装着されるタイヤ銘柄はコンチネンタル・ウルトラコンタクト。サイズは225/50R18。指定空気圧は前260kPa、後240kPa

20年前を思い出すと、初代インサイトは世界最高の省燃費マシンとして超軽量かつ低抵抗に作られていた。軽さのネガを消すためにスペックから想像するよりもスタビリティに振ったシャシーセッティングになっていたと記憶しているが、それでも高速道路ではアクセルオフでも減速いないくらい走行抵抗は小さかった。

逆に1770kgという車重を活かした味付けとなる4代目は、方向性としては初代と真逆といえるが、ボディの重量をハンドリングにつなげるというアプローチの考え方にはインサイトの共通性があるのかもしれない…と感じた。

3000台限定販売、すでに1000台以上を受注

ところで、4代目インサイトについては「3000台限定販売」と公表されていることも、密かに話題となっている。

「本気で売る気はないのか!」、「つなぎのクルマじゃないの?」といった感想を持った人も少なくないだろう。そうした指摘は半分本当で、半分は誤解といえる。

まず、「売る気がない」という指摘については完全なる誤解だ。

新型インサイトには、6種類のアロマディフューザー機能や、輻射熱を利用したインテリジェントヒーターシステムといった心地よさを生み出す機能が備わり、50代から上という日本のターゲット層が満足・納得できる快適性が与えられている。

海外製のミドルサイズのBEVを日本向けにローカライズするといった安直な商品企画ではないといえる。

ドア内張りなどに輻射熱システムを内蔵したインテリジェントヒーティングシステムは新しい提案だ

しかしながら、「つなぎだから3000台限定」という指摘は、あたらずとも遠からずだ。

ホンダのグローバルBEVブランドとなる「Honda 0(ホンダゼロ)」シリーズは、全般的にプロジェクト中止になったと誤解している向きもあるようだが、ジャパンモビリティショー2025で世界初公開された、コンパクトなSUVスタイルの「Honda 0アルファ」については、2027年から日本やインドでの販売を予定している。

2027年に、インド製のSUVスタイルのBEV「Honda 0アルファ」が日本で販売されると、車格的に4代目インサイトと被りかねない。なにより、日本のBEVマーケットのスケールを考えると、ホンダが同じようなBEVを複数用意するメリットは考えづらい。

このあたり、商品投入計画が甘いという見方もあるが、設計の新しいモデルを優先するというのは当然の判断であり、結果的にインサイトはHonda 0アルファ投入までのつなぎというポジションにハマってしまったという。

1~2年での販売終了が見込まれるのに、いかにも長く売っていくニューモデルとして販売するのは、逆にユーザーに対して不誠実だ。だからこそ、ホンダは正直に、3000台の限定販売とアナウンスしたのだ。そうした正直さは、いかにもホンダらしいところであるし、むしろ出口戦略を隠していないことを、評価すべきだと思う。

そんな3000台限定販売のインサイトは、5月24日時点で1011台のオーダーが入っているという。なんと、残り2000台を切っている。新型インサイトが気になるのであれば、急がないと間に合わないかもしれないのだ。

前述したホンダらしからぬ、しっとりとした乗り味は、現行ラインナップにおいては、もっともフラッグシップ的であるし、一充電走行距離535kmというスペックも、いま選ぶホンダのBEVとしてはもっとも実用的。このクラスのBEVを探しているのであれば、候補に挙げないのはもったいない。