ローギアードな軽バン限定の省燃費運転テクニック

新東名高速で120km/hで走ると、エンジン回転は6000rpmに迫る

車中泊ブームにのって、スズキ「エブリイ」を新車で購入したのは2021年秋のことだった。4ナンバーの純然たる軽バンではあるが、トコトコと移動する趣味の乗り物という位置づけだったので、あえてFRの5速MTを選んだ。そして2022年度からはメーターの燃費計を利用して月間平均燃費を記録している。

その燃費推移については、開店休業状態の個人ブログにおける数少ないコンテンツとなっているが、春や秋といった空調の負担が少ない季節であれば、以下に示したカタログスペックの燃費性能を超えることも少なくない。

WLTCモード 17.0 km/L
 〃市街地モード 15.4 km/L
 〃郊外モード 18.0 km/L
 〃高速道路モード 17.1 km/L
JC08モード 18.7 km/L

エブリイで20.3km/Lの「ウソみたいな実燃費」フォトギャラリー

スズキ・エブリイ

ちなみに、過去ベストは2025年6月に記録した20.3km/L。このときはひと月で1400kmも走っての数値だったので、自分でも驚いたことを覚えている。

とはいえ、こうした数値をSNSなどで公開していると「周りに迷惑をかけるほど、ゆっくり走る”エゴ運転”なんじゃないの」と指摘されることもあったりする。

たしかに、高速道路は左車線を80~90km/hあたりで走っていることが多い。しかし、それは燃費のためにゆっくり走っているというよりも、軽バンの性能的にそれくらいの速度域が落ち着くからであり、また左車線を走るトラックなどのペースに合わせているからという意味合いのほうが強い。

なにしろ、エブリイが積んでいるNAエンジン「R06A」型のスペックは最高出力46PS(34kW)/5700rpm、最大トルク59Nm/3800rpmと非力なのだ。それでいて車両重量は890kgで、空気抵抗が大きな四角いボディ。高速巡行は苦手分野であり、左車線がメインステージとなるのは当然だろう。

ちなみに、空いている新東名高速道路を走ったときに、120km/h巡行にチャレンジしたこともあるが、エンジン回転数はメーター読みで5700rpmあたり。それ以上に加速する余力はほとんど感じられない状態だった。パワートレインのセッティング的には高速走行に向いているとは言いがたい。

低速で走るのではなく、ゆっくり加速するのがポイント

ローギアードなトランスミッションになっているのは、最大積載量350kgの軽バンであれば当然のことだろう。そのため、ほとんど空荷のような状態では2速でも余裕で発進できるギア比となっている。

1速で発進しても20km/hくらいでシフトアップすることになるので、2速発進のほうがスムーズに加速できるといった印象も、個人的には持っている。

ローギアードな5速トランスミッションで快適に走るためには、早めのシフトアップがプラスに働くというのが、個人的な結論だ。遮音性能もけっして高いとはいえない軽バンだけに、エンジン回転を抑えることは快適性にも寄与する。

具体的には、4000rpmくらいまでエンジン回転が上がったらシフトアップしている。早めにシフトアップするかわりに、アクセルを開け気味にすることでカバーしている。省燃費運転というと、アクセルワークに気を遣っていると思うかもしれないが、じつは高めのギアを選んで、アクセルは全開に近い状態で走っているといったシチュエーションも多い。

新東名高速道路を120km/hで走ったエピソードからも逆算できるように、5速60km/h巡行でのエンジン回転数は2800rpm程度となる。幹線道路であれば2速で発進したとしても、60km/hの制限速度までには5速まで3回のシフトアップをしている。

だからといって、パンパンパンとリズミカルにシフトアップしている…というほど忙しく運転しているわけではない。早めのシフトアップをすると、自然に加速がマイルドになるためだ。

省燃費運転のコツとして「ゆっくり加速する」ことがいわれるが、ローパワー&ローギアードな軽バンにおいては、早めにシフトアップすることで、流れに乗れる範囲でのスムーズな加速が実現する。しかも時にはアクセル全開にしている。

直近、450kmほど走ったときの区間燃費。高速道路メインではないルートでの数値だ

メカニズム的にもガソリンエンジンのアクセル全開はポンピングロスを低減して、エンジン効率の高い領域を使えるし、ドライバーの感覚としてもガマンしている感じがない。だからこそ再現性があるレベルで省燃費運転が続いているのだろう。

ちなみに、シフトダウンの目安は2000rpmあたり。それ以下の回転数で無理やり走らせるのはドライバーにも、機械にもストレスになると思うからだ。もちろん、これは平坦路の話であり、上り坂ではもっと高い回転数まで使うし、下り坂であれば高めのギアを選んでエンジンブレーキを弱めて走ることもある。

いずれにしても、状況に応じてシフトアップ/ダウンのタイミングを図れることは、マニュアルトランスミッションに乗っている醍醐味であり、ローパワーゆえに法定速度の範囲内でアクセル全開が味わえるのも軽バンの楽しみ方だと思う。

ちなみに、エブリイの指定空気圧は、標準時は240kPa/260kPaとなっているが、積載量が多いときは280kPa/350kPaとすることが指定されている。運転の仕方とは関係ない話だが、積載量に合わせて、この範囲内で空気圧を調整していることも、カタログスペックを超える燃費につながっているのだろう。

経済性重視の純正タイヤ。こまめに空気圧をチェックしている

いずれにしても、レーシングドライバーのような特殊スキルを持つアスリートではない、ただの自動車コラムニストがカタログスペックを超える実燃費で何年も走ってきているのは事実だ。クルマとの対話が得意な、多くのクルマ趣味人が同じような意識で運転すれば、もっともっと優れた燃費で走ることができるであろう。

もっとも、ここまで触れてきた内容は、エブリイのNAエンジン・FR・5速MTに限った話だ。すべてのクルマに通じるエコ運転ではない点が多々あることを、ご理解いただいた上で、省燃費運転の参考にしていただければ幸いだ。