スズキの新しい軽バン「スペーシアベース」はエブリイバンより割高に見えるが、実際どうなのか?

スズキから新登場したFFベースの軽商用バン「スペーシアベース」は、絶対的な積載能力では主流の1BOX軽バン「エブリイ」には敵わない。はたして、どのようなユーザーがスペーシアベースを選ぶべきなのか、実際にエブリイで軽バンを楽しんでいる筆者は『シングルユースを前提に作り込むのが楽しそう』という印象を持ったという。
REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:/中野幸次(NAKANO Koji)

スペーシアベースの価格イメージはエブリイより10~15万円高

スズキから登場した、新しい軽商用車「スペーシアベース」が話題を集めている。成り立ちとしては軽スーパーハイトワゴンのスペーシアをベースに後席やラゲッジを商用バン仕様にしたというものだが、スペーシアの新バリエーションというわけではない。スズキの軽商用開発チームが、コロナ禍において生まれた新しいニーズ(車中泊、ワーケーションなど)や、軽商用ラインナップの幅を広げるモデルとして開発されている。

だからといってスペーシアの内装だけ変えたわけではない。乗用タイプのスペーシアはマイルドハイブリッドとなっているが、スペーシアベースではハイブリッド機構を廃した純ガソリンエンジンになっている。それでも、CVTを採用していることもあって燃費性能は軽バンとしては最高レベルの21.2km/L(FWD・WLTCモード)を実現している。また、乗用車由来のスマートな4WD仕様を用意しているのも特徴だ。

スズキ・スペーシアベース「XF」

そんなスペーシアベースのグレード構成はエントリーグレードの「GF」と装備が充実した「XF」の2本立て。そのメーカー希望小売価格は次のようになっている。

GF(FWD):139万4800円
GF(4WD):151万8000円
XF(FWD):154万7700円
XF(4WD):166万7600円

商用仕様ということで軽スーパーハイトワゴンと比べるとリーズナブルな価格になっている印象も受けるが、エブリイバンと比べると割高に感じるのも事実だ。実際、エブリイバンで先進安全装備「スズキセーフティサポート」を標準装備しているグレードは、最上級グレード「JOIN」と、そのひとつ下になる「PC」グレードとなるが、それぞれのメーカー希望小売価格(いずれも4AT車)は次のようになっているのだ。

PC(RWD):129万8000円
PC(4WD):143万円
JOIN(RWD):138万7100円
JOIN(4WD):151万9100円

スズキ・エブリイ「PC」

エブリイバンはエンジン縦置きのプラットフォームとなるので、パワートレインの比較は難しい部分もあるが、エンジン自体は同じR06A型であることを考えると、同等グレード比較でスペーシアベースは10~15万円高価な設定になっていることがわかる。

最大積載量200kgのメリット、デメリット

さらにスペーシアベースは、軽バンとしての積載性能においてもエブリイバンに劣っている。最大積載量は、エブリイバンが軽商用車の上限となる350kgであるのに対して、スペーシアベースは200kgにとどまっている。またパッケージの違いから荷室のスペックも以下のようにエブリイバンが全般的に上回っているのだ。

エブリイバン
荷室床面長(2名時):1955mm 荷室幅(最大):1385mm 荷室高:1240mm

スペーシアベース
荷室床面長(2名時):1375mm 荷室幅(最大):1245mm 荷室高:1220mm

つまり絶対的なスペースが必要なケースであればスペーシアベースを選ぶという結論にはならない。積載量がビジネスに直結する宅配業などでスペーシアベースを選ぶというのはあり得ないのである。軽スーパーハイトワゴンのアーキテクチャを基本にしたデメリットは、とくにかくラゲッジが狭いことにある。もっとも、スペーシアベースのラゲッジを見ると、防音や保温に有利なフルトリムとなっているが、エブリイバンでは鉄板むき出しの部分が多く、そのあたりが荷室幅の違いに影響しているのは否めない。

どんなケースでスペーシアベースの価値が出てくるのかといえば、まさにフルトリムによる快適性を重視するユーザーだ。開発エンジニア氏に聞いたところで、スペーシアベースでも350kgの最大積載量を実現することは不可能ではないという。ただし、それだけの重量に対応しようと思うと、リヤサスペンションをハードにしていく必要があるため、乗り心地にはネガティブとなってしまうことは容易に想像できる。

スペーシアをベースにしているため、乗用車レベルの内装や装備、乗り心地は他の軽バンにはない強みではある。

スペーシアベースは、冒頭でも記したようにコロナ禍で広がってきた、軽バンの新しいニーズに応えるクルマとして開発された。一人乗りのレジャーユースの相棒として乗り心地を確保することは、その開発テーマからして重要なファクターであり、快適性を犠牲にしてまで最大積載量を増やすという判断にはならなかったというわけだ。

ラゲッジボードの活用による荷室のアレンジなど、最大積載量の追求より多様なライフスタイルにフィットする使い勝手の良さを重視している。

さらにスペーシアベースの上級グレード「XF」はFWDでも150万円を超える価格帯で、軽バンとしてはかなり高価だが、渋滞対応の全車速追従ACCが備わっている点は、レジャーユースとして軽バンを検討しているユーザーからすると貴重な機能であることは間違いない。他メーカーを見ても、軽商用車で全車速追従ACCを装備できるのはダイハツ・アトレーの上級グレードくらいで、その価格は165万円を超えるのだ。

メカニズムの違いはあるにせよ、軽商用車の全車速追従ACC装着車としては、もっとも手頃なのがスペーシアベースといえる。

全車速追従ACCを装備。
ロールサンシェードなど快適な装備が充実している。

軽バンの後席シートはエマージェンシーと割り切るべし

では、レジャー目的で軽バンを考えているユーザーはスペーシアベースが絶対におすすめなのかといえば、そうはいえない。何度も書いているように、1人乗りをメインで、多くても2名乗車までを考えているユーザーにとってはスペーシアベースは楽しい遊びの道具となるだろうが、日常的にリヤシートに人を乗せるのであれば選んではいけないといえる。

見ての通り、スペーシアベースの後席は完全にエマージェンシーで、畳んで使うのがデフォルトと考えるべきものだからだ。

その点、エブリイバンでも最上級グレード「JOIN」であれば、後席はヘッドレストを備えた乗用に耐えうるものとなっている。もし、4人家族のレジャーユースを考えているならばスペーシアベースを選んでしまうと家族からブーイングが出ることになるだろう。後席を使うのではあればエブリイバンの「JOIN」グレード一択となる。

ちなみにエブリイバンでも「PC」グレードなどはスペーシアベースと同様のエマージェンシー的なリヤシートとなる。けっしてスペーシアベースが後席をないがしろにしているわけではなく、むしろ簡易的な仕様が軽バンのスタンダードで、エブリイバンの「JOIN」グレードが特別なのだ。

まとめ:乗用車の快適性を活かした、軽バンの新しい選択肢。

最近ではレンタカーやシェアリングでクルマを利用するというスタイルも増えているが、車中泊仕様やアウトドア仕様として自分の使いやすいように作り込むには、やはり愛車として手に入れたい。そうしてラゲッジスペースを自分仕様に作り込みしつつ、日常の買い物などにも活用することを考えると、燃費がよく、乗降性にも優れたスペーシアベースというのは軽バンの新しい選択肢として非常に有効だ。

特にスペーシアベースの乗降性の良さについてはエブリイバンに日常的に乗っている筆者からすると羨ましいと感じる部分だ。また、全車速追従ACCというのは長距離ドライブにおいては有効で、こちらもキラーアイテムとしての魅力を感じる。

まとめると、最大2名乗車が基本で、運送業以外で軽バンライフを考えているのであれば、スペーシアベースは検討する価値はある。その上で、自分のニーズにおいて必要な荷室スペースなどから1BOXタイプとどちらがマッチするかを考えていくといいだろう。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。2010年代から自動車コラムニストとして執筆活動をしています。過去と未来をつなぐ視点から…