27インチ級のロードバイクは果たしてジムニーに積めるのか!【スポーツ自転車積載チャレンジ:第1回 ジムニーシエラ編】

愛車ルノー・カングーはロードバイクの積載性で選んだという自転車好きジャーナリストの安藤眞が、さまざまなクルマにあの手この手で「愛車」を載せて積載性を徹底チェック! 全国の自転車愛好家の皆さん、ぜひクルマ選びの参考にしてください。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:中野幸次(NAKANO Koji)
軽自動車枠に収まる(軽の場合)ジムニーを真横から見ると、いかにホイールベースとキャビンが短いかが分かる。こんな外形寸法で、果たして大人向けのロードバイクが積めるのだろうか。

連載前口上――全国の自転車好き(そして自分の!)ために――

40年以上、自転車を趣味とする僕にとって、クルマ選びの重要な基準は「自転車が積めるかどうか」実際、最初に買った中古車以外は、すべてそれを基準に選んでいる(最初のクルマはルーフキャリヤに自転車を載せていた)。

ぶっちゃけ前後輪を外してしまえばセダンのリヤシートにも積載できるのだが、居住空間は汚したくないし、なるべく手間をかけずに積載したい。しかし、身長が181cmある僕のロードバイクは、サドル高が1mある。荷室高が1mを越えるクルマとなると、ミニバン以外に選択肢はなくなってしまう。

ということで、「このクルマなら積めそう」というモデルをピックアップして、どうすれば積めるかを試そうというのがこちらの企画。全国の自転車好きドライバーのクルマ選びの参考になれば幸いです!

自転車のプロフィールとサイズをチェック!

ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。


メカニズムを得意とする自動車ジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm、フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載可能な可能性が高いはず。


自転車寸法図

第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm

車載時に最大のネックとなるのが、サドルの高さ。全長はフレームサイズが変わってもそれほど大きく変化しないのがロードバイクの特徴。身長150cmぐらいのライダーのサイズでも、短くなるのは40mm程度だ。

第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm

前輪を外せば全長は170mm短くなるが、サドルの高さは35mmしか低くならない。サドルを外せば高さは760mmまで下がるのだが、ロードはミリ単位でセッティングを出すし、真直度を合わせるのも面倒なので、サドルはなるべく触りたくない。

第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm

前後輪を外せば全長は450mm短くなるが、高さを下げるのは前ギヤ(46t)が限界を決めるので、120mmしか低くならない。サドルを外すとハンドルステムがいちばん高くなり、710mmとなるため、車載可能なモデルは増えそう。

第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm

このサイズなら、セダンのリヤシートにも積めてしまう。大きめのセダンなら、トランクにも入れることができるだろう。実際、僕の仲間は、ランエボやアテンザ、フィアット500にこうして積んでやってくる。自転車乗りは、運転が楽しいクルマ好きが多いのだ。

ボディサイズを考えると「いくらなんでも無理でしょ」なジムニー

僕が自分専用のクルマを買うとすれば、ジムニーかジムニーシエラ(以下、単に“ジムニー”)が有力候補。山登りや川遊びが好きなので、狭い林道でUターンするときや、河原に降りるときの安心感は必須だからだ。

そんな僕のもうひとつの趣味が、スポーツ自転車。学生時代にサイクリング部にいたこともあり、今でも仲間と集まって走ることがある。集合場所まで自走することが多いが、ときにはクルマに積んで行くこともあり、クルマに自転車を積めるかどうかは重要なポイントなのだが、果たしてジムニーにロードバイクは積めるのか?

サイズを考えれば「いくらなんでも無理でしょ」なのだが、実は勝算があった。現行型が出た際に、取材中にシートアレンジをじっくり観察していたら、「こうすれば積めるんじゃないかな?」という方法を思いついたのだ。

それが今回、紹介する方法。前席のヘッドレストを外してフルリクライニングし、後席もヘッドレストを外して折りたためば、室内長1795mmがフルに使える。僕のロードバイクは全長1680mmなので、数値の上ではそのまま入る。高さはさすがに厳しいが、前後輪を外せばこちらもOKだ。僕のロードバイクでは前後輪とも外す必要があったが、完成車状態でサドル高が950mmぐらいまでなら、後輪は付けたままでも積めそうだ。

前席をフルリクライニングし、後席背もたれを前にたためば、前後輪を外すだけでロードバイクが車内に積める。後席を折りたたむ際に、ヘッドレストを外すのがポイント。こうすると床がほぼ水平になって積みやすくなるし、荷室高も815mmから850mmまで高くなる。
前後方向には、まだ動かせる余裕がある。もう少し後に積んで、チャイルドシートのトップテザーアンカーを利用してタイダウンすれば、確実に固定できそう。横方向の固定は、後席用アシストグリップが利用できそうだ。

積み込み作業は助手席ドアから行ったが、少し傾ける程度でドア開口部を通せるし、常にバイクの重心近くを持っていられるので、腕や腰に過剰な負担がかからない。だからバックドア側から積むよりも作業はしやすい。

問題は固定方法だが、前輪側は後席背もたれ全体か、チャイルドシートのトップテザーアンカーにストラップをかけてハンドルに回せばしっかり止まる。後輪側は前席背もたれにストラップかバンジーコードを回し、上下の動きを抑えれば良い。横方向は、後席アシストグリップがうまく利用できそうだ。

後輪はミノウラのリヤエンドサポート4で支持し、助手席クッションに載せている。車輪を外したロードバイクの重量は7kg以下なので、ほとんど沈み込まない。旋回中の横ずれやギャップで跳ねるのを防ぐため、全体のタイダウンは必須。
アウターチェーンリングが背もたれに当たりそうだったので、サドルが天井に当たるギリギリまでリヤエンドサポートの高さを上げてみた。46Tのチェーンリングで数cmの隙間が空いたので、52Tぐらいまでは大丈夫そう。しかも背もたれは柔らかいので、汚れ防止の養生さえしておけば、54Tでも問題なさそう。サドル高が950mmぐらいまでなら、後輪は外さなくても積めるかもしれない。

2パターン目は、いわば“最終手段”。実はこうすれば、よほど全高が低いとか、屋根の絞り込みが強いクルマでない限り、ロードバイクはたいてい積める。

後席を利用すれば、軽自動車でもたいていのクルマはロードバイクが積める。前後輪を外すだけで、サポート器具も不要。シートは柔らかいので、自転車を破損させるリスクも小さい。しかも人が座れる空間だから、2台+車輪4本は問題なく積める。シートの汚れ防止には、ペット用のシートカバーが便利だ。

ジムニーは3ドアなので、さすがに積み降ろしはしにくいかと思ったら、意外なほど楽だったこともお伝えしたい。この作業も助手席ドアから行ったが、ウォークイン機構を作動させるだけで、僕のバイクでも問題なく通る。前向きにアプローチすれば、ある程度入ったところで車内に足が着けるので、腰への負担もそれほど増えない。

固定はヘッドレストのステーを使えば簡単。バンジーコードでも十分に留まるが、衝突時を考えると、伸縮性のないベルトのほうが確実だ。
 

しかもこの方法なら、前後エンドの補助具は必要ないし、後席ヘッドレストのステーを使えば固定も簡単。ハンドルやサドルはシートクッションで保護されるので、摩耗する心配も無い。後輪を外さなければ載らないサイズなら、この方法がベストかも。

ジムニーシエラ JC 4AT 
車両価格 2,084,500円
全長3550mm 全幅1645mm 全高1730mm
ジムニーシエラと軽自動車のジムニーは、全長や全幅は違うが、キャビンスペースはまったく同じため、積載性は軽のジムニーでも同様だ。普通のボックス型の軽ワゴンと比べるとボンネットも長くキャビンの小さいジムニーだが、見事に自転車の積載に成功した!

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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…